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藤井聡太棋聖への挑戦権争いもいよいよ佳境 4月16日、決勝T準決勝・永瀬拓矢九段-山崎隆之八段

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 4月16日。東京・将棋会館においてヒューリック杯第95期棋聖戦・決勝トーナメント準決勝、永瀬拓矢九段(31歳)-山崎隆之八段(43歳)戦がおこなわれます。

 藤井聡太棋聖(21歳)への挑戦権を争うトーナメントも、いよいよ佳境を迎えました。

永瀬九段、4年連続で挑決進出中

 両者の近年の棋聖戦での戦績を振り返ってみましょう。(以下、肩書は当時)

 2016年度、永瀬六段は山崎八段らを破ってトーナメントを勝ち進み、羽生善治棋聖への挑戦権を獲得しています。

 五番勝負では、永瀬挑戦者は途中先行したものの、最終的には2勝3敗1千日手で敗退しています。

 そして永瀬現九段は2020年度以降、4年連続で挑戦者決定戦に進んでいます。

 2020年度、永瀬二冠は17歳の藤井七段に敗れ、史上最年少タイトル挑戦を許しました。

 21年度は渡辺明名人に敗れました。

 22年度は再び渡辺名人と対戦。今度はリベンジを果たし、藤井棋聖への挑戦権を獲得しました。

 藤井棋聖に永瀬王座が挑戦する五番勝負。永瀬挑戦者は第1局で2千日手の末に勝利を収めたものの、以後は3連敗で敗退となりました。

 23年度、永瀬王座は佐々木大地七段に敗れました。

 24年度の今期。永瀬九段は5年連続の挑戦者決定進出まであと1勝としています。

 各棋戦でコンスタントに上位に進出している山崎八段。20年度、21年度は続けてベスト4に進んでいます。しかしそれぞれ、準決勝で永瀬二冠、渡辺名人に敗れました。

 ここまでのトーナメント表を眺めてみると、近年の上位進出メンバーは、よく似ていることがわかります。

今期の両者

 永瀬九段は今期1回戦、石川優太五段と対戦。後手の石川五段はあまり類例のない、金を中段に繰り出す角交換三間飛車を採用しました。居飛車穴熊に組んだ永瀬九段は終盤、と金で石川五段の飛車を追いかけ、98手で千日手が成立しています。

 指し直し局では先手の石川五段がノーマルタイプの三間飛車に。永瀬九段は再び居飛車穴熊に組みました。終盤、石川五段は穴熊の急所である端を攻めます。しかし永瀬九段はそれをうまく逆用。最後は永瀬九段が玉頭戦を制して、勝利をあげました。

 永瀬九段は2回戦で中村太地八段と対戦。後手の中村八段は3三金型の角換わりから、早繰り銀に出ました。永瀬九段は腰掛銀の形で攻めを受け止め、反撃に転じました。力のこもった中終盤が続いたあと、最後は永瀬九段が中村玉を詰まし、157手で勝っています。

 山崎八段は1回戦、森内俊之九段と対戦。山崎八段先手で相掛かりの立ち上がりから、定跡形をはずれた力勝負となりました。終盤は森内九段有望とも見られましたが、山崎八段が銀をタダで捨てる勝負手から追い込んでいきます。最後は森内九段の時間切迫もあって、逆転。129手で山崎八段の勝ちとまりました。

 山崎八段は2回戦、渡辺明九段と対戦。山崎八段は一手損角換わりから、3三金型に構える趣向を見せました。渡辺九段リードで迎えた中盤の72手目。山崎八段は飛車取りに歩を成ります。

 73手目、渡辺九段は飛車を逃げたため、形勢は互角に戻りました。堅陣を頼みに、歩を成って攻め合えばリードを保てたようです。

 終盤は山崎八段の鋭い追い込みが功を奏し、山崎勝勢に。最後は2枚の飛車を捨てる鮮やかな手順で渡辺玉を詰みに討ち取り、116手で勝利をあげました。

いよいよ準決勝

 前述の対戦を含め、山崎八段と永瀬九段は過去に12回対戦。通算で山崎3勝、永瀬9勝という成績が残されています。

 永瀬九段が現代最新の定跡を広く深く網羅しているのに対して、山崎八段は棋界屈指の力戦派。先後どちらになっても、山崎八段が定跡をはずれたところで力勝負に持ち込む展開が予想されます。

 もう片方の山の準決勝では、佐藤天彦九段と、前期挑戦者・佐々木大地七段が対戦します。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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