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暖冬から一転、猛寒波到来 米ワシントンの桜に前代未聞の危機

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
ワシントン・ポトマック川沿いの桜(資料画像)(写真:ロイター/アフロ)

有名なワシントンの桜並木

今から100年ほど前、三千本の桜の木が、日米友好の証として東京からワシントンに贈られました。毎年行われる「全米桜祭り」には、世界中から70万人の人々が訪れ、春の一大イベントとなっています。

しかしこの有名な桜並木に、前代未聞の危機が迫っています。というのは、突然現れた冬の嵐と大寒波によって、桜の花の多くが枯れてしまう恐れがあるのです。桜を管理する米国国立公園管理局は、すでに「widesread damage(広範な被害)」が発生していると、発表しています。

今年の満開は、例年より約10日ほど早い3月19日〜22日と予想されています。この満開直前の時期に、今回のような低温状態が数日間続くことは、記録を取り始めた過去約100年のうち、一度も起きたことがないといいます。

暖冬からの急転直下

平年なら3月下旬頃に花が開きだすのですが、これまで記録的な暖かさが続いていたために、桜の成長が異例のスピードで進みました。すでに咲き始めている花もあります。先月ワシントンは、連日20℃以上まで気温が上がり、史上最も暖かい2月を記録したので、桜が史上最速のペースで満開に至るとも予想されていたのでした。

しかし、13日(月)には雪が降り、14日(火)には-3℃、15日(水)には-6℃まで気温が下がったのです。さらに16日(木)の予想最低気温も-4℃と、真冬以下の寒さが見込まれます。国立公園管理局によると、気温が-3℃になると桜の1割が、さらに-4℃になると最大で9割が死んでしまうおそれがあるということですから、さらなる被害の拡大が予想されるのです。

アメリカと日本の桜予報の違い

ところで、「桜の予報」と言えば日本固有のものと思いがちですが、その実そうではないようです。日本の桜開花予想は、気象庁の職員であった市川寿一氏らが、1955年頃に桜のつぼみの重さを測って予測したことが始まりですが、この元のアイディアは、アメリカの生物気象観測にあったとも言われています。

実際、国立公園のホームページには、満開の予想日だけではなく、桜の成長を5段階にも分類して、それぞれの日にちも記録していて、なるほど観察の徹底ぶりがうかがえます。なお、満開の規定は、日本の場合8割が咲いた状態としていますが、アメリカ(米国国立公園管理局)の場合は7割です。またアメリカでは満開日の予想はしますが、開花日の予想は発表していません。

追記(3月26日)

この寒さの影響で、およそ半分の桜がダメになってしまったと報告されました。

NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

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