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欧米型はイヤ? 習近平氏による中国独自の現代化とは?

宮崎紀秀ジャーナリスト
3期目続投が決まった習近平氏(中央):2022年10月23日北京(写真:ロイター/アフロ)

 中国共産党の党大会が終了し、習近平氏が党のトップとして続投することが決まった。一強体制を築き、更なる長期政権も視野に入れたとみられる習氏が、中国を強国にするために唱え始めた中国式現代化とは?

強国を目指す中国は...

 習近平氏は党大会初日に、過去の成果と今後の方針を示す報告を行った。その中で、同氏は、スローガンとして好む「中華民族の偉大なる復興」の推進を「中国式現代化」をもってすると述べた。

 中国は今世紀半ばまでにアメリカを凌ぐような「社会主義現代化強国」の建設を目指すとしている。その目標に向けた「中国式現代化」とは、一体何なのか?

 習氏の報告によれば、日本や欧米が歩んできたものと共通点は否定しないものの、「中国の国情に基づいた特色をもつ」現代化という。

 だが、そこには日本や欧米が歩んだいわば「西洋式」現代化と、その結果築かれた民主的な社会や現在の国際秩序に対する、根深い警戒や反感が見え隠れする。

中国式現代化の真意は...

 中国式現代化とは、14億の人口を抱える中で、全人民の共同富裕を目指し、物質文明と精神文明のバランスをとり、人と自然の調和と共生を目指し、平和的発展の道を歩むものだと説明している。

 例えばそこで言われている「物質文明と精神文明のバランスがとれた現代化」とは、単なる大量消費社会や物質至上主義に偏るのを否定しているのではない。物的条件を整えるとともに、国民の精神文明に対し、次のような方針が示されている。

「社会主義の先進的文化を大いに発展させ、理想・信念教育を強化し、中華文明を伝承」

 日本を含めた西洋式の現代化を遂げた国の多くは、国が豊かになるにつれ人々の価値観が多様化したり、民主主義が深化したりといった変化を経験した。だが中国式現代化とは、そんな変化を警戒しているかのようでもある。

 また、「平和的発展の道を歩む現代化」とは、次のようになる。

「他国を犠牲にして自国の利益をはかる血生臭いかつての現代化の道は歩まない」

 現在の世界秩序を担っている欧米諸国の発展の正当性を否定するような表現だ。

西洋式現代化は傲慢?

 習氏の報告の後日、中国のネットメディア「直新聞」は、「なぜ我々には『中国式現代化』が必要か?」という解説員による評論を載せ、西側諸国が、西洋式現代化こそが唯一の現代化の方法と見なしていることなどを非難した。

「現代化とは欧米のコピーであり、それは社会や政治体制、ひいては西洋文化と文明まで含むと考えていることは傲慢だ」

 更に、西側が言う現代化、即ち西洋化とは、西洋式現代化によって築かれた現在の国際秩序とその背後にある不公平な国際的な富の配分に従うことだと批判した。

「歴史的に見れば、国の現代化が西洋化と同一視され、西洋化とはこの搾取の論理に従うことと同一視されるため、その国は却って現代化ができない」

 評論は、西洋式現代化をこき下ろした上で、中国が独自の伝統文化を尊重する中国式現代化によって、世界第2位の経済大国に成長したと自信を見せる。

 加えて、中国式現代化の道の優秀さに誇りを持ち、西洋式現代化を超越したことに誇りを持つ、と胸をはる。だが、「中国は中国式現代化が他国にとっての“模範解答”とは決して考えない」と、自国のモデルを他国に押し付けるつもりはないと強調した。

 中国は自国に自信を深めると同時に西側なるものへの反発を強めつつある。「中国式現代化」によって独善的な国が生まれないことを望むばかりだ。

ジャーナリスト

日本テレビ入社後、報道局社会部、調査報道班を経て中国総局長。毒入り冷凍餃子事件、北京五輪などを取材。2010年フリーになり、その後も中国社会の問題や共産党体制の歪みなどをルポ。中国での取材歴は10年以上、映像作品をNNN系列「真相報道バンキシャ!」他で発表。寄稿は「東洋経済オンライン」「月刊Hanada」他。2023年より台湾をベースに。著書に「習近平vs.中国人」(新潮新書)他。調査報道NPO「インファクト」編集委員。

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