年末年始に急増する餅などによる窒息事故、特に高齢者は要注意(2021年版)
餅などの詰まらせは圧倒的に高齢者が多い
年末年始にかけて、特にお正月の料理としては欠かせない餅(もち)などに関連し、のどに詰まらせて窒息状態に陥る事故が相次いでいる。毎年の話ではあるが、東京消防庁が2021年11月に東京都内の実情として、直近データの公開とともに注意喚起を行った。その中身を確認する。
今件は主に2016~2020年における過去5年間の値(東京消防庁管轄内、以下同)から、「餅」およびそれに類する「団子」「大福」など粘り気の強い食品が喉(のど)に詰まったことによる窒息事故について解説している。過去5年間では毎年100人前後がこの窒息事故で救急車によって医療施設に運び込まれているが、12月から翌年1月に多数発生しており、年末年始の餅料理(磯辺焼き、お雑煮、餡子餅など)に起因していることがうかがえる。
この搬送者のうち2/3強は「中等症(生命の危険は無いが要入院)」以上の病症で占められており、搬送時の状況が深刻なのが確認できる。
死亡:初診時に死亡が確認されたもの
重篤:生命の危険が切迫しているもの
重症:生命の危険があるもの
中等症:生命の危険は無いが、入院の必要があるもの
軽症:入院の必要が無いもの
窒息事故による搬送者の大半は高齢者で、2016~2020年の累計に限れば全搬送者の9割強に達している。
とりわけ70代から90代前半に多く事案が発生していることが分かる。
傾向と対処…東京消防庁の各種資料より
東京消防庁では以前の注意喚起なども合わせ、高齢者、そして乳幼児の窒息事故が多い理由について「個人差がある」としながらも、
・乳幼児…主に臼歯が無く食べ物を噛んですりつぶすことができないことや、食べながら遊んだりする傾向にあるため、窒息事故が発生しやすい。
・高齢者…一般的に、かむ力や飲み込む力が弱くなり、だ液の分泌量も減少し、食物が詰まりかけた時に咳をする反応が弱いなどの理由により窒息事故が発生しやすくなる。
と解説している。そして餅をはじめとした粘着性のある食品による窒息事故を防ぐための注意事項として
・食品を小さく切るなど、食べやすい大きさにする。
・急いで飲み込まず、ゆっくりとよくかみ砕き、だ液と混ぜてから飲み込む。
・介助が必要な人に餅などを食べさせる時は、「横になった状態」「あおむけに寝た状態」では食べさせないようにする。
・餅などを食べる前には水やお茶、汁物を飲んで喉を湿らせる。
・食事中は遊ばない、歩きまわらない、寝ころばない。
・高齢者や介護を要する方は、粥(かゆ)などの流動食に近い食物でも窒息を起こすことがあるため食事の際は目を離さない。
・いざという時に備え、応急手当の方法を習得しておく。
などを挙げている。数は多いが習慣化すれば無意識のうちにできる内容。
今件では特に高齢者の餅問題を提起しているが、今後は一人暮らしの高齢者世帯が今まで以上に増加する傾向があることから、リスクはさらに増加することが予想される。
行政当局は今後増加するこの「高齢者・餅窒息事故」に対し、今まで以上に積極的な姿勢で臨むことが求められよう。もちろん当事者、そして周辺にいる人たちが注意を払うべきであることは言うまでもない。
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