「コンビニを児童虐待の予防拠点に」韓国の新システム。24時間営業、防犯カメラを活かし「店から通報」も
児童虐待を受けた子どもがコンビニに駆け込む――。
韓国では今年、そういった出来事が2件報じられた。
今年6月には、慶尚南道のコンビニ店内の防犯カメラに助けを求めた9歳の女の子の姿が捉えられた。女の子の手にはあざがあったという。その後、父が警察から事情聴取を受けることとなり、これを複数メディアが報じた。
- 事件を報じる地上波MBC
また8月13日にはソウル市マポ区のコンビニに10歳の子どもが駆け込み、母親からの暴力を訴えた。
「お母さんがお酒に酔って私を殴るんです」
本人は裸足で、鼻血を流していたという。
確かに子どもの目線で考えると、近所にあるコンビニは「違う世界への接点」と考えうるか。また、日本よりもはるかに防犯カメラ設置数の多い国にあって、「カメラのある場所」という認識も持ちうる。
韓国の人口あたりのコンビニ店舗数は2017年時点で日本の「1.5倍」。そこが正式に「児童虐待予防の拠点」となる。23日、韓国警察庁とコンビニ業界側がこのキャンペーンを発表した。
参考記事:韓国コンビニ店舗数は日本の1.5倍 ネットで日韓コンビニ比較、質と接客は…
各社で多様な参加方法。「通報」まで担うチェーンも
23日、複数国内メディアが報じた「すくすくキャンペーン」。現地語だと「ドダムドダムキャンペーン」となる。疑わしき子どもと保護者が来店した際の店員による通報、予防キャンペーンの実施などを行う。
「コンビニは24時間のアクセスもよく、防犯カメラなどの体系が整っている場所」(韓国警察庁)が開始の理由だ。
警察側との協力により、各コンビニチェーンが以下の取組を行う。
■セブンイレブン=自社オリジナル商品群のパッケージに児童虐待予防のコピーを挿入。
■Eマート=会計時にレジで購入者が目にする画面の上段に児童虐待防止の映像を流す。
■GS=虐待被害児童の心理治療プログラムへの費用支援。
■各チェーン=警察庁作成の「子どもを見下ろしません。同じ目線で話します」というステッカーを店内に貼る。
「通報」の基準……抽象的な点も
最も積極的に参加するのは、CUグループだ。
■CU=既存の「ワンタッチ申告システム」(万引などに対応)に児童虐待パートを追加。スタッフを申告要員とする。
つまりは「店内で疑わしき状況があれば、スタッフが警察に通報する」というものだ。以下の基準で、スタッフが異常を感じれば警察に通報する。
CUと警察庁がともに行う 児童安全キャンペーン(筆者訳)
皆様の小さな監視が子供の未来を変えうるのです
児童虐待チェックリスト
・事故と見るには不審なあざや傷がある
・季節に合っていない服、清潔ではない外見が目立つ
・栄養失調が疑われる
・保護者を怖がったり、家に帰ることを怖がる
・そわそわしているなど不安定な姿が見える
基準が抽象的、という課題もある。過度の申告に関する心配もありそうだが、警察側は「小さな兆候も見逃さず、注意を払って観察し、子どもを保護する」とする。
また、現場スタッフの業務・役割が増加する課題もある。この点は「チェーンごとにキャンペーン参加方法を変える」という方法で対応したか。CUのように現場のスタッフに新たなマニュアルを通達するところがあれば、児童虐待のケアへの資金支援を行うところもある。情報が浸透していけば子どもに対しても「いざとなったらCUへ」といった行動を促していけそうだ。
「コンビニとの協力を通じ児童虐待の事前発掘に期待する」(韓国警察)というキャンペーン、今後はどうなるだろうか。
- 23日の正式発表前にニュースを報じるTJB