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ヤクルト浮上の鍵は2ストライク後の山田の打撃

小中翔太スポーツライター/算数好きの野球少年

昨季の打率を維持出来ないのはある程度予想通り?

昨季大ブレイクを果たしたヤクルト・山田。強力ヤクルト打線の核弾頭として打率.324、29本塁打、89打点の数字を残し、一気に日本を代表するスター選手となった。OPS.941はバレンティンに次ぐリーグ2位。四球もリーグ4位の74個を選び出塁率は4割を超える。15盗塁を決める脚力もありトリプルスリーも狙える選手として大きな期待を背負って今季を迎えた。しかし現在の打率は.250と少し寂しい数字。ただ昨季はBABIPが.342とかなり高かったため、昨季の打率よりも下がることが予想されていた。BABIPはフェアゾーンに飛んだ打球の内安打になった割合を示す指標で、年度によってバラつきが大きい。ほとんどの選手は最終的には.300付近に収束するためBABIPが例年より高いシーズンに高打率を記録しても翌年も同じ成績を残すことは難しいと考えられる。内野安打が多い俊足巧打タイプの選手は数値が大きくなるが、右打ちの山田の内野安打率は6.2%(リーグ17位)とそれほど多くない。現在のBABIPは.290であり、昨季と同等以上の打率を望むのは難しい。ただそれ以上に気になるのが今季は山田の魅力である2つの特徴、長打力と追い込まれてからの強さが発揮出来ていないことだ。

昨季の山田は4番を打てる長打力を発揮していた

IsoPは(長打率−打率)で計算される純粋な長打力を示す指標。馴染みがあるのは長打率だがこれは単打でも上がるため遠くへ飛ばす能力を表しているとは言えない。

100打数40単打

100打数10本塁打

これはどちらも長打率は0.400だが長打力が同じではないだろう。IsoPなら.000と.0300とハッキリ差がわかる。目安としては一発のある強打者ならば.150以上は欲しいところ。.200あれば文句なしの長距離砲だ。昨季の山田のIsoPは.215でリーグ4位。山田の上にいるのはバレンティン、エルドレッド、筒香の3人だけですぐ下にはゴメスがいる。誰もが認める長距離砲達だ。.324の高打率に加えてこの長打力があるのだから相手投手からすれば脅威だった。しかし今季のIsoPは.129。これは強打者ではなく巧打者の残す数字だ。現在36試合で4本塁打、シーズン換算で約16本塁打ペース。昨季39本打った二塁打は今のところ約24本ペースだから昨季ほどの怖さはない。

チーム浮上の鍵は山田の追い込まれてからの打撃

打率にも長打力にも大きく影響していると思われるのが2ストライク後の打撃。昨季は追い込まれてからでも.292の打率を残しリーグ平均の.187を1割以上も上回った。しかし今季は.232。2ボール2ストライク時には.323の数字を残しているが2ストライク、1ボール2ストライク、3ボール2ストライクの時は全て1割台。昨季は最も悪いのが1ボール2ストライク時の.267で最も良いのが2ストライク時の.333だったからその差は歴然だ。打率もそうだがここでも長打力を発揮出来ていない。じっくり待つタイプの山田は昨季初球をガツンと打っての本塁打は2本しかなかったが、2ストライク後の本塁打は12本もあった。二塁打も15本あり追い込まれてからが強かった。しかし今季は2ストライク後の82打数で長打は二塁打が1本だけ。他は全て単打に抑えられている。山田の状態を測るバロメーターはこの2ストライク後の打撃だろう。相手のウイニングショットを捉えることが出来れば相手バッテリーにダメージを与え、味方に勢いをもたらすことが出来る。一時首位に立ったチームも現在は借金2の4位で5位の広島とはゲーム差なし。再び浮上出来るかは追い込まれてからの山田のバットにかかっている。

スポーツライター/算数好きの野球少年

1988年1月19日大阪府生まれ、京都府宮津市育ち。大学野球連盟の学生委員や独立リーグのインターン、女子プロ野球の記録員を経験。野球専門誌「Baseball Times」にて阪神タイガースを担当し、スポーツナビや高校野球ドットコムにも寄稿する。セイバーメトリクスに興味津々。

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