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美貌・人気・コネ・努力? 国内女子ゴルフトーナメントの主催者推薦枠はどのように決まるのか!?

金明昱スポーツライター
アン・シネの今季初戦はKKT杯バンテリンレディス。推薦で出場する(筆者撮影)

 2018年の日本女子ゴルフツアーが3月に開幕してから4試合を消化した。

 昨年の賞金女王・鈴木愛が勢いそのままに、3試合目で今季初優勝。トップ10入り3回で賞金ランキングトップに立ち、後ろにはイ・ミニョン(同2位)、アン・ソンジュ(同3位)、フェービー・ヤオ(同4位)、ユン・チェヨン(同5位)、申ジエ(同6位)ら外国人勢がつけている。

 まだシーズンは始まったばかりだが、実力のある選手たちの争いは、これからし烈になっていくに違いない。一方で気になるのが、シードを持たない有名選手たちが、こぞって主催者推薦枠から出場していることだ。

 開幕戦には昨年、賞金ランキング65位でシードを喪失した原江里菜のほか、2013年の賞金女王・森田理香子(昨年賞金ランキング89位)、香妻琴乃(同63位)、斉藤愛璃(同159位)など、人気選手らが出場していた。

 さらに、米ツアーシードを持たない横峯さくらや宮里美香も主催者推薦から出場し、ベテランの諸見里しのぶの名前もあった。特に諸見里は、開幕戦から4戦連続で主催者推薦枠から出場しており、原江里菜は最大8試合もらえる推薦枠が、すべて埋まったという。

 元々、レギュラーツアーで戦っていた選手たちが、主催者推薦枠から積極的に試合に出場するのは理由がある。

 それは今季から始まった「リランキング制度」がきっかけだ。

リランキング制度で枠争い激化

 同制度は賞金シード(賞金ランキング50位)から漏れた次点の5人、ファイナルQT上位約40人らの出場優先順位を獲得賞金額で見直し、年に2回実施する。

 序盤で稼ぐ賞金額によって、後半戦の出場権を得られるため、今年は特に推薦枠からトーナメントに出場しようと考える選手が多いというわけだ。

 そうなると、推薦枠は限られているため、水面下では試合出場権の“争奪戦”が激しく行われているのではないかと、ある程度の想像はできる。

 ただ、疑問なのが、そもそも主催者推薦はどのように決まるのだろうか、という点だ。

「人気や容姿で選ぶことも」

 あるトーナメントディレクターが事情を教えてくれた。

「推薦枠は主催者の判断ですべて決まるわけですが、様々なケースがあります。まずは、マンデートーナメント(予選会)を開催している大会に関しては、そこを突破した選手が出場できます。予選会のないトーナメントの場合は、大会主催者スポンサー所属のプロや大会が開催されるゴルフ場に所属しているプロが出場するのは分かりやすいケースです。その他になると、大会側にメリットとなる選手、例えばギャラリーを呼べる知名度の高い人気プロ、容姿のいいプロなどを選ぶ傾向があるのは事実です」

 去年のケースだと“セクシークイーン”と呼ばれるアン・シネがその象徴となるのかもしれない。

 昨年、日本ツアー初参戦となったワールドレディスチャンピオンシップサロンパスカップで、タイトなウェアでギャラリーを釘付けにしていたのは記憶に新しい。

 その効果あってか、4日間累計のギャラリー数は史上最多となる41,484人を記録した。ゴールデンウィークと重なったことも要因だと思われるが、実際に現場でアン・シネについて回るギャラリーの多さをこの目で見た実感としては、”アン・シネ効果”があったと言わざるを得ない。

 それに、プロスポーツのビジネスにおいて興行収入は大事な部分。人気選手を呼び、大会を盛り上げることは決して悪いことではないだろう。

 しかし、推薦枠が人気選手だけで決まるのかというと、そうではない。

「コネや選手の努力もある」

「タテとヨコのつながりからの“コネ”で枠をいただく選手もいるでしょうし、それこそ選手による努力も大きい」と語るのは、前出のトーナメントディレクター。

 例えば、原江里菜だ。前出のトーナメントディレクターがこんなことを教えてくれた。

「最大8試合しかもらえない推薦枠ですが、原江里菜プロは8試合がすぐ決まったばかりか、それ以上に大会主催者から『出場してほしい』と声をかけてもらっていたそうです。それには理由があるのですが、プロアマ戦で同伴する方々と、うまくコミュニケーションを取れる選手で、評判も良く、各大会のスポンサーの方々が、『この選手なら出してあげたい』と思うからだと聞いています」

 実際のところはどうなのか。原はこう話していた。

「大会主催者の関係者やその知り合いの方たちに『推薦がほしいです』とか『推薦はありませんか』とお伝えし、つないでいただいたりはしました。例えば、アクサレディスの社長とご一緒させていただく機会があったのですが、その時はその流れで今年の推薦をいただきました。自分から積極的に動いたりはしていませんよ」

お礼状を書いて渡す

 彼女の話を聞くだけでも、日頃の行いがどれだけ大事なのかがよくわかる。

 香妻琴乃をマネジメントする事務所の担当者にも聞いてみた。

「推薦をいただいた週は、主催者とゴルフ場へのあいさつは絶対に欠かせません。大会が終われば、お礼状を一筆書いて、主催者にお渡ししています。推薦をもらったほとんどの選手は、そうしているはずです」と教えてくれた。

 結局は推薦を決めるのは人だ。例えば、心を込めた手書きの手紙が一筆あれば、その人の心をくすぐり、揺り動かすこともあるに違いない。

 誰もが簡単にできる行動ではないと思うが、そうした努力を怠らない人に推薦枠がもたらされるのかもしれない。

(「週刊パーゴルフ」(3月20日号)に掲載された記事を加筆・修正したものです)

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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