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新球“千賀フォーク”は準備OK!ソフトバンク五十嵐が志願の2軍戦

田尻耕太郎スポーツライター
2軍戦に志願登板したソフトバンク五十嵐投手

武田先発もチームは5連敗

3月29日のウエスタン・リーグ。ソフトバンクはタマスタ筑後で広島と対戦した。

【3月29日 ウエスタン・リーグ タマスタ筑後 1,433人】

広島     200000030 5

ソフトバンク 001000002 3

<バッテリー>

【C】○床田(1勝0敗)、藤井、佐藤、今井――船越、磯村

【H】●武田(0勝1敗)、五十嵐、笠原――栗原

<本塁打>

なし

調整登板で先発した武田投手
調整登板で先発した武田投手

<戦評>

ソフトバンクはWBCメンバーの武田が開幕前の調整登板で先発したが、初回に自身の暴投も重なり2失点。その後はゼロを並べて6回まで投げ切ったが、負け投手になった。チームは1勝6敗と開幕ダッシュに失敗している。

打線もやや低調。3回の得点は相手のバッテリーミス。9回は先頭の釜元の三塁打でチャンスを作り続く栗原のタイムリー二塁打で1点を返し、その後も得点を加えた。反撃及ばずだったが、翌日以降の復調につながるだろうか。(了)

五十嵐亮太「今年の僕にフォークは必要」

あれ?ユニフォームが…! 「スタンドがざわざわしてましたね。恥ずかしい(苦笑)」
あれ?ユニフォームが…! 「スタンドがざわざわしてましたね。恥ずかしい(苦笑)」

ストンと落として3球三振。

「ようやく準備が整いましたね」

プロ20年目のシーズンを迎える五十嵐亮太は納得顔を浮かべた。

3月29日に公示された開幕一軍メンバーに名前を連ねたが、2軍戦の広島戦(タマスタ筑後)に志願登板。7回からマウンドに上がりメヒアを投ゴロ、美間を空振り三振、船越を遊ゴロであっさり三者凡退に。わずか10球で仕事を終える完璧なピッチングだった。

特に五十嵐が満足したのは美間を三振にとった勝負球だ。フォークがイメージ通りの軌道でストンと落ちた。

昨年まで「フォークは投げていなかった」

このフォーク、じつは春季キャンプ中に千賀から投げ方を教わって習得に励んだ、今シーズンの新球種だ。

「フォークは、ソフトバンクに来てから投げていなかった球種なんですよ」

意外だった。ヤクルトで抑えのエースだった頃は「真っ直ぐとフォーク」の投手というイメージだった。しかし、アメリカにわたってから投球スタイルを変え、帰国してソフトバンクに入団してからも一番武器とした変化球はナックルカーブだった。

「フォークを投げようとしても落ちなかった。僕にとってストレスにしかならない球種になってしまっていたんです」

今春キャンプ中の2月11日、練習中のふとした瞬間に千賀に声をかけた。

「フォークはどうやって投げてるの?」

相手は一回り以上も下の後輩だが、教えを乞うた。まさに目からウロコだった。

キャンプで千賀に教えを乞うた

登板後にはタマスタ筑後でファンサービスも
登板後にはタマスタ筑後でファンサービスも

「これまでになかった感覚で、彼の言っていることがすごく分かりやすかった。握り方じゃなくて、コツは投げ方というか腕の振り方でした。彼はフォークの時だけ、腕をしならせるのではなく、肘から先が一緒に出るような感じで投げていたんです。(中田)賢一も同じでした。そうすると、ほとんど回転をしない。だから落ちる。加えて、千賀が言うには『腕がしっかり振れるから、たとえ抜けてもチェンジアップのような感じになるので安心』らしいです」

それからすぐに試投し「これは使える」と確かな手応えも得ていた。

しかし、いざ実戦が始まると、なかなか上手くいかなかった。

「もっとこうしようとか、自分で余計なことをしたり考えたりし過ぎていた。前回のオープン戦登板(25日、広島戦=ヤフオクドーム)から感じはよかった。余計な部分をそぎ落として、見えたものがあった。回り道をしてしまったけど、結局辿り着いたのはココかという心境ですね(笑)。けど、フォークが使えるようになったのは大きいです」

この日の2軍戦登板は、マウンド機会を増やしたい意味合いもあった。

直球のスピードも戻ってきた

直球も一時は140キロ台前半しか出なかったが、25日のオープン戦で147キロをマーク。この日も146キロと徐々に本来の姿を取り戻しつつある。「できれば150キロを出したいですけどね。あと少しかな」。

昨季の戦いぶりを見れば、今季のV奪回はブルペン陣の活躍が大きなポイントの一つとなる。五十嵐自身も20年目の逆襲へ、「そろそろ相手はナックルカーブに慣れてきてカットされる場面が多くなっていた。フォークは今季の僕にとって絶対に必要な球になります」と意気込む。戦いの準備は、整った。

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。「Number web」でのコラム連載のほかデイリースポーツ新聞社特約記者も務める。2024年、46歳でホークス取材歴23年に。 また、毎年1月には数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。

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