なぜレアルは”今夏最大の目玉”エムバペ獲得を諦めないのか?アザールとベイルに次ぐ大物を狙うペレス。
スピードスターの新天地はスペインになるかも知れない。
今夏、欧州で大きな注目を集めているのがキリアン・エムバペの去就だ。パリ・サンジェルマンと2022年夏まで契約を残しているエムバペだが、現時点では契約延長にサインしていない。
パリSG側からのオファーに、エムバペは首を縦に振っていない。そこには、レアル・マドリーの影がちらついている。
「本当の称賛を浴びたければ、いつかパリ・サンジェルマンを離れなければならない。パリでどれだけ良いプレーをしても、『フランスでの話だから』と言う人は少なからずいるだろう。世界最高のリーグはイングランドとスペインにある。つまり、ベストプレーヤーたちと戦っていないと捉えられるんだ」とはパリSGとマドリーでプレーした経験があるニコラ・アネルカの言葉である。
「2つの選択肢がある。パリに残るか、レアル・マドリーに移籍するかだ。決断をしなければいけない。クリスティアーノ・ロナウドやリオネル・メッシの後を追い、バロンドールを獲得したいなら、世界最高峰の選手たちを競い合う必要がある」
■パリ・サンジェルマンの思惑
パリSGは2017年夏に、ネイマール(契約解除金2億2200万ユーロ/約286億円)とエムバペ(移籍金1億8000万ユーロ/約234億円)の獲得を決めている。パリSGにとって、エムバペとネイマールの獲得はプロジェクトの一部だった。2011年にカタール投資庁の子会社であるカタール・スポーツ・インベストメント(QSI)がクラブを買収して、ナセル・アル・ケライフィ会長が就任してから、一貫して取り組んできた2022年のカタール・ワールドカップに向けたビッグプロジェクトだ。
ネイマールについては、今年5月に2025年までの契約延長で合意している。以前からバルセロナ復帰の噂が絶えなかったネイマールであるが、パリに残る決意を固めた。ただ、ネイマール(推定年俸3600万ユーロ/約46億円)とエムバペ(推定年俸2450万ユーロ/約31億円)と2選手の間には扱いの違いがある。
この度の契約延長オファーで、パリSGはエムバペにネイマールの年俸に匹敵する額を準備しているというが、それでも「イエス」の返事が得られていない。しかしながら、パリSGとしては、W杯を一年後に控えた状況でエムバペに抜けられるわけにはいかない。ジレンマに襲われ、ゆえに交渉は平行線を辿っている。
■マドリーとコロナの打撃
一方、マドリーは2020-21シーズンに新型コロナウィルスの影響で財政が大きな打撃を受けた。その損失額は3億ユーロ(約360億円)に上るといわれている。正直、お金がないのが現状だ。
フロレンティーノ・ペレス会長には、ルイス・フィーゴ、ジネディーヌ・ジダン、ロナウド、デイビッド・ベッカムらを次々に獲得した過去がある。”銀河系軍団”を形成し、スタープレーヤーの知名度とブランド力を利用してスポーツ的側面と金銭面で大きな成果を挙げてきた。
ただ、近年のマドリーにおいて、1億ユーロ以上を投じて獲得を決めたのはガレス・ベイル(2013年夏加入/移籍金1億500万ユーロ/約136億円)とエデン・アザール(2019年夏加入/移籍金1億ユーロ/約130億円)のみ。派手なイメージがあるペレス会長だが、クラブ経営に関しては堅実な一面を持っている。
「私に何ができるかというのは、誰もが知っていると思う。その点で、私には信頼がある。多くのビッグプレーヤーを確保してきた。私が、あるいは人々が世界最高だと考えている選手を、可能な時に連れてくる。エムバペは偉大な選手だ。けれども、レアル・マドリーに所属していない選手について話すのは敬意に欠けるだろう」
これはペレス会長の言葉だ。
エムバペがフリーになるまで待つ、というのは一つの手段である。だがマドリーというクラブ、またペレスという会長は決してチャンスを逃さない。市場が閉まるまで、水面下での駆け引きは続く。