なぜハーランドの“争奪戦”は終わらないのか?シティ、レアル、バルサ...需要が高まる「決定力」
フットボールの世界で、未来を予測するのは難しい。
現在、ビッグクラブが注視しているのがアーリング・ハーランドの動向だろう。ハーランドとドルトムントの契約は2024年夏まで。だが近年の彼のパフォーマンスが、複数クラブの関心を引き付けており、この夏の移籍の可能性が取り沙汰されている。
「ポジティブな点もネガティブな点もチームには伝染するものだ。なので、ハーランドはドルトムントでプレーしなくなるだろう。次のステップを踏む。私はそう考えている」
「ハーランドがブンデスリーガでプレーしているのを、我々は誇るべきだ。ドルトムントはハーランドを獲得できたことを喜ばなければいけない。非常にエモーショナルなクラブで、適応するのは難しい。20歳にして、彼はマシーンのようだ。ゴールだけではなく、チームにプラスのパワーを与えている。代替不可能な選手だ」
これはローター・マテウスの言葉である。バイエルン・ミュンへンやインテルといったビッグクラブで活躍した名プレーヤーが、ハーランドを手放しで称賛している。
■ハーランドの特徴
ハーランドのストロングポイントは、その決定力だ。
ハーランドは今季、21試合に出場して23得点6アシストを記録している。ゴールパターンも多彩で、ミドルシュート、ヘディング、ボレー、右足、左足、いろいろな角度からネットを揺らすことができる。
「ゴールとは生まれつき持っているもの」だと、スペインではよく言われる。その点、ハーランドはゴールを「持っている」選手だろう。ただ、ハーランドの特徴はそれだけではない。フリーランニングが上手く、スペースを突くのが巧みだ。ポストワークをこなして、味方を生かせる。いわゆる万能型のストライカーなのだ。
そのハーランドを、欧州の複数クラブが狙っている。マンチェスター ・シティ、レアル・マドリー、バルセロナ、バイエルン・ミュンヘン…。そういったクラブが、虎視淡々とチャンスをうかがっている。
ポールポジションに立っているとされるのはシティだ。第一に、シティは資金力のあるクラブである。この夏には、移籍金1億1750万ユーロ(約152億円)でジャック・グリーリッシュを獲得。加えて、トッテナムのハリー・ケインを確保しようとしていた。
また、ペップ・グアルディオラ監督がハーランドを高く評価している。基本的には中盤を重視して、チームビルディングを行うのがグアルディオラ監督の考え方だ。昨季の終盤から今季にかけては、頻繁にゼロトップを採用している。一方で、ケインに触手を伸ばしていた通り、グアルディオラがCFを求めているのも確かだろう。もうひとつ、挙げるとすれば、ハーランドの父親であるアルフ・インゲ・ハーランドはシティでプレーした過去があり、それがプラスに働くかもしれない。
ハーランドには、スペインからも熱視線が注がれている。レアル・マドリーが、ハーランドを欲している。フロレンティーノ・ペレス会長のトップターゲットは、キリアン・エムバペである。今季終了時にパリ・サンジェルマンとの契約が満了するエムバペについては、移籍金ゼロで獲得が可能だ。そういった状況を踏まえ、ペレス会長はエムバペとハーランドの“両獲り”を考えているようだ。
マドリーはドルトムントと良好な関係を築いている。近年、ヌリ・シャヒン、アクラフ・ハキミ、ヘイニエル・ジェズスといった選手が2クラブ間での移籍を果たしてきた。他方で、カリム・ベンゼマ、ヴィニシウス・ジュニオールと今季のマドリーのアタッカー陣は好調を維持している。ここにエムバペ、ハーランドが加われば、前線でオーバーブッキングが起こる可能性がある。
マドリーと同様に、ハーランドを追跡しているのがバルセロナだ。ジョアン・ラポルタ会長が、稀代のストライカーを引き入れよう野心を抱いている。
バルセロナは新型コロナウィルスの影響で財政に大きなダメージを受けた。だが、現在、この夏に拒否したCVCファンドとの契約を受け入れるかどうかを再検討しており、またバルサ・スタディオの一部売却を考慮している。『Sportify』とのスポンサー契約も決定的で、クラブ側が資金のやり繰りをできれば、ハーランドにとって魅力的なオプションになるだろう。
そして、バイエルンがハーランドに食指を動かすかもしれない。バイエルンは、以前、ハーランド獲得の可能性を否定していた。しかしながら、ロベルト・レヴァンドフスキに移籍の可能性があり、その場合、ハーランドを代役に据えるプランを持っている。
無論、ハーランドがドルトムントに残留する可能性もゼロではない。7500万ユーロ(約97億円)の契約解除金を、本当に支払うクラブがあるかは分からない。ただ、ドルトムントとしては、これだけハーランドを欲するクラブがあるのなら、その契約解除金以上の移籍金を積むクラブに売却しようと考えるはずだ。
ハーランドの去就に、注目が集まっている。しかし、一方で、移籍というのは簡単ではない。そして、移籍先での活躍は保証されていない。ハーランド級の選手でさえ、どうなるか分からないというのは留意しておくべきだ。