日本シリーズ熱戦 ホームランは天気が決める?
佳境に入っているプロ野球日本シリーズですが、昨日(27日)とてつもない記録が作られました。ヤクルトの山田哲人選手が、シリーズ史上初となる、3打席連続ホームランを打ったのです。
山田選手の実力はもちろんのことですが、この快挙には、神宮球場のある特徴も影響したかもしれません。実は神宮球場は去年、最多ホームラン数を出している球場です。一試合あたりの本塁打率は1.26本と、他の球場と比して最も高かったのです。球場が比較的狭いこと、そしてフェンスが低いことなどが、バッターに好影響を及ぼすのだと言われています。
ちなみに、今年ホームランが急増した球場は、パリーグ覇者・福岡ソフトバンクホークスの本拠地である、ヤフオクドームです。外野フェンスの手前にホームランテラスを設けたことで、フェンスまでの長さが短くなりました。その結果、日本一ホームランが出にくかった球場が一転して、ホームランが出やすい球場へと変化したのです。
このように、国内には本塁打になりやすい球場があるのですが、アメリカにもあります。しかしその理由は、球場の広さだけではないようです。
気圧とホームランの関係
米コロラド州デンバーに、全米で最もホームランが出やすい球場として知られ、「バッターズパラダイス(バッター天国)」とまで称される球場があります。その場所は「クアーズ・フィールド」、MLBコロラド・ロッキーズのホームグラウンドです。この球場は何が特別なのでしょうか。
それは気圧です。
クアーズ・フィールドは、標高1.6キロメートルという高地に位置しています。コロラド州は、マラソンの高橋尚子選手が、わざわざ渡米して高地トレーニングを行った場所としても知られています。
標高の高い場所は空気が薄く、気圧が低い、つまり空気密度が小さくなります。すると抵抗が減るので、ボールが飛びやすいのです。球団の公式HPによると、この球場で出たボールの飛距離は他の球場に比べて9%も長いといいます。このため、ホームランが他の場所よりも圧倒的に多く出るのです。例えば、海抜がほぼ0メートルのヤンキースタジアムで122メートル飛ぶとすると、クアーズ・フィールドでは134メートルも飛ぶ計算になります。
湿度とホームランの関係
常時気圧の低いこの球場では、ホームランが出過ぎるとして、それを改善するような対策がとられています。それが、ボールの加湿処理です。
クアーズ・フィールドでは、常に湿度を50%に保つためのボールの貯蔵庫が設けられました。ボールに湿度が加わると、重くなり、バウンスしにくくなります。そのため、バットに当たった時に、跳ね返りにくくなり、結果的に飛距離が短くなるというわけです。実際、目に見える効果があったようで、貯蔵庫を設ける前は一試合で平均3.2回のホームランが出ていたのに対し、設置後は2.39回に減ったと言います。
実は、この貯蔵庫の導入にあたっては、あの野茂英雄投手が関係しています。彼は、よりにもよってこのバッター天国で、ノーヒットノーランの快挙を達成したのです。その試合で雨が降っていたことをヒントに、ボールに湿度を加えるようになったとも言われています。
気温とホームランの関係
最後に、飛距離と温度の関係も紹介しましょう。暖かい日の方が、寒い日よりもホームランが出やすい傾向があるのです。
暖かい空気は膨張し、空気の密度は小さくなります。つまり、気圧が低い時と同じようにボールに当たる空気抵抗が少なくなり、結果的に飛距離が長くなるのです。その結果、4月にヒットだったものが、8月にはホームランになることもあるというわけです。実際、1998年の猛暑の夏にはホームランの数が非常に多く、また気温の高いデイゲームの方が、ナイターよりも6%もホームランが多いようです。
この他にも風や、雲の量なども試合の動向に影響します。
アメリカには、こうした天候条件を考慮して、ホームランが出やすいかどうかを教えてくれるアプリもあります。
気になる日本シリーズ第4戦
今夜(28日)も神宮球場で、日本シリーズ第4戦が行われます。南風が吹いて暖かかった昨夜とは打って変わって、北風が吹き、気温が下がる予想です。さあ、ホームランの数はどうなるでしょうか。ぜひご注目を!