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ドラフト2018 逸材発掘! その7 岩本喜照

楊順行スポーツライター
(写真:アフロ)

「フォームの助言を受けたり、試合に向けての調整の仕方、投手としての考え方などを教わり、引き出しが増えました」

 日本新薬に入社した昨年、11月の日本選手権。準決勝で日本生命に敗れはしたが、8回を5安打無四球で1失点の好投と、岩本喜照はその片鱗をのぞかせた。飛躍のきっかけは、ベテラン左腕・滝谷陣と積み重ねた練習の時間だという。「もともと内角も突けたし、制球には自信があった」岩本が、社会人で手応えをつかんだ大会といっていい。

 静岡・常葉菊川高時代に甲子園出場はないが、九州共立大に進むと1年春の開幕週からリーグ戦に登板した。2年春には0.36という防御率で1位となり、秋はエースとしてベストナインを獲得。3年終了時点で、15勝をあげている。ただ翌年に右ヒジを損傷してわずか1勝に終わり、心待ちにしていたドラフト指名からはもれている。社会人に進んで2年目。ふたたび、視線をプロに向けた。

一気に球速6キロアップ!

「大学時代は走るのが苦手でしたが、入社以来ガマンして走った分、体ができ、体幹も強くなりました。昨年の最速147キロは大学時代と変わらなくても、平均球速は上がっていると思います」

 とは春季キャンプ時の岩本だ。今季春先は不調だったが、都市対抗2次予選あたりからは自分の投球ができている。4試合で抑えとして登板し、つごう8回3分の1を無失点。その過程で、自己最速を6キロも更新する153キロをたたき出したのは、「体が強くなり、フォームのバランスもよくなった」おかげだろう。「下半身がぶれなくなってステップ幅が半歩広がり、低かったヒジの位置を上げたことで、力がちゃんと球に伝わっていると思います」(岩本)。さらに、188センチという長身。スライダー、カーブ、ツーシームの角度には威圧感がある。

 投手陣の人材豊富な日本新薬は、昨年の公式戦25勝8敗という高勝率で、「計算上、2点を取れば勝つんだからびっくりするよね」とプロでも経験豊富な吹石徳一監督のいうチーム防御率1.34が驚異的だった。その投手王国で岩本は西川大地、小松貴志という先輩右腕から「どの変化球でもカウントも、空振りも取れる」と刺激を受けている。大学時代は、ほとんどまっすぐで押すスタイルだったが、新球・フォークで空振りが取れるのは2年目の成長だ。

「いい投手がたくさんいますが、できれば先発で投げたい」と語っていた今季、チーム事情から抑えに回ることが多いが、それは大型ながら制球が安定していることも理由のひとつ。先発して好投する姿は、プロ入り後の楽しみとしよう。

いわもと・きしょう●1995年3月3日生まれ●投手●188センチ85キロ●右投右打●掛川市立城北中(浜松南シニア)→常葉菊川高→九州共立大→日本新薬

スポーツライター

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。85年、KK最後の夏に“初出場”した甲子園取材は64回を数え、観戦は2500試合を超えた。春夏通じて55季連続“出場”中。著書は『「スコアブック」は知っている。』(KKベストセラーズ)『高校野球100年のヒーロー』『甲子園の魔物』『1998年 横浜高校 松坂大輔という旋風』ほか、近著に『1969年 松山商業と三沢高校』(ベースボール・マガジン社)。

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