民家に突っ込んできたロシア軍の巡航ミサイル
12月29日朝のロシア軍による巡航ミサイル攻撃について、ウクライナ西部のイヴァノ=フランキウシク州の民家に突っ込んで来て不発となったロシア軍の巡航ミサイルの写真が報告されています。
以下はウクライナのティモシェンコ大統領府副長官のテレグラム投稿からです。
これを見たロシア側の一部の反応は「ウクライナのS-300地対空ミサイルの誤射だ」というものでしたが、しかしこれは間違いなくロシア軍の巡航ミサイルです。何故ならS-300に付いている筈の無い「主翼」が存在しているからです。
民家に突っ込んだロシア軍の巡航ミサイル
亜音速で飛翔する巡航ミサイルは機体の中央に展開式の折り畳み主翼が付いています。本来ならば機体の真横90度付近まで展開するのですが、着弾の衝撃で半分ほど後方に畳まれています。
ウクライナ国家保安庁のイヴァノ=フランキウシク州の事務所のフェイスブックでも同じミサイルの残骸が紹介されています。撮影時間帯が違いますが同じミサイルです。
Управління СБ України в Івано-Франківській області
※ロシア軍の使用する亜音速巡航ミサイルは主に3種類(カリブル、Kh-101、Kh-55系)
- 胴体が円筒形(Kh-101は角張っているので除外)
- 主翼の装着位置(Kh-101は下面に装着されているので除外)
- 主翼の翼端の形状(Kh-55系なら翼端は丸いがこれは四角い)
以上の特徴からロシア軍の3M-14カリブル巡航ミサイルの残骸であると考えられます。エンジンを含む後部は脱落して見当たらず、ミサイル先端にある航法ユニットも見当たりません。民家で発見された部分は主翼の他に燃料タンクと爆発弾頭が入っています。不発というだけで一番危険な部分が民家に突入しています。
おそらくミサイルは浅い角度で地面にぶつかってバウンドしながら(速度の勢いが弱まりながら)、民家に飛び込んできたように思えます。そして着弾時の衝撃で折り畳み主翼が展開状態から半分だけ折り畳まれている状態です。
参考:2022年9月29日ウクライナ中央部のキロヴォフラード州
これは9月29日に報告されたロシア軍の巡航ミサイルの残骸です。ウクライナ軍の防空システムが撃墜したものですが、被弾した後にも暫く飛びながら不時着に近い形で地面に落ちて来たのか、比較的状態がよく形が保たれています。主翼も飛行状態での展開位置です。形状の特徴からカリブル巡航ミサイルです。
12月29日にウクライナ西部のイヴァノ=フランキウシク州の民家に突っ込んできた巡航ミサイルと主翼の構造を比べて見ましょう。主翼の翼端が同様に四角いのが分かると思います。
参考:2022年11月1日ウクライナ中央部のドニプロペトロウク州
これは11月1日に報告されたロシア軍の巡航ミサイルの残骸です。ちょうど12月29日にウクライナ西部のイヴァノ=フランキウシク州の民家に突っ込んできた巡航ミサイルと同じように主翼が半分だけ折り畳まれています。ただし主翼の翼端が丸いようにも見えるので、Kh-55系の巡航ミサイルの残骸である可能性があります。
参考:2022年10月19日ウクライナ中央部のヴィンニツャ州
これは10月19日に報告されたロシア軍の巡航ミサイルの残骸です。形状からKh-101巡航ミサイルの主翼付近の部分で、逆さまの状態となっています。胴体の断面は円筒形ではなくステルス形状の多角形で、折り畳み主翼は下面に装着されています。この写真では分かり難いですが、Kh-101の主翼は飛行状態に展開しても後退角度が付いています。