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【コラム】02年W杯から20年 日本と韓国、どっちが強くなったのか。

(写真:ロイター/アフロ)

きょう2002年6月30日は、日韓W杯の決勝が行われた日だ。横浜の地でブラジルがドイツを下し優勝した。

あの大会で、共同ホスト国たる日本はベスト16、韓国はあちらで行われた大会でどうやらベスト4だったようだ。

その20年後に迎えたこの6月は――

奇妙な時間だった。

まずはブラジルを指標としてマウントの取り合いがあった。A代表がそれぞれ0-1(日本)、1-5(韓国)で敗れたのだ。

写真:ロイター/アフロ

「どっちがマシか論」がずいぶん囁かれた。韓国メディアのなかには「ネイマールは日本より韓国を楽しんだ」と記す媒体すらあった。

韓国のように5点ぶち込まれても1点取ってちょっとはすっきりしたほうがマシだったか、あるいは日本のようにW杯を想定して「勝ち点を狙う戦い」「得失点差での突破も視野に入れた戦い」がこの時期には正しかったのか。

さらに20年を経て両者は「まさかのコントラスト」を見せていた。

なんと日本がカウンター志向(結果的にそうなった)、韓国がポゼッション志向(意図的に)で戦った結果だったのだ。

写真:つのだよしお/アフロ

20年前とは逆の構図だった。まさかの姿。

さらにデータを見るとまた「矛盾」があり、これがまた「どっちがマシ論」を考えるよい材料になっている。

「カウンター志向の日本のほうが、ポゼッション志向の韓国よりブラジル相手のポゼッション率が高かった」

日本、よっぽどカウンターの芽を摘まれていたか。はたまた「カウンターがダメでもキープはできた」のか。そんな中途半端になるんだったら、韓国のように真っ向勝負を挑んで、ゴールをぶちこまれて1点取ったほうがマシだったか? 韓国はちなみに、30分のファン・ウィジョのゴールの前に27分のパスを繋いでいる。やることはやったのだ。でも5点もぶちこまれりゃ、グループリーグ突破も終わっちゃいますって。

「よく分からない20年目」を象徴する事象だった。

年代別代表では圧倒した日本

いっぽうで、年代別の世代では圧倒的に日本優位だった。

12日、U-23アジアカップ@ウズベキスタンに出場したU-21代表が準々決勝で韓国と対戦した。

結果は3-0で日本の勝ち。これは韓国側に衝撃を与えた。

「日本に会うたびに毎回0-3なのか?」

2021年3月25日の日韓戦@横浜に続く、0-3の結果に怒り心頭。なかにはこの6月に韓国サッカー界全体で盛り上げた「02年W杯20周年の祝賀ムードがぶち壊し」という声すらあった。

なにせ、この試合では日本の厳しいプレスに韓国が応じきれない、という場面も目立ったのだ。

「韓国のように日本がプレーし、日本のように韓国がプレーした」。韓国ではそんな声も聞かれた。

「中央日報」は試合をこう論評した。

「長い期間韓国と日本はお互い違うスタイルでサッカーを発展させた。韓国は闘志と体力、スピードをメインに韓国はパスと組織力をメインに成長した。時間が過ぎ、直接対決の回数が増えるに従い、お互いの長所と特徴を積極的に受け入れるように変化した。日本サッカーには闘争心が追加装着され、韓国サッカーはパスメインのビルドアップを新しい骨格に据え、変身を試みているところだ」

しかし韓国側は「基本技術が足りないからうまく行っていないのだ」と。

続いて、25日には日韓の大学選抜チームが対戦する「デンソーカップ」@平塚で日本が5-0と相手をボコった。

こう見ると日本のほうがかなり優位、とも見える。

この2年間の「僅差」は「大きな1試合」

では20年間でどちらが強くなったのか? 

「日本が僅差で優位」。そう言える。内容や年齢別代表での結果はさておき、トップチームでの結果はこうだ。

◆代表レベル

06年ドイツW杯以降のW杯本大会での成績

日本3勝4分7敗※

韓国3勝3分7敗

※2010年南アW杯ラウンド16のPK負けは公式記録に沿い「引き分け」扱い

W杯本大会での結果は「いい勝負」。しかし日本が「1試合多い」。これこそがじつは「最大の差」だ。

先のロシアW杯で日本がグループリーグを勝ち抜き、ベルギーと戦った。韓国は敗退を喫した。これははっきりと本大会で日本が韓国を上回った初めての機会でもあった。

写真:長田洋平/アフロスポーツ

ただしこういうデータもあるから、はっきりと「優位」と言い切れない面もあるが。

◆クラブレベル

アジア・チャンピオンズリーグ優勝回数

日本3回

韓国6回

そして、よりはっきりと「日本ぶっちぎり」と言い切れない要素が…「ソン・フンミン」ではないか。2021-22シーズンのイングランド・プレミアリーグ得点王。

欧州組の数は日本のほうが圧倒的に多い。しかし「トップオブトップ」は韓国に握られている。

2000年代後半~前半もそうだった。中田英寿、中村俊輔が躍進したが、チャンピオンズリーグ決勝の舞台に立ったのはパク・チソンだった。

そこがもどかしい。韓国の記者仲間によく言われることがある。「イングランドでは、SONNY(ソン・フンミンのニックネーム)一言で何のことだか通じるよ。他の選手は全部説明が必要」。

写真:ロイター/アフロ

20年間何をやってきた?

この「裾野とトップ」という話、「この20年間の取組み」にも少し結びついてくる。

両国は「強くなる」ために何をやってきたのか。

この20年間、両国ともに過去にはやってこなかった取り組みを見せている。

日本=女子プロリーグの発足(WEリーグ。2020年設立、2021年リーグ開始)

韓国=成年男子の下部リーグ整備(2017年、一気にK7リーグまでを発足させた)

裾野を拡げる努力。そうすることによってより強くなれる。

ビジネスでも同じことだろう。良いときにこそ次を考えられるし、むしろ考えなくてはならない。日韓両国にとってこの20年間は「W杯連続出場が続いていて、次を考えられる時間」でもあった。

日本は「より大きく裾野を拡げる手法」を選んだ。2021年のWEリーグの発足だ。現在の田嶋幸三会長の肝いりだという。なにせ社会人口の約半分は女性なのだ。女性がプレーし、それに憧れ、サッカーへの全体的な関心が高まるということは確実な「新規開拓」だ。新しく大きな層へのアプローチ。ただし、この効果を体感するまでには時間がかかるだろう。

いっぽう、韓国は「少し狭い幅のなかで裾野を広げた」。男性のおじさんが対象だ。2017年に下部リーグの整備を発表したのだ。Kリーグを一気に7部まで拡大し、体系化。2022年現在で最下層の7部には計1256チームが加盟している。きっちりやりすぎるのではなく、「ユニフォームが少々揃わなくても結構」。全国のおじさん草サッカー網の底辺たる「早朝サッカー(日曜の朝に地域の小学校に集まってボールを蹴る)」までは傘下ではないが、これは大きな改革だった。

実際にその成果は出ており、1年前まで「7部」だった選手が4部リーグを経て、今年6月にはKリーグ1デビューを果たす事例も出てきている。これは既存の「エリート主義」「選手の受け皿の少なさ」が弱点だった韓国サッカー界にとっては大きな出来事だ。実際にチェジュのキム・ボムスの様子を報じる関連動画には300万を超えるアクセスが集まっている。

より広い土壌に種を撒いている日本。少し幅を狭めているものの先に芽が出つつある韓国。

時間をかけて幅広さ、奥深さ、ロマンを追っていくのか。目に見えるわかりやすい結果を速度感をもって出していくのか。

じつはこれ、2020年6月、現在の日韓のA代表にもまた通じるところだ。森保一監督は就任依頼ずっと「ラージグループ(五輪代表を含めた多くの選手)から選手を選ぶ」という言葉を使い、そしてまたこの6月「新たな選手の組み合わせを考えている」とした。

一方の韓国代表パウロ・ベント監督は「選手をある程度絞り、戦術を固める」やり方を採っている。CBに至っては後方から良いボールを供給できるキム・ヨンクォン(蔚山/元ガンバ大阪)が「命綱」となっているほどだ。

両国のサッカースタイルの変化も興味深いが、それぞれの根底にある「思想」にもご注目を。これがよく見える20年間でもあった。さて20年目の11月、カタールでどっちがいい結果を残すだろうか。

(了)

参考:「日本代表の6月シリーズ」、Yahoo!「みんなの意見」で日本代表監督支持率調査を実施しました。

サッカー日本代表のチュニジア戦、森保監督の選手起用・戦術を支持する?

4試合でのべ3万人が投票。パラグアイ戦後の支持率65%を最高潮に徐々に低下。平均支持率は30%、チュニジア戦後の支持率は6%にまで低下という結果となりました。

吉崎エイジーニョ ニュースコラム&ノンフィクション。専門は「朝鮮半島地域研究」。よって時事問題からK-POP、スポーツまで幅広く書きます。大阪外大(現阪大外国語学部)地域文化学科朝鮮語専攻卒。20代より日韓両国の媒体で「日韓サッカーニュースコラム」を執筆。「どのジャンルよりも正面衝突する日韓関係」を見てきました。サッカー専門のつもりが人生ままならず。ペンネームはそのままでやっています。本名英治。「Yahoo! 個人」月間MVAを2度受賞。北九州市小倉北区出身。仕事ご依頼はXのDMまでお願いいたします。

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