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全勝は北勝富士ただ一人 横綱・大関が総崩れ、平幕力士が牽引する秋場所 賜杯は誰の手に?

飯塚さきスポーツライター/相撲ライター
全勝で幕内単独トップを走る平幕の北勝富士(写真:日刊スポーツ/アフロ)

10日目を迎えた大相撲秋場所。今場所は初日から特に見応えのある取組が多い印象だが、9日目は波乱が波乱を呼び、横綱・大関が総崩れ。現時点での幕内トップは平幕の北勝富士で、一人全勝街道をひた走っている。そこで今回は、平幕で場所を牽引する力士たちに注目してみよう。

気迫で快勝の北勝富士が躍進

西前頭8枚目の北勝富士は、初日から8連勝で勝ち越し第一号と絶好調。9日目は、2敗で食らいつく若元春と対戦。過去の成績は1勝1敗、好調同士の取組とあって、どちらが勝ってもおかしくないと思われたが、北勝富士の勢いは止まらなかった。

立ち合いから激しくぶつかる北勝富士。若元春も応戦するが、終始低い体勢を崩さない北勝富士が、右をおっつけながら前に出続け、最後は土俵際で激しく押し倒した。力のある相手に対して見せた気迫の相撲に、会場は大いに沸いた。

場所前は複数の部屋に積極的に出稽古に行っていた北勝富士。若元春が所属する荒汐部屋にも足を運んだ。新型コロナウイルス感染拡大防止のためにしばらく禁止されていた出稽古が、ここのところようやく解禁になったことで、多くの力士に好影響が出ていると思われるが、彼もまたその一人のようだ。

「自分は思考がガチガチになるタイプで、これを食べて勝てたから、次もこれを食べれば勝てるかなとか、いらないことを考えてしまいます」と、かつては自身のメンタル面に課題を抱えていた北勝富士。しかし、2年ほど前からメンタルトレーニングを取り入れたことが功を奏し、今場所は落ち着いて取っているように見受けられる。単独トップを走るいま、なるべく優勝の二文字を意識することなく、このまま淡々と星を伸ばせるか。

横綱撃破の高安が初優勝を狙う

その北勝富士に、10日目の今日挑むのが2敗の高安だ。9日目は横綱・照ノ富士と対戦。今場所は特に膝の調子が思わしくないと言わざるを得ない横綱に対し、必死の戦いを繰り広げた。

立ち合いで右に動いた高安。横綱にまわしを取らせない。途中引いてしまったが、回り込む高安に横綱がついていけない。ピンチをしのいだ高安に、今度は横綱が引きを見せる。一度両者の動きが止まったときに、勝負が動いた。横綱が蹴返しを繰り出したのだ。高安がそこをすかさず攻めて押し出し。横綱は力なく土俵を割った。

照ノ富士は万全ではなかった。とはいえ、懸命の相撲で横綱を下した高安。2敗を守り、今場所の「初優勝」に望みをつないだ。北勝富士と同様、場所前は出稽古にも精力的に参加。北勝富士と高安、今場所を牽引する両者の取組は、10日目の最注目と言っても過言ではない。

外角から場所を盛り上げる力士たちは?

ほかにも注目力士は多数。37歳の“鉄人”玉鷲は、昨日9日目に明生を下して勝ち越しを決め、1敗をキープし単独トップの北勝富士にぴったりとついている。連日激しい立ち合いを見せ、電車道で勝負を決めることも多い。すでに横綱と2大関を撃破し、今日3人目の大関・御嶽海に挑む。

また、地力をつけてきた若元春・中盤から追い上げてきた若隆景の兄弟も、3敗で星を伸ばしている。9日目に大関・貴景勝に会心の相撲で勝った霧馬山にも期待したい。トリッキーな動きで相手を翻弄する翔猿は、今場所をかき回してくれそうだ。はたしてここからの秋場所終盤戦はどんな展開を見せるのか。さまざまな力士に注目しながら見守ることとしよう。

スポーツライター/相撲ライター

1989(平成元)年生まれ、さいたま市出身。早稲田大学国際教養学部卒業。ベースボール・マガジン社に勤務後、2018年に独立。フリーのスポーツライター・相撲ライターとして『相撲』(同社)、『Number Web』(文藝春秋)などで執筆中。2019年ラグビーワールドカップでは、アメリカ代表チーム通訳として1カ月間帯同した。著書に『日本で力士になるということ 外国出身力士の魂』、構成・インタビューを担当した横綱・照ノ富士の著書『奈落の底から見上げた明日』。

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