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【体操】シライに続く跳馬の新技「オグラ」誕生へ! “日本の隠し球”小倉佳祐

矢内由美子サッカーとオリンピックを中心に取材するスポーツライター
5月17日、東日本インカレで跳馬に臨む小倉佳祐

■跳馬のスペシャリスト小倉佳祐

小倉佳祐(おぐらけいすけ)は早大4年。跳馬とつり輪を得意とする選手だ
小倉佳祐(おぐらけいすけ)は早大4年。跳馬とつり輪を得意とする選手だ

リオデジャネイロ五輪のゆくえを占う体操世界選手権(10月=英国・グラスゴー)の最終選考会を兼ねた全日本種目別選手権が、6月20、21日に東京・代々木第一体育館で行われる。

ゆかの白井健三、あん馬の亀山耕平、平行棒の田中佑典、田中和仁、つり輪の山室光史といった世界選手権の種目別メダリストたちがトップレベルの争いを繰り広げる中、世界ではまだ知られていない“隠し球”が虎視眈々と代表入りを狙っている。

跳馬のスペシャリスト、小倉佳祐(おぐらけいすけ=早大4年)だ。千葉・習志野高校3年のときに全日本種目別選手権で初優勝し、早大進学後も2年、3年で連覇を達成した。今回優勝すれば3年連続4度目の頂点となる。

注目はタイトルだけではない。世界大会で成功すれば自身の名「オグラ」と命名されることになる、超高難度技を持っていることだ。

技の難度を示すDスコア6・0の「ロペス(伸身カサマツとび2回ひねり)」に、さらにひねりを半分加えた大技で、通称「ロペスハーフ」。技の難度を示すDスコアは6・4だ。

これは白井健三が13年世界選手権で初めて成功させて自らの名が付いたDスコア6・0の「シライ/キムヒフン」(キムヒフン選手も同大会で成功)よりも、また、今年になって内村航平が成功させているDスコア6・2の切り札技「リ・シャオペン」よりも難度が高い。

すでに小倉は5月24日にあったNHK杯でこの技を成功させ、15・800点(Dスコア6・4、技の出来映えを示すEスコア9・4)を叩き出している。世界大会では例のない大技の成功は、各方面に衝撃を与え、小倉がNHK杯での映像を自身のフェイスブックに投稿したところ、再生回数は1万5000を超え、世界各国のユーザー約100人が動画をシェアした。

■「オグラ」誕生の条件は世界選手権か五輪で成功させること

小倉は千葉県佐倉市出身。3歳で体操を始め、フジスポーツクラブ時代は昨年の世界選手権代表メンバーである同学年の野々村笙吾と切磋琢磨した。野々村を「仲の良い選手であり、あこがれの存在」だという。

千葉・習志野高校に進学してから跳馬で頭角を現すようになり、高2から試合で「ロペス」を披露。高3で一気に全日本種目別のタイトルを獲得した。

特長は高さのある跳躍とひねりがうまくマッチしていること。ひねり自体も元々得意だったとのことで、「うまく自分がひねれる位置にすぐ来られるので、そんなに失敗はない」と自信を持っている。

国際体操連盟では、五輪か世界選手権で新技を成功させた選手の名が技につくことになっており、近年の日本人では13年に白井がゆかで2つ、跳馬で1つ、計3つの名が付く新技を成功させた。このほかつり輪で加藤凌平、田中佑典が新技を成功させ、名がついている。また、オーストラリア国籍の塚原直也もつり輪の技に名がついている。

小倉の場合も、技に「オグラ」と名がつくにはまずは世界選手権に出ることが必要だ。そういう意味で全日本種目別は、「オグラ」という名のつく舞台を求めての挑戦ということにもなる。

そのため、少しでも代表入りの可能性を広げたいと、この数カ月はもう一つの得意種目であるつり輪の強化に力を入れてきた。全日本種目別選手権ではDスコア6・6の構成を予定。小倉は、「力技を見て欲しい」とアピールする。

世界選手権の残りの代表枠は3つ。日本の隠し球は、世界をアッと言わせるチャンスを掴むか。

サッカーとオリンピックを中心に取材するスポーツライター

北海道大学卒業後、スポーツ新聞記者を経て、06年からフリーのスポーツライターとして取材活動を始める。サッカー日本代表、Jリーグのほか、体操、スピードスケートなど五輪種目を取材。AJPS(日本スポーツプレス協会)会員。スポーツグラフィックナンバー「Olympic Road」コラム連載中。

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