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魔裟斗vsKID戦を前にふり返っておきたいこと

藤村幸代フリーライター

カリスマ2人の再戦が今夜ついに実現

TBSの大晦日特番『史上最大の限界バトル KYOKUGEN2015』で、魔裟斗と山本“KID”徳郁が再び拳を交える。

初遭遇は2004年大晦日の『K-1 Dynamite!!』。格闘技界のカリスマ2人が、まさに人気絶頂のただなかで迎えた一戦だけに戦前から話題沸騰、K-1ルールに長けた魔裟斗からKIDが先制のダウンを奪うなど、スリリングこのうえない試合展開も相まって、同局の番組瞬間最高視聴率はNHK紅白歌合戦を上回る31.6%まで跳ね上がった。

今回使用されるグローブは14オンスと大きく、また両者の体重差も気になるところ。「真剣勝負として成立するのか?」という声もある。それでも、純粋にどちらが勝つのか勝負のゆくえを楽しみにしている人から、「どのくらい動けるのか、動けなくなっているのか」を確認したい人まで、おそらく予想以上に多くの目がテレビを通してリングにそそがれるに違いない。

さて、2人の対戦は実に11年ぶりだ。11年。この数字を聞いたとき、私は「長いなぁ」と思った。「そんなに経ったのかぁ」と思った。思ったのだが、実際のところリアルにその長さを実感できない自分がいた。

世紀の再戦とも奇跡の再戦とも言われる魔裟斗vsKID戦を堪能するなら、この年月の重さをズシリと感じ取っておくべきではないか――。ふと、そんなことを思い、「2004年」の出来事を振り返ってみることにした。

ヨン様、セカチュー、気合いだー!の2004年

10月23日に発生したM6.8の新潟県中越地震や、度重なる台風の上陸などもあり、2004年の「今年の漢字」は「災」だった。2位に選出されたのは「韓流」の「韓」だ。そう、世の女性、特におばさまたちは“冬ソナ”や“ヨン様”にメロメロの1年を過ごしていたのだ。

テレビでは韓国の恋愛ドラマが人気を博し、小説では『世界の中心で、愛をさけぶ』『いま、会いにゆきます』がベストセラーとなり、平井堅の『瞳を閉じて』が最大のヒット曲となった。2004年をふり返る上で、「純愛」のキーワードは欠かせない。

シアトル・マリナーズのイチローが年間最多安打記録を更新するなど、スポーツ界もさまざまに沸いたが、2004年のスポーツといえばなんと言ってもアテネ五輪だろう。

日本勢は金16を含む過去最多37個のメダルを獲得。この年の流行語大賞で一次審査を通過した60語には、「栄光への架け橋」「気合いだー!」「さぁー!」「田村亮子でも金 谷亮子でも金」「中年の星」と五輪関連が並び、大賞を受賞したのも水泳・北島康介の「チョー気持ちいい」だった。

あなたは「11年」をどう生きたか

あの頃はもちろん、史上稀にみる「災」が東北や関東各地を襲うことになるなど、誰も知らなかった。韓流ブームがいきなり去っていくことも知らなかった。

あの頃輝いていたアスリートの中には、今もなお輝き続ける者がいる。その一方で、現役生活に自ら幕を引いた者や、自身を厳しく律しながら、心と体の限界に挑み続ける者がいる。後者のほうが、多数かもしれない。

2004年の格闘技界はK-1とPRIDEが覇を競い、まさに爛熟期の様相を呈していた。その2つが凍結期に入り、格闘技ブームが去ることを、あの頃誰が予見できただろうか。

こうした時代のうねりに飲み込まれ、あらがいながら、25歳の“反逆のカリスマ”は36歳になった。27歳の“神の子”は38歳になった。彼らだけではない。私も11年歳を取り、日本も11年歳を取った。

二度目の、おそらくは最後の闘いを通して、彼らはたどってきた11年分の人生を見せてくれるはずだ。その闘いを見ながら「では、自分は同じ年月をどう生きてきたか」、11年分の総括をしてみるのもいいかもしれない。そのふり返りにこそ、この一戦の意味があるような気がするのだ。

フリーライター

神奈川ニュース映画協会、サムライTV、映像制作会社でディレクターを務め、2002年よりフリーライターに。格闘技、スポーツ、フィットネス、生き方などを取材・執筆。【著書】『ママダス!闘う娘と語る母』(情報センター出版局)、【構成】『私は居場所を見つけたい~ファイティングウーマン ライカの挑戦~』(新潮社)『負けないで!』(創出版)『走れ!助産師ボクサー』(NTT出版)『Smile!田中理恵自伝』『光と影 誰も知らない本当の武尊』『下剋上トレーナー』(以上、ベースボール・マガジン社)『へやトレ』(主婦の友社)他。横須賀市出身、三浦市在住。

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