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メーガン妃とハリー王子、アメリカでまたもやアニメのネタに

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
「Family Guy」に登場するメーガン妃とハリー王子(Fox)

 今年2月、コメディセントラルチャンネルの「South Park」でパロディにされたメーガン妃とハリー王子が、またもやアニメのキャラクターとしてアメリカのテレビに登場した。

 今度の番組は、セス・マクファーレンがエグゼクティブ・プロデューサーと脚本家を務めるフォックスチャンネルの「Family Guy」。「South Park」の場合はその回のタイトルからして「World Privacy Tour」で、プライバシーが欲しいと言いながら目立ちたがるふたりの様子が全編を通じて笑いのネタにされたが、「Family Guy」の最新回「A Stache from the Past」は、主にトム・セレックをネタにするもの。夫妻が登場するのは1シーンだけで、トム・セレックが出る宣伝に惑わされたと信じる主要キャラクターがセレックに会いに行こうとし、「いいよ、俺はひとりでやる。メーガン・マークルとハリー王子みたいにさ」と言うと、そこから場面がふたりに飛ぶ形だ。

 そのシーンでは、メーガン妃とハリー王子がプールサイドでくつろいでいる。そこへ執事と思わしき男性がやってきて封筒を差し出し、「Netflixから何百万ドルものお金が届きましたよ。何のための支払いかわかりませんが」と言い、ハリー王子は「ほかのと一緒にしておいて」と興味なさそうに答える。そこへ、隣で携帯を見ていたメーガン妃が「ベイビー、スポンサーのデル・タコから25万ドルもらっているインスタグラムの投稿をやる時間よ」と言う。それを聞いたハリー王子は、「でたらめなことを言ったあそこを出るべきじゃなかったな」とつぶやく。

 全部で1分もないシーンだが、かなり痛烈なジョークだ。Netflixからもらった大金が「何のためかわからない」というのは、ドキュメンタリーシリーズ「ハリー&メーガン」はとりあえずヒットしたものの、それ以外はまるでぱっとしないことへの皮肉。5年間に複数作品を製作するとして1億ドルの契約を結んだというのに、ふたりは期待に添えていないのだ。同じように2,000万ドルで複数契約を結んだSpotifyからは、今年6月、契約を解消されている。

 ハリー王子とメーガン妃は、スポンサーからお金をもらってソーシャルメディアに投稿するということを現実にはやっていないものの、やり始めても不思議はない気はするし、そのスポンサーをファーストフードのデル・タコにしたのも強烈。お金になるならとりあえず受けるというニュアンスが込められている。

 そして最後のハリー王子のせりふ。イギリス王室を捨てて妻とアメリカに移住し、家族の悪口で稼ぎつつハリウッドでの成功を目指したハリー王子は、もしかしたら後悔しているのではないかという、時々聞かれる憶測を表したものといえる。もちろんあくまで他人の勝手な憶測にすぎないが、ハリウッドでのキャリアが最初に思い描いていたほどうまくいっていないのは、本人たちも認識しているに違いない。

大手タレントエージェンシーと契約するも動きがないまま

 実際、このふたりに具体的な新しいプロジェクトは今のところほとんど聞かれないままだ。メーガン妃と夫妻のプロダクション会社アーチウェルは、今年4月、ハリウッドの大手タレントエージェンシー、ウィリアム・モリス・エンデヴァー(WME)と契約を結んだにもかかわらず、である。このエージェンシーのトップであるアリ・エマニュエルは、自らメーガン妃を担当するという熱の入れようで、メーガン妃とアーチウェルのために映画やテレビの製作、有名ブランドとのパートナーシップなどのプロジェクトを持ち込み、ビジネスを展開していく姿勢を見せていた。

 だが、それから半年も経つのに、何もないのだ。メーガン妃がディオールの広告塔になるという噂が出たこともあるがすぐに立ち消えたし、映画、テレビの製作の話もない。5月からは脚本家の、7月なかばからは俳優のストライキが始まったとはいえ、プロデューサーとしてスタジオやプロダクション会社と製作について交渉するのは自由だ。

 アーチウェルは恋愛小説「Meet Me at the Lake」の映画化権を買い、Netflixとの複数製作契約のひとつとして作るつもりとされているが、正式なゴーサインが出たとは聞かれない。「ハリー&メーガン」より先に立ち上がっていながら、つい最近ようやく配信開始となった「ハート・オブ・インビクタスー負傷戦士と不屈の魂―」が箸にも棒にもかからなかったことは、Netflixをさらに慎重にさせたかもしれない。

ドキュメンタリーシリーズ「ハート・オブ・インビクタス〜」の一場面(Netflix)
ドキュメンタリーシリーズ「ハート・オブ・インビクタス〜」の一場面(Netflix)

 ハリー王子と結婚する前に出演していたドラマ「SUITS/スーツ」が、今年6月、Netflixで配信が始まったせいで今さらながらアメリカでブームになったことに気を良くし、メーガン妃はまた女優に戻ろうかと考え始めているとの報道も出た。しかし、これも真偽のほどはわからない。まだ俳優はストライキ中ながら、メジャースタジオや配信会社と関係がないインディーズの作品については組合の許可を取った上で撮影や出演交渉が許されており、実際のところ、かなりの映画が撮影され、キャスティングが発表されている。つまり、本気で演技に戻りたいのなら動くことは可能なのだが、メーガン妃の名前は今のところそこでも耳にしない。

 そんな状況にある中、「Family Guy」にこんな形で登場させられるはめになってしまったのだ。「South Park」の中で自分たちが使われた時、メーガン妃とハリー王子は激怒して、訴訟することも検討したと言われたが、結局あきらめた。今回、彼らのリアクションはどうだったのか。「South Park」のその回は断じて見ないままだというが、「Family Guy」も見るのを拒否するのだろうか。いずれにしても、近々きっとふたりの反応について耳にすることになりそうである。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「シュプール」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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