「冬の台風」、ポーラーロウ
まるで台風のような渦巻き雲
表紙の写真は27日正午、気象衛星ひまわり8号がとらえたポーラーロウ(polar low:PL、寒帯低気圧)です。
雲の直径は約400キロで、反時計回りに回転しています。中国大陸から暖かな日本海に吹き出す寒気のなかに発生する低気圧で、発達すると台風のように中心に眼ができることもあります。ポーラーロウは「冬の台風」といえるかもしれません。
このポーラーロウは26日から27日にかけ、日本海を北東へ進みました。地上の低気圧は27日9時で988ヘクトパスカル。
この24時間で14ヘクトパスカス低下しました。
寒気の吹き出しにより、和歌山では午前8時過ぎにみぞれを観測し、1951年以来、64年ぶりに早い初雪となりました。そのほか、鳥取や広島でも平年より10日前後早い初雪です。
ポーラーロウを発生させる条件
ポーラーロウは暖かな海に吹き出す寒気のなかで発生する低気圧なので、海が暖かいほど、寒気が強いほど発達しやすいといえます。
実際、今の日本海の海面水温は15度前後あり、平年よりも2度以上高くなっています。これまでの記録的な暖かさが影響しているでしょう。
一方で、西日本に流れ込んだ寒気は上空約3000メートル付近でー13度からー15度くらい、平年よりも9度くらい低くなっています。
つまり、暖かい日本海と強い寒気による温度差が低気圧を発達させるエネルギーとなったのです。
少し専門的に言うと、寒気の吹き出す強さを「寒気の吹き出し指数(marine cold-air outbreak index:MCAO)」といい、海面水温(T)と700hPaの温位(θ)で表します。吹き出す寒気の温度が低いほど、海上の下層大気は不安定となり、ポーラーロウが発生、発達しやすくなります。
今年のように、秋の気温が高いと海も暖かいため、ひとたび強い寒気がやってくると、低気圧が発達し、広範囲で悪天候に見舞われることが多くなります。つい寒気ばかりに目が行きがちですが、湿った空気を補給する日本海の存在はとても大きいのです。
【参考資料】
Erik W. Kolstad,Thomas J. Bracegirdle,Ivar A. Seierstad,2008:Marine cold-air outbreaks in the North Atlantic: temporaldistribution and associations with large-scale atmosphericcirculation
小倉義光,2015:ポーラーロウ,日本の天気 その多様性とメカニズム,213-227.