「場」と「知人」の共有が人脈作りの大前提
●今朝の100円ニュース:「日中関係 若者に託したい」中国5大学に学生寮計画(朝日新聞)
見知らぬ人に親近感を覚えて、気を許してしまう瞬間がある。「場」と「知人」を共有していることがわかったときだ。
「場」と言っても「私も同じ(東京都)杉並区民です」ぐらいでは広すぎる。54万人もいる場所で共感は育ちにくいのだ。僕が杉並区の西荻(JR西荻窪駅を中心とする小さな町)に住んでいた頃は、杉並ではなく西荻に強い地元意識を持っていた。
だから、出会った人が西荻に住んでいた経験があったりすると、警戒心が急速に低下する。吉祥寺と荻窪という便利なターミナル駅に挟まれ、土日は快速電車が止まらない駅の町にわざわざ住んでいる人なのだ。よほどマニアックな趣味の持ち主か、お金があまりない人なのだろう。ちなみに、吉祥寺で家探しをしていた僕が西荻に住み始めた理由は後者だった。住んでみると非常に心地良くて通算8年間を過ごした。今でも東京で一番好きな街である。
場の共有をクリアすると、今度は「知人」という共通点を探す。好きな店でも良い。店は結局のところ経営者に行き着くのだから。さきほどの西荻の例では、「ぷあん」(アジア料理店)、「イトキチ」(スペインバル)、「三人灯」(ダイニングバー)、「ベコカフェ」、「それいゆ」(喫茶店)、「CHAエンデ」(喫茶店)、「西荻案内所」、「アテスウェイ」(洋菓子店)、「こけし屋」(洋菓子店)、「浜商不動産」、「信愛書店」、「音羽館」(古書店)などが僕の好みだ。初対面の相手からいずれかの店名が出たりすると、店主や商品の話で盛り上がり、すっかり打ち解けた気持ちになる。それだけで友人とは言えないが、「見知らぬ人」から「知人」へと自分の中で変化する。信頼してもいいかな、という気持ちになるのだ。
朝日新聞の記事によると、日本留学の経験のある香港の実業家が私財を投じ、中国人学生と日本人留学生が共同で暮らす学生寮を中国の主要5大学でつくっている。昨年9月に開所した北京大学の寮では、日中双方から学生20人ずつが入り、今年は30人の枠が用意されているという。来年夏には清華、上海交通、浙江の3大学でも開所する。
これらの学生寮に入った学生たちは、名門大学の卒業・留学という肩書以上の宝物を手にすることができると感じた。強い信頼関係で結ばれ、利害を離れて気軽に連絡し合える人脈という一生の宝だ。
日本でも中国でも多くの大学は1学年に何千人もの学生がいるので、単に「〇〇大学卒」というだけでは「場」を共有しにくい。「あなたも北京大? ああ、そうですか」ぐらいの会話しか成り立たないだろう。「あなたも杉並区?」と同じだ。
一方で、数十人程度で生活を共にする学生寮は強力な場である。友人より家族に近い関係になるだろう。当然、学年を超えた「知人」もたくさんできる。寮が存続する限り、人間関係がますます広がっていく。日中の友好と互恵のためにこれほど価値のある試みを僕は聞いたことがない。
いつかこの学生寮の出身者と出会うことがあったら、「場」と「知人」を総動員して、何としてでもお近づきになりたい。