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宅配ピザが52分遅れたから慰謝料10万円払え!運営会社の法的責任は? #専門家のまとめ

前田恒彦元特捜部主任検事
(写真:イメージマート)

クリスマスに宅配ピザを注文した男性による民事裁判が話題となっています。52分遅れて届いたことで返金を受けたものの、30分程度が我慢の限界であり、精神的苦痛を被ったとして、運営会社に慰謝料10万円の支払いを求めているからです。しかし、一審に続き、7月18日の控訴審判決も運営会社の法的責任を否定し、男性の請求を棄却しました。宅配ピザを巡る法的トラブルについて、参考となる記事をまとめました。

ココがポイント

▼裁判所は、返金でも補えない精神的損害など考えられないし、仮にあったとしても、特段の事情がない限り、返金だけで十分だと判断

「ピザ52分の遅配は我慢の限界」 慰謝料求めた男性、司法の判断は(朝日新聞DIGITAL)

▼割引キャンペーンやクリスマスの時期などに注文が殺到し、遅配や引き渡しの遅延が生じて客からクレームが入る事態も

店舗で注文停止できず…ドミノ・ピザ遅延繰り返し、本部の現場軽視とAIシステム過信(Business Journal)

▼メキシコでは宅配ピザが40分遅れたことに激怒した客が配達人を監禁し、刃物でめった刺しにして殺害した事件まで発生

「配達が遅い」とピザ配達人を殺害(AFP BB News)

▼一方で、ピザを受け取って配達人が帰ったあと、通常どおりの分量なのにトッピングが少ないと店に返金を求めるクレーマー客もいる

宅配ピザに驚愕クレーマー!「トッピングの量が少ない」と言い張り返金を要求して……(キャリコネニュース)

エキスパートの補足・見解

以前は販売促進のため、宅配ピザ各社が「30分以内に届けられなかったら無料にする」とか「次回使える無料クーポンを渡す」などとうたっていました。しかし、配達を急ぐ配達人による信号無視やスピード違反、交通事故が問題となり、いまでは撤廃されています。

社内の目標にとどめるにしても、あまりにも厳しい時間制限は店のスタッフらにしわ寄せがいくだけですし、これを守ろうとして危険な宅配に及んだ配達人が事故にあい、負傷したり死亡したりしたら、労災になるだけでなく、運営会社が損害賠償責任を問われる事態にも発展します。

そうした中、セブン-イレブンが北海道や関東、九州の約200店舗を皮切りに、8月から焼き立てのピザを最短20分で宅配すると発表しました。配達は専門の業者に委託するとのことですが、メディアでは「最短20分」という部分が強調されて報じられており、クレーマー客による刑事・民事の法的トラブルが懸念されます。(了)

元特捜部主任検事

1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。

元特捜部主任検事の被疑者ノート

税込1,100円/月初月無料投稿頻度:月3回程度(不定期)

15年間の現職中、特捜部に所属すること9年。重要供述を引き出す「割り屋」として数々の著名事件で関係者の取調べを担当し、捜査を取りまとめる主任検事を務めた。のみならず、逆に自ら取調べを受け、訴追され、服役し、証人として証言するといった特異な経験もした。証拠改ざん事件による電撃逮捕から5年。当時連日記載していた日誌に基づき、捜査や刑事裁判、拘置所や刑務所の裏の裏を独自の視点でリアルに示す。

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