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新年の挨拶・スピーチは、なぜ「箱根駅伝」ネタが人気No.1なのか?

横山信弘経営コラムニスト
ドラマチックな箱根駅伝は経営者たちにも人気

新年の挨拶には「箱根駅伝」ネタが人気

カレンダーの並びがよく、2013~2014年の冬休みが「9連休」、1月6日が「仕事始め」、という企業も多いのではないでしょうか。仕事始めのときは、多くの企業で社長による新年の挨拶があるものです。新しい年を迎えるにあたって意気込みや訓示が社長から述べられることにより、社員一同、気を引き締めることでしょう。

ところで、年頭のスピーチで引用される最も人気の高いネタが「箱根駅伝」だと言われます。それはなぜなのか、本日は考えてみます。

理由として「箱根駅伝」そのものが人気の高いスポーツイベントであることが第一に挙げられます。歴代視聴率を見ても、1993年の第69回大会以降、往路・復路ともに視聴率「25%」を下回ることが一度もありません。昨年(2013年、第89回大会)の往路の視聴率は29.1%にも達し、すべての正月番組の中でも突出した人気を誇っています。

多くの人が目にしたであろうTV番組をスピーチの題材に選ぶのは、安全な選択と言えます。

「箱根駅伝」がドラマチックな理由

次に、「箱根駅伝」が極めてドラマ性の強いスポーツであることも大きな要因として挙げられます。今年のように東洋大が往路から力を見せつけ、復路も独走してしまうチームが出てくると、結果が予想できてしまいます。プロ野球のような「逆転満塁ホームラン」に似た大番狂わせが起こりづらい競技ですので、普通なら関心が薄れてしまうでしょう。にもかかわらず最後まで視聴率が落ちないのは、「区間新記録」「シード権」「繰上げスタート」といった独特のルールがあるからです。

特に「繰上げスタート」は、非情かつ理不尽さを感じるルールにも見えます。しかしこのルールこそが「襷(たすき)を繋ぐ」という名セリフを生み出し、襷(たすき)を繋ごうとするランナーを力強く応援したいという心理が働きます。

社長が訴えたいのは「チームワーク」

「繰上げスタート」のルールがあることで、見た目の順位と本当の順位がマッチしなくなります。そのため最後の最後まで「シード権争い」の行方がわからなくなり、観る者をくぎ付けにします。シンプルなルールが互いに絡み合い、複雑なドラマを創出します。優勝したい。金栗杯(MVP)を取りたい。区間記録を目指したい。シード権を獲得したい。襷(たすき)を繋げたい……。このような思惑が交錯して大会を盛り上げます。そして何より、そこにあるのは理想形に近いチームワーク。出場するランナーや監督のみならず、給水を手渡しでする部員を含め、出場できなかった人たちとのチームワークがあるからこそ観る者は心を打たれます。

新年の挨拶をする社長が「箱根駅伝」をネタとして選ぶ理由は、このイベントを多くの人が目撃しただろうという理由もさることながら、チームワークの大切さを訴えたい気持ちもあるからでしょう。そして新しい年にどんなドラマがあるのか、想定外のことも不条理なこともあるだろう、それでも組織一丸となって乗り越えていこう、襷(たすき)が途切れることなく、力を合わせて繋いでいこう、という経営者のメッセージを挨拶に込めたいからに違いありません。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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