大谷翔平の前に40-40を達成した選手が「誰も殿堂入りしていない」のはなぜなのか
今シーズン、大谷翔平(ロサンゼルス・ドジャース)は、1シーズンに40本塁打以上と40盗塁以上の「40-40」を達成した。大谷の場合、ここからさらにホームランと盗塁の数を増やし、史上初の「50-50」を成し遂げる可能性もあるが、「40-40」の達成者も決して多くはない。
1988年に42本塁打&40盗塁のホゼ・カンセコ、1996年に42本塁打&40盗塁のバリー・ボンズ、1998年に42本塁打&46盗塁のアレックス・ロドリゲス、2006年に46本塁打&41盗塁のアルフォンソ・ソリアーノ、2023年に41本塁打&73盗塁のロナルド・アクーニャJr.(アトランタ・ブレーブス)に、現時点で41本塁打&40盗塁の大谷だ。日本プロ野球の経験者がメジャーリーグで「40-40」を達成するのは、ソリアーノに続き、大谷が2人目ということになる。
このなかに、殿堂入りした選手は、今のところ、いない。
彼らのうち、アクーニャJr.と大谷は現役選手だ。2人とも、2018年にメジャーデビューし、新人王に選ばれた。2023年のMVP――大谷は2021年に続く2度目の受賞――も、共通する。
あとの4人は、選手生活を終えてから5年以上が経っている。いずれも、メジャーリーグで15シーズン以上にわたってプレーし、400本以上のホームランを打ち、200盗塁以上を記録した。「40-40」のシーズンだけではなかった、ということだ。
ボンズの762本塁打とA-RODの696本塁打は、歴代1位と5位に位置する。これだけでも、殿堂入りできそうな気がする。また、「500-500」の達成者はボンズだけだ。「400-400」も、他には誰もいない。また、ボンズは3000安打に65本足りなかったが、A-RODは3115安打を記録した。ただ、PED(パフォーマンス向上薬)が、彼らの殿堂入りを阻んでいる。
カンセコは、PEDに加え、そのスタッツも、殿堂入りに値するかどうか、意見が分かれるところだろう。
ボンズ、A-ROD、カンセコと違い、ソリアーノは、PEDの使用が取り沙汰されたことはなかった。ただ、パワーとスピードを発揮したものの、出塁率は低め。シーズン四球率は2006年の9.2%が最も高く、通算四球率は5.9%に過ぎなかった。しかも、二塁の守備はうまくなく、レフトへ移った最初の2シーズン、2006年と2007年に記録した22補殺と19補殺は、外野手の両リーグ最多と最多タイながら、こちらも名手とは言い難かった。
もし、優れた選球眼と秀でた守備のどちらか一方があれば、殿堂に近づいていたかもしれない。カンセコもそうだが、ソリアーノも最初の選考で6票にとどまり、得票率は5%に満たず――1.1%と1.5%――翌年の記者投票にかかる資格を失った。
ボンズとA-RODは、最初の3度の得票率が35%前後。ボンズの得票率はそこから上昇し、最後の10度目――その後、記者投票以外の選出もあり得る――は66.0%に達した。394人中260人から票を得たので、あと36票多ければ、殿堂入りの得票率75%以上となっていた。A-RODは、次が4度目の選考だ。
ちなみに、ソリアーノは、2004年2月のトレードで、A-RODの交換要員の一人としてニューヨーク・ヤンキースからテキサス・レンジャーズへ移籍した。そして、2013年の夏のトレードで、シカゴ・カブスからヤンキースへ移り、A-RODとチームメイトになった。
なお、「40-40」のシーズンに、40本以上の二塁打を打ち、「40-40-40」としたのは、2006年に41二塁打のソリアーノだけだ。今シーズン、大谷は、29二塁打を記録している。