開幕戦に完敗した中日ドラゴンズが上昇するカギを握るのは背番号ひとケタの4人だ
プロ野球ペナントレースが開幕した。今季のセ・リーグは、優勝を争うであろう広島と巨人、その輪に加わる可能性があるもののBクラスも考えられる東京ヤクルトと横浜DeNA、恐らくBクラスと予想される阪神と中日の3つのグループに分かれていると、評論家諸氏の見方も参考にしながら考えている。
それでも、阪神は矢野燿大、中日は与田 剛と新監督の就任でチームの戦略が変わっており、春季キャンプやオープン戦での采配や選手起用を見れば大逆襲もありそうだ。オープン戦で12球団最多の19試合をこなした中日は、先発ローテーションをはじめとする投手力の安定が大きなポイントになるが、それは打線がどこまで効果的に援護できるかと密接に関連していると思う。そこで注目しているのが、背番号ひとケタの4選手。春季キャンプ初日、内外野でノックを受ける際に同組だった高橋周平、石川 駿、阿部寿樹、京田陽太である。
将来の主軸候補と大きな期待を寄せられ、2012年にドラフト1位で入団した高橋は、1年目からサードで出場機会を与えられる。いわゆる「実戦経験を積みながら」という育成法だったが、守備力の不安を払拭することができず、持ち味の打撃でも伸び悩む。一昨年のフェニックス・リーグで本格的にセカンドに取り組み、昨季は7年目でようやく規定打席に到達した。ただ、他の内野手の成長を犠牲にしてでも高橋を一軍で使い切る方針によって達成されたものであり、その経験を生かしてどこまで飛躍できるか、今年は真価を問われるシーズンになる。高橋にも、その自覚や危機感は十分にあるのだろう。キャプテンにも任命されると、オープン戦では打率.278、3本塁打15打点とチーム三冠王に。横浜DeNAとの開幕戦では、二塁打でチャンスメイクし、守りでも軽快さをアピールした。
打線の粘り強さが投手力の安定にもつながる
京田は周知の通り2017年の新人王であり、攻守にわたって着実に力をつけている。51から1への背番号の変更にも、チームの顔になってほしいという期待が込められている。ただ、京田のポテンシャルを考えれば、もっと高い数字を残せるはずだという声もある。与田監督はそんな京田に逞しさを求め、堂上直倫らとの競争を課し、少しでもスキを見せれば遠慮なく指摘。開幕戦でも堂上をスタメン起用し、プロ入りから順調だった京田の尻に火を点ける。身体の内から沸き上がってくる悔しさや負けん気が、3年目の成長にどうつながるか楽しみだ。
明治大でもともにプレーした阿部と石川は、社会人出身だけに即戦力、またゼネラル・マネージャーだった落合博満が見込んだ打力、という2つのイメージが強く、「落合の見込み違いではないか」という厳しい視線に晒されてきた。だが、揃って成長するスピードは速くないが、一度、身につけた技術は忘れないという特長があり、落合も「出てくるのは3~4年目。ちょうど荒木(雅博=現・中日コーチ)らがユニフォームを脱ぐ頃だろう」と見ていた。やはり、これからの野球人生を左右すると言っていい今シーズン、阿部は堅実な守備力とパンチ力を備えた打撃で開幕戦に七番セカンドでスタメン出場。第1打席で左前安打と、まずまずのスタートを切った。
唯一、開幕一軍入りを逃したのが石川だが、ウエスタン・リーグでは3月15日の広島との開幕戦に3安打すると、8試合で32打数18安打の打率.563をマークし、26日の広島戦では1号3ラン本塁打も放っている。ポジションの関係で、すぐに一軍昇格というわけにはいかないだろうが、「自分本来のバッティングができるようになってきた」という言葉は心強い。右の代打要員からチャンスをつかむか。
首位打者のダヤン・ビシエドを筆頭に、昨季の打率上位に名を連ねた平田良介、ソイロ・アルモンテ、さらに、大島洋平が中心となる打線で、どこまで二次攻撃を仕掛けられるか。横浜DeNAとの開幕戦も、又吉克樹と田島慎二がつかまり、結果は1-8の完敗。もう何度も見せられた負け方だ。ただ、スコアレスで粘った6回までに、先制できるチャンスがなかったわけではない。そこで1点を先に奪えるかどうかが、投手陣の投球内容を変えていくことを忘れてはならない。そういう意味で、背番号ひとケタ4人衆の数字は、今季の中日の成績をも左右すると見ている。