2年前にインタビューしたダミアン・レーン騎手が大旋風!! 彼はいったいどんな男なのか?!
両親ともに調教師の下に生を受ける
初めてJRAの短期免許を取得して来日したダミアン・レーン。5月12日にはノームコアを駆ってヴィクトリアマイル(G1)を優勝。いきなりのG1勝ちを飾った。
こんな彼を私は2年前にオーストラリアでインタビュー。某競馬雑誌に記事を書いた。当時から「日本に行きたい」と語っていた彼は、一体どんな人物なのか。簡単に紹介していきたい。
1994年2月6日、西オーストラリアで6人きょうだいの長男として生を受けた。父・マイケルは調教師、母のヴィッキーは元調教師。こんな血統だから「初めて馬に乗ったのは物心がつく前で、いくつだったか記憶にない」そうだ。
「10歳の時には牧場で調教に跨っていました。見習い騎手として騎乗したのは2009年。15歳の時でした」
今回の活躍で「ダート競馬にもすぐ慣れた」などと言う解説者もいたが、実は彼の初騎乗はダート戦。慣れるも何も経験豊富だったのだ。
「ちなみに初勝利はゴール前だけ芝だけど、道中はダートというレースでした」
デビューを果たした時は高校に通っていたが1年で中退。騎手一本で行く事を決めると、徐々に騎乗依頼が増えたと言う。
幼い頃から馬に携わって来た経験が生き、カントリーでの規定の勝ち数はすぐにクリア。13年にはセソーヴァーという馬で自身初のG2制覇。更に翌14年にはトラストインナゲストという馬でクラークチャリティーCを優勝。これが自身初のG1制覇となった。
その後は大手厩舎からのサポートもあり、リーディングの上位争いに毎シーズン加わるようになった。
2年前のインタビュー。当時から根の真面目さを感じさせた
当然、ビッグレースでの露出度も増え、比例して結果を残すケースも多くなった。17年にはヒュミドールとのコンビでオーストラリアンC(G1)やマカイビーディーヴァS(G1)、ジョンスノーでオーストラリアンダービー(G1)、ザミッションでシャンパーニュS(G1)を次々と制覇。また、日本からの移籍馬ブレイブスマッシュで準重賞を勝つと、これまた元日本馬のトーセンスターダムとのコンビではトゥーラックH(G1)やエミレーツS(G1)を勝利してみせた。
そんな頃、彼に時間をとっていただき食事をしながらインタビューをした。
「香港は短期免許で乗ったのですが、とても勉強になりました。だから世界中で乗ってみたいという気持ちがあり、当然、間違いなくレベルの高い日本の競馬にもいつか参戦したいです」
当時まだ23歳であったが、全くキャピキャピしたような面はなく、一つ一つの質問に真剣な表情で言葉を選びながら答えてくれていた事を思い出す。その後も幾度となく顔を合わせているが、彼の態度は全く変わらない。根が真面目な男なのだろう。
近年の成績とこれから……
その後、18年以降もエルドラドドリーミングでイングリスサイヤーズ(G1)、ヘレンリーディングスターでオーストラリアンダービー(G1)、ランドオブプレンティーでトゥーラックH(G1)、アリスティアでケネディーオークス(G1)などを優勝。今回の来日直前にもキアミチでゴールデンスリッパーを勝つなど、地元オーストラリアの大レースではなくてはならない存在になってきた。
そして念願の初来日を果たした彼は、最初の週にいきなり新潟大賞典(G3)を勝つと、5月11日にはタワーオブロンドンで京王杯SC(G2)を、更に翌日のヴィクトリアマイル(G1)はノームコアでいずれもレコード勝ち。自身初となるJRAのG1制覇をあまりにもあっさりとやってのけた。
「皆さんのサポートがあって、良い馬にたくさん乗せていただけています。感謝しかありません」
オークスではコントラチェック、ダービーではサートゥルナーリアとG1での有力馬の騎乗予定が相次ぐ彼は、日本の優等生ジョッキーのようなコメントを笑み一つ見せない真剣な表情で発する。どうか怪我や制裁のないまま好騎乗を続けて欲しい。そしてまた改めて話を伺いたいと思う。
(文中敬称略、写真撮影=平松さとし)