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「技術は日本のほうが上」韓国選手らの“衝撃発言”から見るカタールW杯の日本を認めざるを得ない理由

金明昱スポーツライター
韓国サッカーの課題について語ったファン・インボム(左)とキム・ミンジェ(中央)(写真:ロイター/アフロ)

 なにやら韓国サッカー界が騒がしい。

 カタール・ワールドカップ(W杯)で韓国は初戦でウルグアイに0-0、2戦目のガーナに2-3で敗れて崖っぷちに立たされたが、ポルトガルに2-1で勝利して、グループリーグを突破。決勝トーナメント1回戦でブラジルに1-4で完敗したが、2010年南アフリカ大会以来のベスト16入り。エースFWのソン・フンミンを筆頭に、選手たちの奮闘ぶりは韓国内でも感動を呼んだ。結果だけ見れば、アジアの日本と並んでベスト16は大健闘といったところだろう。

 ただ、冷静に日本と韓国の結果を見るとどうなのか。日本はドイツ、スペインを撃破してグループリーグを突破し、決勝トーナメント1回戦でクロアチアを相手にPK戦で敗れたものの、世界に強烈なインパクトを与えた。

 さらに国際サッカー連盟(FIFA)が発表した出場32カ国の最終順位では日本は9位で、韓国は16位。また、大会総括後に日本を含む4カ国(アルゼンチン、クロアチア、モロッコ)を「傑出したチーム」と紹介している。

 結果的には日本が韓国を上回ったわけだが、「これを今回だけの話にしてはならない」と、韓国内では大きな議論になりつつある。一部の選手や関係者がメディアを通して、「手放しでは喜んではいけない」と釘を刺しているのだが、それはすべて韓国サッカー界への“警鐘”とも受け取れるものだった。

「日本同様の環境が整っているとは思わない」

 すでに韓国内や日本でも報じられているが、引き金を引いたのが韓国代表MFのファン・インボム(オリンピアコス)だった。

 韓国メディアの「news1」は「ファン・インボムがカタールW杯を終え、韓国のサッカー環境に対して苦言を呈した」と伝え、ブラジル戦後の会見内容を詳しく報じている。

「日本と同じ成績を残したからといって、日本同様の環境が整っているとは思わない。様々な部分で足りないところがあるのは事実。日本の選手たちは現在、本当にいい環境の中で(サッカーを)していると聞いた。欧州のどのリーグに行っても(日本の選手が)たくさん存在する。韓国では選手たちに『なぜ欧州に進出しないのか?』『夢がないのか、』『お金だけ見ている』などの声が昔からある。しかし、これは選手たちだけの問題ではないと思う。私がここでこのような話をしたところで、変わる部分ではないが、これから韓国サッカーが努力してベスト16入りが“奇跡”ではなく、日本や他国のように常にいいプレーをW杯で見せるためには、多くのことが変わらなければならない」

欧州クラブに日本人は多いが韓国人が少ない理由

 この話はこれで終わらない。DFキム・ミンジェ(ナポリ)がカタールから韓国に帰国し、仁川空港で多くの韓国メディアに囲まれて会見を実施。そこで「日本がうらやましい」という発言がクローズアップされた。

「実際に韓国から欧州進出は難しい。クラブが解決すべきことが多い。移籍金も高い。今回、Kリーグでプレーする選手たちもW杯で活躍した。クラブの立場ではないので、声を大にしては言えないが、あえて一言付け加えるなら、欧州クラブからオファーがあれば、気持ちよく送ってあげてほしい。そういう意味では日本がうらやましい。日本は欧州でプレーする選手が多く、競争力がある。実際、比較にならない。」

 ファン・インボムと同じく、欧州でプレーする韓国の選手たちが少ない理由に様々な弊害があることに苦言を呈したが、カタールW杯で日本の躍進を目の当たりにし、「このタイミングで言わずにはいられなかった」というのが正直な気持ちなのかもしれない。

「日本の実力を認めなければ」

 今月12日に「東亜日報」に掲載された元韓国代表監督のホ・ジョンム氏(現・大田ハナシチズン理事長)のインタビューもかなり衝撃的だった。

 現役時代はW杯にも出場し、2010年南アフリカ大会では韓国代表監督を務めてチームをベスト16に導いた人物。カタールW杯での日本代表の結果を受け、こんな話をしている。

「正確な数字はわからないが、日本の高校サッカー部は数千もある。我々と比較にならない。中高年代で“韓日戦”はすでに数十年前からほとんど負けている。日本はサッカーを発展させるために長期的な計画を立てて実行している。有望株の育成はもちろん、欧州に常設キャンプ場まで作ろうとしている。合宿はもちろん、欧州でプレーする選手も利用でき、日本の選手たちの欧州進出のために活用する計画がある。我々にそれがない」

 さらにホ氏は日本の技術レベルの高さについても正直に認めていた。

「基本的な技術は今、日本が我々よりも上をいっている。根性もある。ドイツとスペイン戦に後半に逆転したのを見ればそれがよく分かる。競り合いや球際でも負けてはいなかった」

 そのうえで、取材記者が「つまり日本サッカーが韓国よりも上にあることを認めないのは、我々(韓国)だけということですが、合っていますか?」と聞くと、ホ氏は次のように答えている。

「そのような面はある。日本の実力を認めなければならない。感情的になってはいけない。そして、我々も対策を立てなければならない。私も日本に負けるのは嫌です。しかしこれから負けたくなければ、認めるところは認め、勝つための長期的な計画を立てて努力しなければならない」

日本の結果にようやく目が覚めた?

 韓国が日本をライバル視するのは今に始まったことではないが、カタールW杯の日本の快進撃にようやく“目が覚めた”というべきだろうか。決して韓国が弱いというわけではない。ただ、指をくわえて日本の成長を眺めているだけでは、実力の差はどんどん開くばかりだ。

「“アジアの虎”が日本の前では“おとなしい猫”」――今年7月のE-1選手権で日本に0-3の惨敗を喫し、韓国メディアにそう書かれていたが、こうした屈辱を何度も味わうわけにもいかないだろう。

 選手や関係者たちのこうした発言は偶然ではなく、今すぐにでも取り掛からなければならない課題。韓国サッカー界は“変革”できるのかに期待したいところだが、その答えは4年後のW杯で明らかになるのかもしれない。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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