卓球混合ダブルスで金を初めて逃した卓球王国の中国は落胆
混合ダブルスで水谷隼選手と伊藤美誠選手の組が中国ペアを下し、卓球で日本に初の金メダルをもたらした。一方、敗れた卓球王国、中国は「初めて金を逃した」としてがっかりしている。
卓球で初めて金を逃す
「中国の卓球はこの17年間で初めて金を逃す」
2004年のアテネ五輪以降の17年間で初めて金メダルを逃したと報じたのは、中国新聞網。
記事はこう続く。
卓球が1988年のソウルで五輪の正式種目になって以来、32個の金メダルのうち、28個は中国が得てきた。そうした中で、男女のシングルや団体戦で金メダルを取るのがいかに難しいかは、日本にとっては「言わずもがな」。
だから日本は東京五輪の機会に、混合ダブルスを種目に加え、卓球での金メダル獲得の突破口にしようとした。
しかし、日本の願望は全く非現実的だったわけではない。中国は混合ダブルスを「戦略的に放棄」してきたからだ。こうなるシナリオは既に描かれていた、云々。
と、中国敗北の「一大事件」を、少々、未練がましく伝えた。
中国のネット民は厳しい?
中国ペアは、31歳の許昕と30歳の劉詩雯というベテランの2人だった。
自国ペアの敗北に対し、中国のネット民は手厳しい。
「許昕はハートが強いと言われるが、実は精神的に脆い」
「老兵は引退すべきだ」
一部の中国メディアは、2人にとっては恐らく最後の五輪とも書いている。
ネット上では、更に「コーチが悪い」と指導陣の責任を問う声もあれば、試合の途中で中国の卓球協会のトップが席を立ったことに触れ「こんな時に、なんの重要な電話だ」と憤る声もあった。
中国のファンのもどかしさと焦りぶりが目に浮かぶような、ユニークな書き込みもあった。
「水谷選手の眼鏡に絶対問題がある。ハイテクで球の回転が見えるに違いない」
「中国チーム何やっている!もう少しでテレビを壊しそうになった!」
中国の劉詩雯選手は号泣で謝罪
「チームに対して申し訳ありません。チーム全体が混合ダブルスのために、多くの犠牲を払ってくれました。この試合で役目を果たしたいと思ったのですが」
中国の国営テレビのカメラの前でこう話した劉詩雯選手は、はっきり言って号泣だった。
「皆さんごめんなさい」
試合中は鋭い眼光を放っていた劉選手が、迷子になった子供のように自信なさげ瞳を揺らし、止めどなく涙を流す様子に、私も思わずもらい泣きしてしまった。
さすがに、この劉選手の姿には中国のネット民も心打たれたようだ。同情的だった。
「全力を尽くしたのだから、それでいい。貴方は私の英雄だ」
「謝ることなんか何もないよ。力を尽くしたあなたは一番素晴らしい」
中国のアスリートは、国を背負っているという意識が非常に強い。それは長く国の宣伝を担ってきた歴史とそうしたプレッシャーを受け続けてきたためでもある。時に完璧なまでのパフォーマンスを見せる彼らは、試合では何やら非人間的な怖い存在に見えることさえあるが、取材で接する際の姿は、皆、アスリートらしい爽やかな若者たちである。
表彰台に上がる際も、沈んだ表情のように見えた許・劉ペアだが、成績は立派な銀メダル。
メダルを取れても取れなくても、素晴らしい試合をしたアスリートたちは、皆、胸を張って欲しい。