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夏休みを終えて、ちょっとお疲れのお母さん、お父さんへ:宿題が上手くいかなくても

碓井真史社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC
絵日記に書くことがないと駄々をこねても大丈夫です。(写真:アフロ)

子供を十分に楽しませなくてもOK。宿題がなかなか終わらなくてもOK。その理由を心理学からお伝えします。あなたも、子供も、大丈夫です。

■夏の終わりに

猛暑酷暑の2018年の夏も、終わろうとしています。各地で、水害や台風の被害もありました。子供達にとっては、楽しい夏休みだったでしょうか。お父さんお母さんにとっては、子供の思い出作りに、里帰りの親孝行、その上に40度の暑さや災害対応など、お忙しい夏休みだったことでしょう。

本当に、お疲れさまでした。

■子育ては大変

子育ては大変です。手間も時間もお金もかかります。外で働くお母さんも多いですし、働き方改革もなかなか進みません。世の中の全てが、合理化、自動化、スピートアップし、利便性が進んでいるのに、子育ては基本的には昔のまま。自動子育て機はありません。子守ロボットも、当分できそうにありません。

それなのに、パートだって昔のように簡単には休めないし、昔の地域コミュニティーも力を失っています。子供の安全にも昔以上に気を使わなくてはいけないし、何をするにしても昔よりもお金がかかります。現代は、以前にも増して子育てが大変な時代です。

■たとえ不十分な夏休みでも

子供への愛があるほど、心は痛いでしょう。もっと子供を楽しませたい。いろんな所へ連れて行ってやりたかったと思っている親もいるでしょう。

仕事が特に忙しかったり、祖父母の健康問題があったり、お金がなかったり。ましてや災害があったりしたら、思ったような夏休みにできなかった親御さんもいることでしょう。

お盆の休みのニュース映像には、いつも家族旅行の姿が映されます。祖父母の家に行く子供たち。家族そろって海外旅行へ行く人々。どんなに不景気だと言われた年でも、その報道は変わりませんでした。

家族旅行などというお金と時間の贅沢は、なかなかできない家庭もあります。海外旅行なんて、考えることもできない人もいるでしょう。

苦労してご旅行に行かれた方は、良かったですね。子供にとっては、きっと良い体験になったことでしょう。でも、旅行に行けなかったご家庭も、大丈夫です。お金も時間もなくたって、子供は強く賢く育つものです。

心に痛みを感じているような親なら、きっと何かしたことでしょう。子供とお散歩かもしれませんし、家の前の小さな花火大会だったかもしれません。まだの人は、ほんの小さなことでも、これからできるといいですね。夏休みが終わっても、8月が過ぎても、子供はいつでも遊びたがっているのですから。

絵日記に書くことがないと駄々をこねていた子供もいるかもしれませんけれども、心理学の研究によれば、「退屈」も子供の成長には大切なことなのです。だから、きっと大丈夫です。

 

 <夏休み。ちょっとお疲れのお母さん、お父さんへ。:子供には退屈も必要。2017>

■宿題がきちんとできなくても

子供を何人も東大に入れたお母さんがテレビで言っていました。「夏休みの宿題は最初の3日で終わらせていた」。すごいですね。私はいつも夏休みの最後の最後に、大慌てで宿題をしていました。

きちんと計画を立て、宿題を早く終わらせる。このようにできる子は、しっかりとした良い子です。では、最後まで宿題をしない子はダメな子でしょうか。親も、子供をしっかり指導できないダメな親でしょうか。

いえいえ、必ずしもそうではありません。

電通の調査によれば、夏休み前には、親たちの6割以上が「夏休み前半までに宿題を終わらせたい」と言っていました。ところが、前半に終わらせられた家庭は2割もなく、後半までにできたのが6割で、なんと35パーセントの家庭で最終日ギリギリまで宿題をやっていました。

まあ、だいたいこんなものです。

夏休みに勉強をしないと学力が下がると語る専門家もいますが、暑い夏休みに無理して宿題をさせても学力は上がらないと主張する専門家もいるほどです。

本当は、勉強もスポーツも自由研究も、矯正されてではなく自主的に楽しくできれば、最高でしょう。

さて、ギリギリに宿題をする子ですが、人間追い詰められるとやる気が出るものです。親に言われなくても、何とかしなくてはと、自分で自分を追い込みます。これはストレスですが、実は心を鍛える場にもなります。

後回しにしていた宿題を一気にできる子は、自信と集中力が高まりやすい子だという心理学の研究もあります。

大人でも経験があるのではないでしょうか。追い詰められて、ギリギリだったけど、何とか間に合った、完成させた、切り抜けた。そんな時に、「オレって、できるじゃないか!」と達成感を味わう人々です。この繰り返しが、自信につながっていくのです。

たしかに、いつも締め切り間際だと病気にでもなった時には大変ですから、余裕は必要でしょう。でも、計画的に早めに行動するのが得意な人と、短時間に柔軟に臨機応変に行うのが得意な人とがいるのです。

あなたも、あなたの子供も、どちらでもOKです。

どちらの親も、どちらの子も、どんな親子も、それぞれに素晴らしい親と子です。

さあ、夏休みは終わり。秋は秋で、スポーツの秋、読書の秋、芸術の秋、学校行事の多い秋です。親と子で、素敵な季節を過ごしましょう。

社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

1959年東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。新潟市スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「めざまし8」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ホンマでっか!?TV」「チコちゃんに叱られる!」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』等。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

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