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難解な手順で難解な中盤、どちらが勝つのかまったく不明 棋聖戦第4局▲渡辺明棋聖-△藤井聡太七段

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 7月16日。大阪・関西将棋会館において第91期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負第4局▲渡辺明棋聖(36歳)-△藤井聡太七段(17歳)戦がおこなわれています。棋譜は公式ページをご覧ください。

 筆者は午後、近所のデパートで、渡辺棋聖の午前のおやつに出されていた焼き菓子を買ってきました。

 盤上で達人の真似をすることは難しくとも、盤外ではこうして真似ができるのが将棋観戦のいいところです。

 57手目。渡辺棋聖がじっと突き出した歩は、いかにも達人らしい味わいのやわらかい手です。

 対して藤井七段は置駒の桂を跳ね、攻撃に厚みを加えていきます。

 渡辺棋聖が再開後に攻めで打った桂は、ずっと金当たりになったままです。金と桂の交換になれば、単純な損得勘定では金を取った方が得なわけです。しかしその誰でも見える金取りを、できるだけ後回しにしようとするのもまた、達人の間合いに見えます。

 59手目。渡辺棋聖は桂取りに9筋の歩を伸ばしました。これはまた堂々とした手です。というのも、藤井七段から攻め込まれるのを承知で、それを迎え撃とうという姿勢だからです。

 藤井七段は桂を跳ね出します。今度は藤井七段の桂が渡辺陣の守りの要である金に当たっています。渡辺棋聖はひらりとかわし、これで大丈夫と見ています。

 64手目。今度は藤井七段が当たりになっていた金を逃げました。

 盤上全体で戦いが広がり、情勢は複雑さを増してきました。

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 渡辺棋聖は端に桂を跳ねて飛車筋を通し、金取りとするか。それとも中央に再び銀を出るか。あるいは他の手があるのか。形勢は難解としか言いようがありません。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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