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ゲーセンから「セガ」消滅 新名称「GiGO」に込められた“セガ愛の証拠”とは?

鴫原盛之ライター/日本デジタルゲーム学会ゲームメディアSIG代表
GENDA GiGO Entertainmentの片岡尚会長(※筆者撮影)

ゲームセンター経営大手の株式会社GENDA SEGA Entertainmentは、1月28日に自社株式14.9%を取得するとともに、社名をGENDA GiGO Entertainmentに変更すると発表。さらに「SEGA(セガ)」ブランドで運営している全国のゲームセンターの店名を「GiGO(ギーゴ)」に、3月から順次変更していくことも明らかにした。

昨年掲載した拙稿「『ゲームセンターはなくならない』SEGAブランド経営トップが語る未来像」でも書いたように、2020年12月にGENDA(※GENDA GiGO Entertainmentの親会社)が、当時のセガ エンタテインメントの株式85.1%を取得した時点で、セガサミーグループからはアミューズメント事業が切り離されている。

この事実を知らない人が多かったせいなのか、あるいはセガブランドが消滅するインパクトがことさら大きかったのか? 上記の発表は、普段アーケードゲームのニュースを滅多に掲載しないゲームメディアでも盛んに報道され、また多くのゲームファンがネット上で驚きのコメントを投稿していた感がある。

それにしても、である。なぜこのタイミングで、1965年にセガ・エンタープライゼス(※当時)が店舗営業を始めて以来、長らくゲームファンに浸透していた屋号を変えたのだろうのか? その真意をGENDA GiGO Entertainmentの片岡尚会長に伺った。

「GiGO」の名称こそが、今なお変わらぬ「セガ愛」の証拠

片岡会長によると、社名および屋号を変えた理由は「先月に自社株を買って完全に独立しましたので、この新創業のタイミングでブランドチェンジしようと決めました」とのこと。

前述の拙稿の取材当時、片岡会長はセガブランドを継続する方針であると話していた。それから1年ほどで、早くも屋号の変更を決断したのは、セガブランドを維持するビジネス的なメリットも愛着もないと判断したのだろうか?

この質問に対し、片岡会長は「私も従業員も、56年もの歴史に及ぶセガに対して今でも強くリスペクトしています」と明確に否定した。

実は、片岡会長が今なおセガを愛する何よりの証拠が、新名称の「GiGO」なのだ。なぜなら「GiGO」とは、そもそも旧セガ時代から東京の池袋、大阪の心斎橋、福岡の天神などの旗艦店に、長らく使用されたショップブランドのひとつだったからである。シンボルカラーも、セガのロゴとほぼ変わらない青を採用しており、また片岡会長自身も学生時代は池袋GiGOによく遊びに行っていたそうだ。

「元々セガのショップブランドであったことを意識したうえで決めました。以前から、やがて屋号を変えなくてはいけない日がやって来るだろうな、もし変えるとすれば『GiGO』がいいだろうな、という思いを実は持っていました。

 それが確信に変わったのは、『GiGO』の名を冠した最後の1店舗、池袋GiGOが昨年9月に閉店したときでした。閉店直前にカウントダウンのイベントを行ったところ、多くのお客様にお越しいただき、その熱量と従業員の店への愛着もすごく感じたので『もうこれしかない!』と、社長の上野(聖氏)とも相談して、この名跡を引き継ごうと決めました。

 我々は、どんな時代であっても人々の欲求を『リアルな場』で満たし進化し続けること、これが新しいゲームセンターの価値であると考えています。常に人々の欲求を満たすオアシスであり続ける、そのキーワードが『Get into the Gaming Oasis ゲームのオアシスに飛び込め!』であり、『GiGO』はその頭文字でもあります」(片岡会長)

また社名の変更に伴い、オンラインクレーンゲームの「GOTON!」も「GiGOオンラインクレーン」に名称が変わる予定だ。

東京都立川市にある「クラブセガ 立川」。慣れ親しんだこの看板も間もなく見納めとなる(※筆者撮影。以下同)
東京都立川市にある「クラブセガ 立川」。慣れ親しんだこの看板も間もなく見納めとなる(※筆者撮影。以下同)

現在もセガとは良好な関係を継続中

完全独立を機に、今まであったセガとの関係を解消してしまうのか、あるいは店舗のオペレーションをガラッと変えてしまうのかが、ゲームファンにとっては最も気になるところだろう。

片岡会長によると、今後もセガ製品が主体の機種構成や、店舗スタッフのオペレーションを変える予定はなく「今でもセガさんとの関係は非常に良好ですよ」という。

「これからも、新作のロケテストの実施などを積極的に協力させていただきますし、今後も関係は変わらないと思います。長年のセガファンの皆様も、どうぞご安心下さい」(片岡会長)

ところで、屋号の変更を発表するにあたり、ゲームファン以外にも中の人、すなわち店舗スタッフからも反対の声が上がり、ひいてはセガブランドに愛着を持った従業員の士気の低下につながる恐れはなかったのだろうか? これも片岡会長によれば、大きな問題にはならなかったそうだ。

「私も当初はそこが最も気がかりでした。『セガ』の名前がなくなることを残念がる声も確かにありましたが、新しいブランドを『GiGO』にしてくれてありがとうございますとの声が非常に多く、こちらの思いが通じて本当に嬉しかったですね。心の中で寂しい部分を少しだけ残しながらも、全体としては前向きに新生『GiGO』を受け入れてくれたと理解しています」(片岡会長)

eスポーツ進出も検討 ファンを裏切らず、さらなるゲーセンの発展を目指す

GENDA GiGO Entertainmentは、コナミが主催するアーケード用音楽ゲーム「beatmania IIDX」シリーズを使用したeスポーツ大会「BEMANI PRO LEAGUE」(※6月に開幕予定)への参戦をすでに表明している。

「我々が掲げる、人々の欲求を満たす場にしたいというコンセプトと、『eスポーツ×音楽』の大会コンセプトが完全にシンクロしましたので、すぐに参加を決めました。弊社では、まだ稼働させている店舗が少ないので、これからは店のほうでも盛り上げていきたいですね」(片岡会長)

(参考リンク)

・「BEMANI PRO LEAGUE」公式サイト

「BEMANI PRO LEAGUE」の公式サイトより
「BEMANI PRO LEAGUE」の公式サイトより

また、同社は以前からeスポーツチーム「Lag Gaming」のスポンサーにもなっているが、現時点では自社でeスポーツチームを持つ予定はないとのこと。とはいえ「今後もeスポーツには、我々が一番寄与できる形で関わっていきたいですね」と片岡会長からは力強いお言葉をいただいた。

将来的にはぜひ、eスポーツと銘打ちながらも、ことゲーセンではお世辞にも賑わっているとは言えない「ぷよぷよeスポーツ」と「バーチャファイターeスポーツ」の両タイトルにテコ入れを行っていただきたい。そして、これを皮切りにゲーセンでもeスポーツが盛り上がり、なおかつ店舗の収益にもつながるオペレーションを確立することを望みたい。

「全国の『セガ』を愛する多くのお客様には、悲しい思いをさせてしまったかもしれません。そのような声がたくさん上がったことで、皆様が『セガ』に強い愛着をずっとお持ちであることがわかりましたので、逆にたいへん嬉しく、ありがたいなとも思いました。

 我々も皆様のお気持ちはよくわかっており、引き続き『セガ』には愛情を持ち続けております。新ブランドの『GiGO』も、『セガ』を愛している皆様にも受け入れていただくのにふさわしいものに育てていきますので、引き続き宜しくお願い申し上げます。

 長い歴史の中で進化を続けてきたゲームセンター文化を、今後も良いところは維持しながらも、さらに発展させていきたいと考えておりますので、ぜひ応援して下さい」(片岡会長)

(参考リンク)

・全国のアミューズメント施設の屋号を「GiGO」へ一新(GENDAのホームページ)

ライター/日本デジタルゲーム学会ゲームメディアSIG代表

1993年に「月刊ゲーメスト」の攻略ライターとしてデビュー。その後、ゲームセンター店長やメーカー営業などの職を経て、2004年からゲームメディアを中心に活動するフリーライターとなり、文化庁のメディア芸術連携促進事業 連携共同事業などにも参加し、ゲーム産業史のオーラル・ヒストリーの収集・記録も手掛ける。主な著書は「ファミダス ファミコン裏技編」「ゲーム職人第1集」(共にマイクロマガジン社)、「ナムコはいかにして世界を変えたのか──ゲーム音楽の誕生」(Pヴァイン)、共著では「デジタルゲームの教科書」(SBクリエイティブ)「ビジネスを変える『ゲームニクス』」(日経BP)などがある。

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