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明治大学・田中澄憲監督、22年ぶりに優勝も「初優勝のよう」。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
試合前日、福田キャプテン(左)は「いいチームになってきた」(写真は筆者撮影)。

 明治大学ラグビー部が、22シーズンぶり13度目の大学選手権制覇を果たした。1月12日、東京・秩父宮ラグビー場での決勝戦で天理大学に22―17での勝利。ハーフタイム直前のピンチを無失点でしのぐなど献身的な防御で魅し、後半22分までに22-5とリードを保っていた。

 前年度には19年ぶりの決勝進出を果たすも9連覇を目指していた帝京大学に20―21で惜敗。今季は2年連続で立った舞台で、結果を残した。

 試合後は、前回優勝時の主力選手だった田中澄憲監督とこの日出場した福田健太キャプテンが会見。喜びを語った。学生スポーツの醍醐味が再確認できる。

 以下、共同会見中の一問一答の一部(編集箇所あり)。

田中

「皆さん、本日はありがとうございました。明治大学としては22年ぶりの優勝を達成できたんですけど、僕自身――福田もそうだと思いますが――22年ぶりという実感もなく、初優勝のような気持ちです。天理大学さんは強くてタフなチームでしたし、スクラムも劣勢で、厳しい試合だったのですけど、選手がそれ以上にタフになったと思いますし、よく我慢して戦ってくれたなと思います。我々は去年、ここでの決勝戦で帝京大学さんに1点差で敗れ、帝京大学さんに勝つことを目標にしてやってきました。決勝の相手は天理大学さんでしたが、(1年間を通して)間違いなく目標とするチームがあったのでここまでこられた。

 大学選手権に入って早稲田大学さん、東海大学さん、立命館大学さんから厳しいレッスンを受けて成長し、きょう天理大学さんに勝つことができた。きょうでおわりじゃない。チームとしてさらに大事なものが積み上がったような気がします。たくさんのお客さんにも感謝したいです。ありがとうございました」

福田

「皆さん、お疲れさまでした。いまの気持ちとしては…。高校の時に明治大学を選んだのは、帝京大学を倒して日本一になりたかったからです。去年は決勝の舞台で1点差負け。その悔しさを心のどこかに秘めてプレーしてきました。

 今日の決勝戦に至るまで、道のりは楽ではありませんでした。

 関東大学対抗戦A(加盟先)では早稲田大学さん、慶応義塾大学さんに敗れ、いい課題をいただいた。あの2戦があったから、ここまでレベルアップできました。選手権ではチームとして成長し続けていると、キャプテンとしても感じました。今日は天理大学さんという、春と夏に負けている相手との試合でした。ですので気持ちの緩みは全くなく、積み上げてきたものをぶつけようと臨んだ結果、日本一を獲れました。嬉しく思います。

 優勝に至るまでたくさんの方々の支えを感じましたし、これだけ応援していただけるチームで試合ができたことを本当に誇りに思います。ありがとうございました」

――最後の場面。ボールキープをし切れず相手ボールスクラムを与えました。その時の防御シーンでは、どんな気持ちでしたか。

福田

「残り約1分のところでこちらのミスでボールを奪われました。天理大学さんはスクラムを強みにしていましたが、ネガティブにならずもう1回ボールを獲り返してやろうと15人が思いました。結果的には相手のノックオンで終わりましたが、それは僕らがあの場面だけではなく80分間を通してプレッシャーをかけ続けた結果だと思う。ノーサイドになった時は嬉しかった。80分間、ディフェンスが鍵だと思っていました」

――メンバー交代について。後半途中、スタンドオフを忽那鐘太選手から松尾将太郎選手にスイッチ。最後のスクラムの場面では、一気にフォワード第1列の3名を交代させました。

田中

「スタンドオフは予定では前半終了時に代えるつもりでした。ただ、忽那がいい流れを作ってくれていたので、後半10分まで引っ張った。もともと忽那、松尾のところ(交代)でゲームにアクセントをつけようとしていたので、予定通りです。

 スクラムの場面での3人の交代ですが、相手はすでに1、3番(両プロップ)を代えていたなか、消耗も激しかったので『次のスクラムのところで3人チェンジ』と準備していました」

――蹴り合いの場面が多かった。

田中

「特に指示はしていないのですが、選手のグラウンドでのプレッシャーとか精神状況が関わってきたと思います。硬くなったのかな、と。いいキャッチしたら、ボールを動かしながら蹴ってもよかったかな、とは思います。(その点は)ハーフタイムに言ってもよかったのですが、与える情報量が多すぎてもよくない。その時は、もっとシンプルなことを言いました」

――試合前、選手にどんな声をかけましたか。

田中

「対抗戦が開幕してから36人のメンバーが紫紺(レギュラーのジャージィ)を着て戦ってきたわけです。紫紺を、タスキのように繋いできたわけですよね。だから勝ち負けだけを意識するんじゃなく、メンバー外の選手が見ていて誇りに思えるようなプレーをしよう。そういう話はしました」

――防御の集中途切れなかった。

田中

「ディフェンス面は早明戦が終わってからどんどん成長していると思います。自分たちのシステムもそうですけど、我慢強さ。我慢できるようなチームになってきました。明治はどっちかとアタックが得意でタックルは苦手という選手が多かったんですが、やっぱり勝つにはディフェンスなんだという文化を理解し、取り組んだ結果じゃないかと思います」

――去年のチームといまのチーム。変わった部分は。

田中

「去年は、言ってしまうと決勝戦まで行って満足したチームだったと思います。日本一を獲るぞと言っても、そこに対する自信はなかったと思います。120パーセントの力を出して、帝京さんが100パーセントの力を出し切れなくてあの点差だったのかなと思います。ただそこの舞台に立ってあの試合ができたことで自信を持って、今年は本気で日本一を獲りに行かなきゃと向かっていけた。この結果は去年の4年生から始まっていると、僕は思っています」

――分析と準備。

福田

「スタッフの方々が入念な準備をしてくださって、ストラクチャーを用意してもらえるんですが、僕自身の反省としては対抗戦での早稲田大学戦の際に、ストラクチャーにはまりすぎて型にこだわり過ぎたことがありました。早稲田大学さんのプレッシャーや裏のスペースとかを全く意識しないままにストラクチャーを遂行した結果、早稲田大学さんのディフェンスにはまってしまった。明治大学のアタック力を活かしきれずに敗戦してしまいました。

 それ以来、『ストラクチャーはあくまで攻撃のオプションのひとつ』として持って、ウイングなど色んな選手と『どこが空いているか』などのコミュニケーションを取る。そうすることで、そのストラクチャーが効くことになる。そう意識した結果、きょうは準備したプレーでトライが獲れました。ディフェンスは選手権に入ってから、コミュニケーションを取る、タックルした人間が次の仕事を探すという部分で成長し続けることができたのがよかったと思います」

――22年ぶりの優勝です。22年前からどのような思いで母校を見て、昨季ヘッドコーチとして入閣以降何に重点を置いてきましたか。

田中

「僕が4年生の時にこの決勝で負けて、そこから優勝していないんですけど、その(積年の)思いはいい意味であまりなかったです。逆に、去年19年ぶりの決勝戦だったということにびっくりしました。なぜそうなのかを色々考えた時に、(気になったのは)マインドセット、心構え。日本一を本気で目指すチームか、目指す努力をしているか。それを去年来た時に思いました。去年やったのはそこだけです。そこをしっかりと叩き込んだ。今季はもう少しラグビーのシステムに着手しました」

――22年ぶりの優勝。選手にとってはどういうものでしたか。

福田

「正直、22年ぶりに優勝したという実感はそこまでない。徐々に湧いてくるのかなと思います。22年も日本一から遠ざかっている分、僕らにとっては大学選手権優勝は未知のものだった。そのなか去年、去年決勝に行って明治大学の殻が破れた。明治大学は日本一を目指さなきゃいけない集団だと思いますし、去年決勝に行ったことで今年は自信を持って1年やれました」

 チーム内では試合前から、4年生部員を讃える談話が漏れた。そこには試合に出なかった部員への賛辞も含まれた。低迷期から才能集団と謳われてきた古豪が、戦う大義を見つめ直したことで強豪に昇華されようとしている。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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