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日本代表、欧州遠征メンバー発表。怪我人続出も強豪撃破目指す。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
写真提供=日本ラグビーフットボール協会

 ラグビー日本代表が10月29日、欧州遠征へ出発した。9月下旬から宮崎の候補合宿、別府での代表合宿をおこない、10月23日には昭和電工ドーム大分でオーストラリア代表と対戦。23-32で惜敗していた。

 今後の焦点は。メンバー選考の背景は。25日におこなわれた藤井雄一郎ナショナルチームディレクター(NTD)のメディアブリーフィングからひも解く。

 以下、共同会見時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

「オーストラリア代表戦を終えて、本当に選手はもちろん必死に勝つために頑張ったんですけども反則が多かったりして、自分たちで自分たちの首を絞めた部分もあった。その辺は修正していい結果を出せるようにメンバーもほぼほぼ確定していますし、切磋琢磨していいツアーにしたいです。

 ワールドカップ(日本大会)前は時間をかけて理解を深めていくことが多かった。今回はジェイミー・ジョセフヘッドコーチが来る前の段階からフィットネスや色んなことを落とし込んでいけた。そういう意味では、ここまででやれることは最大限できた。

 いままでは時間かけてやらなくてはいけなかったところ、いまはリーダー陣も(目指すプレーなどを)理解していて、若い選手への落とし込みはうまくいったと思う。チームとして向かっている方向はいい。課題は——試合勘がないと言えばそれまでですが——試合のなかでの反則、イエローカードと、直せる部分での課題だった。欧州遠征ではいい結果が出るんじゃないかと思っていますけど。

 基本的に(相手は)ティア1(最上位クラスのチーム)で、レフリーも…どうしても…そちらに、まぁ、傾きやすい。ただ、この試合を続けていけば、ティア1をひっくり返せる。そういうような試合運びはできていっている。残り2分1トライ差で追いつくところまではいっている。あまり悲観することではない。相手にプレッシャーがかかる時間も長かったと思う。

 ただ、だからと言って負けは負け。どう規律を守る(かを考える)。反則が出ているということは、プレッシャーを受けているということなので。

とにかく、ティア1との勝負は、ああいう形になるんじゃないかと思います」

——選手は悔しがっていた。

「(チームの統計は)ワールドカップを含めても一番、悪い数字だった。食らいついてはいたが、勝つというところまではいっていない。基本的に、選手には善戦満足という頭は最初からない」

——合宿では試合形式練習はできたのか。

「無理矢理、ヤマハさん(静岡ブルーレヴズ)に来ていただいて、ゲーム形式でやれた。それは大きかった。40分×2です」

 2019年のワールドカップ日本大会で初の8強入りを果たしたチームは、体制を変えずに2023年の同フランス大会を見据える。約1年8か月ぶりの活動再開ができた今春のツアーでは、ブリティッシュ&アイリッシュライオンズとアイルランド代表に2連敗を喫した。

 今後の対戦日程は以下の通り。

11月6日(土)対アイルランド代表(ダブリン)

11月13日(土)対ポルトガル代表(コインブラ)

11月20日(土)対スコットランド代表(エディンバラ)

 これからのツアーでは、敵地での勝利が期待される。

 前回のツアーでは、ブリティッシュ&アイリッシュライオンズ戦前の練習場にゴールポストがなかったり、当日に「サインがばれていた」(藤井NTD)という事態が発生したりと、グラウンド外で洗礼を浴びた。

 練習場の芝と試合会場のそれが同じではないこともあり、敵地で勝つには本質的な一体感が求められそうだ。

——問題のない練習場の確保へ向けて。

「『ここで練習したい』とリクエストを(先方へ)出している(特定の場所を指定する)。問題ないと思います」

——以前あった「サインがばれていた」という問題へは。

「それには限界がある。いろんなところに窓があるので、そこから誰かが覗いていないかを見るしかない。あとは、向こうへ行ってからです」

——現地入り後の行動制限、松島選手の合流後の措置は。

「基本的に向こうは(規制が)ない状態で、松島も来れば合流できると聞いています。(プライベートの行動範囲は)ルール(に沿っておこなう)というよりは、自分たちでコントロールしないと。感染の可能性もある国へ行くので、そこは選手が(自主的に規律を)守っていくのが大事。それ(感染対策)を最優先にして行動したい」

——勝ち切るには。

「こういう試合を続けていけば、どこかで必ずこっちに(白星が)転んでくる。相手はティア1なのでそう簡単には勝てない。何が足らないから、というよりは、これを続けていれば、きっと勝つ時は来る。

(オーストラリア代表戦での)ボール・イン・プレー(試合が動く時間)はまったく目標には届いていない。向こうがかなり(接点での球出しを)スローダウンさせてきた。セットプレーも多かった。それでもかなり相手は疲労していたと思いますが。どうボール・イン・プレーを上げるかが今後の課題だと思います」

——それを受けて。

「基本的に欧州のチームはシンプルです。アイランダー系の強いボールキャリーがいるわけではないので、その意味では戦いやすい。特に日本代表のスクラムでは足場が重要で、芝がハイブリッド(天然芝と人工芝のミックス)の場合とそうでない場合とで状況が変わってくる。その意味では、今度のグラウンドはハイブリッド芝になるので心配はない。モールも、体重差が出ないように組めれば、相手の脅威は下がるんじゃないかと思っています」

——ツアーでの目標は。

「もちろん3戦全勝です」

——帰国後の隔離は。

「ワクチン2回目の接種が完了した選手は自宅隔離10日。2回接種していない選手に関しては、3日間の強制隔離と1週間の自宅隔離があります」

——選手のワクチンについて。

「促してはいたんですが、そこは自己判断で。向こうでワクチンパスポート持っていたら、3日に1回のPCR検査はない。(打っていない人は)受けないといけないです」

 遠征メンバーは、オーストラリア代表戦までのそれから多少、入れ替わった。発表後も練習していたとあり、日本を離れる直前まで追加招集と途中離脱の報せが舞い込んでいた。顔ぶれは以下の通り。

<<以下、太字の選手がツアー参加>>

<左プロップ>

稲垣啓太(埼玉パナソニックワイルドナイツ)…186・116・1990/06/02・37 ◎☆■

中島イシレリ(コベルコ神戸)…186・125・1989/07/09・8 ◎

クレイグ・ミラー(埼玉パナソニック)…186・116・1990/10/29・3 ☆■

<右プロップ>

ヴァル アサエリ愛(埼玉パナソニック)…187・115・1989/5/7・17 ◎☆■

垣永真之介(東京サントリー)…180・115・1991/12/19・9 ○☆

具智元(コベルコ神戸)…183・118・1994/7/20・16 ◎☆■

淺岡俊亮(トヨタ)…186・121・1996/6/24・— ※1

<フッカー>

坂手淳史(埼玉パナソニック)…180・104・1993/6/21・24 ◎☆■

庭井祐輔(横浜キヤノン)…174・95・1991/10/22・9 ○☆■

堀越康介(東京サントリー)…175・100・1995/6/2・3 ○☆

<ロック>

秋山大地(トヨタ)…192・117・1996/11/14・- ※1 ※3

大戸裕矢(静岡)…187・104・1990/03/09・4 ○ ※2 ※4

ジェームス・ムーア(NTTコム東京ベイ浦安)…195・110・1993/6/11・11 ◎☆■

ワーナー・ディアンズ(東芝東京)…202・122・2002/4/11 ※1 ※5

<フランカー>

小澤直輝(東京サントリー)…182・102・1988/10/8・4 ○☆ ※6

ベン・ガンター(埼玉パナソニック)…195・120・1997/10/24・1 ○☆■

ジャック・コーネルセン(埼玉パナソニック)…195・110・1994/10/13・3 ☆■

德永祥尭(東芝東京)…185・100・1992/4/10・13 ◎■

ピーター・ラブスカフニ(クボタ船橋・東京ベイ)…189・106・1989/1/11・11 ◎☆■

リーチ マイケル(東芝東京)…189・113・1988/10/7・70 ◎☆■

<ナンバーエイト>

テビタ・タタフ(東京サントリー)…183・124・1996/1/2・6 ☆■

姫野和樹(トヨタ)…187・112・1994/7/27・19 ◎☆■

ファウルア・マキシ(クボタ船橋・東京ベイ)…187・111・1997/1/20・2 ○ ※7

福井翔大(埼玉パナソニック)…186・101・1999/9/28・– ※1

<スクラムハーフ>

齋藤直人(東京サントリー)…165・73・1997/8/26・3 ★☆■

茂野海人(トヨタ)…170・75・1990/11/21・12 ◎☆

流大(東京サントリー)…166・75・1992/9/4・25 ◎■

<スタンドオフ>

田村優(横浜キヤノン)…181・92・1989/1/9・66 ◎☆■

松田力也(埼玉パナソニック)…181・92・1994/5/3・26 ◎☆■

<ウイング>

髙橋汰地(トヨタ)…180・91・1996/6/24・- ☆

ジョネ・ナイカブラ(東芝東京)…177・95・1994/4/12・– 

中野将伍(東京サントリー)…186・100・1997/6/11・– ★※1

シオサイア・フィフィタ(花園近鉄)…187・105・1998/12/20・3 ★☆■

レメキ ロマノ ラヴァ(NEC東葛)…177・94・1989/1/20・16 ◎☆■

<ウイング/フルバック>

松島幸太朗(クレルモン)…178・88・1993/2/26・41 ◎☆ ※8

<センター>

中村亮土(東京サントリー)…181・92・1991/6/3・27 ◎☆■

ラファエレ ティモシー(コベルコ神戸)…186・100・1991/8/19・26 ◎☆■

ディラン・ライリー(埼玉パナソニック)…187・102・1997/5/2・1 ■

<フルバック>

野口竜司(埼玉パナソニック)…177・83・1995/7/15・13 ○

山中亮平(コベルコ神戸)…188・100・1988/6/22・19 ◎☆

◎=2019年ワールドカップ日本大会出場選手(下記○の該当者含む)

○=2019年までのジェイミー・ジョセフ体制下の代表関連活動、および2017~19年のサンウルブズ(国際リーグのスーパーラグビーに日本から参戦。ちなみに2016年は現体制発足前)に参加経験(練習生を含む)がある選手。

★=2020年のサンウルブズ(同上)に参加した選手

☆=2021年春の代表ツアーに参加した選手

■=10月23日のオーストラリア代表戦登録選手(故障による交替、繰り上げも含む)

※1=ナショナル・デベロップメントスコッド(NDS=9月下旬からの候補合宿で設けられた別枠扱いのグループ)からの招集

※2=トレーニングスコッド(上記とは別な候補群と見られる)からの招集

※3=10月29日に怪我のため途中離脱

※4=10月28日に怪我のため途中離脱

※5=10月27日に合流

※6=10月28日に日本代表チーム事情のため途中離脱

※7=10月24日に合流

※8=海外現地にて合流予定

 藤井NTDの会見は、ディアンズの招集や小澤らの離脱がリリースされるよりも前に実施されていた。当時から、フォワード第3列の入れ替えの可能性について言及があった。

——メンバー編成について。

「いま、フランカーに怪我人が多くて(リーチはオーストラリア代表戦を怪我で欠場。フル出場したラブスカフニも10月中旬は一時別メニュー調整だった)。もともとキャプテン(ラブスカフニ)と福井の両方が怪我をして小澤を招集。そして、リーチも怪我していて。それらの怪我の治り具合で最終的に木曜日にもう1人、外れるか、連れて行くかが決まると思います」

――では、25日に発表されたメンバーから離脱者が出る可能性はあると。

「フランカーに関しては、いると思います」

——オーストラリア代表戦まで帯同していて今回、外れた選手について(25日現在)。

「(オーストラリア代表戦まで帯同していて)ここ(今回のリスト)に入っていない選手は怪我です(ロックのリアキ・モリ、長谷川崚太、ウイング/フルバックのセミシ・マシレワ)」

——マキシ選手の招集について。

「いま、リーチも怪我をしている。6、7番(それぞれブラインドサイド、オープンサイド)が手薄な状態なので、1人、6番を入れたかった。実際、エリジビリティ(代表資格)などの問題を踏まえて、連れて行けるのは彼しかいなかった。

 キャップも持っているのですぐ合流できる。サンウルブズでも呼んでいて、ジェイミーがわかっている選手だったので、その辺でどうかということで、呼んでみた感じです」

——長谷川選手について。

「呼んだのは呼んだのですが、怪我の回復具合で合流していないです。多分、回復しないということだったので。何度かチャレンジはしてみたんですが、厳しいかなぁ…ということで」

——今後は。

「今日、明日、木曜(28日)も練習する。これからの怪我がゼロということはないですが、基本的にはこれ(発表されたメンバー)で行きたい。ツアー中に呼ぶのは(追加招集選手を)難しいと思うので」

 以前までの取材を総合すると、日本大会でも戦ったアイルランド代表、スコットランド代表とのゲームではその時のベストメンバーが挑みそう。指揮官が日本大会時より信頼するメンバーを軸としながら、今年ブレイクしたフィフィタやガンターのメンバー入りが大きく期待される。

 かたや世界ランクで下回るポルトガル代表とのゲームでは、これまで出場機会のなかった若手もチャンスを得そう。NDSからオーストラリア代表戦への帯同が叶った福井翔太、国内トップリーグでの出場経験もないワーナー・ディアンズらの出番はあるか。

 フランス大会開幕を約2年後に控えるいま、成功体験を得て次のステージへ進みたい。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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