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創部100周年早稲田大学・佐藤真吾キャプテンが明かす、前監督からの電話。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
地面の上で働く。(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

 早稲田大学ラグビー部は創部100周年を迎えた今季、新体制のもと歴代最多記録を更新する16回目の大学選手権優勝を狙う。

 記念すべきタイミングでキャプテンとなった佐藤真吾が4月22日、東京・早大上井草グラウンドで取材に応じた。山下大悟前監督への思い、相良南海夫新監督のもとでの決意を語る。

 この日は関東大学春季大会Bグループの初戦で日本体育大学に22―32で敗戦。出場のなかった佐藤は唇をかんだ。

 以下、単独取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

――まず、試合を振り返ってください。

「本当に、ふがいないです。立ち上がりから、4年生の(いた)ところが抜かれてトライを取られた。その後、流れを変えらえる選手がいなかった。普段の練習や昨日の試合前練習での『持って行き方』のところで、コーチ陣がではなく、僕らが、悪かったと思います」

――例えば。

「昨日はBチーム(控え組)の方が士気は高かったと思いますし、今日のウォーミングアップでも(Aチームの)声が出ていなかった。初歩の初歩で躓いてしまって、ふがいないです。情けないです」

 冒頭で「4年生の(いた)ところが抜かれて…」と最上級生の姿をあえて問題視し、ぶつかり合いで後手を踏んだ試合内容を「僕らが、悪かった」と総括する。責任を他者になすりつけない佐藤が頭角を現したのは、かつての指揮官にプレーが認められたからだった。

 2016年度に就任した元サントリーの山下前監督は、創部100周年時の優勝を目指してスポンサー企業との連携や強化計画を錬成。東京・本郷高出身で身長179センチ、体重93キロと小柄な佐藤を、「いい意味での悪さを持った判断力のある選手。真吾には、真吾にしかできないプレーがある」と見込んでレギュラーへ抜擢した。

 当の本人も鋭いタックルやランで期待に応えていたが、前年までの2季は続けて全国4強入りを逃したことなどから山下前監督は辞任。指揮官による佐藤のキャプテン指名も、辞任の可能性が高いタイミングでなされたようだ。

――キャプテン就任の経緯は。

「大悟さんから電話がかかってきまして、『お前、キャプテンだから』『はい、わかりました』です。経緯としては、(その前後で)加藤広人前キャプテンの加藤組の意見、OB会からの承認(があっての決定)です。最終的には監督が決めるのですが、相良さんが監督になった時には、僕がキャプテンをすると決まっていました」

――大役です。

「何となく『なるのかな』とは思っていました。いざなってみると100周年ということでプレッシャーも大きいですが、こういう責任のある立場に立つことで自分を成長させられもする。少し、楽しみだな、とは思いました」

――キャプテン就任と同時に、監督交代が待っていました。

「大悟さんから電話がかかって来た時に、(本人または周辺から)『もう代わるかも』という話は聞いていました」

――佐藤選手には、山下前監督に素質を見出された経緯もあります。

「大悟さんが就任したばかりの時も、アタック(の形)が急に代わって、秋になってもそこまで練ったアタックができずに負けた印象が強かった。また同じことになるのでは…代わらない方がよかったのではないか…とも思いました。やって来たこと自体は間違いではなかったので」

――ただ、いまは気持ちを切り替えているようです。

「過去のキャプテンと違って高校日本代表でもないし、無名も無名。すごいプレーで『皆、付いて来い!』と引っ張れるわけではないです。言葉もそんなに、うまくない。だから、いかに周りの選手に主体的に喋らせるか…というキャプテンになっていきたいです。フォロワーシップ、ではないですが」

――リーダー以外の人員の主体性が組織力を底上げする「フォロワーシップ」。早稲田大学でキャプテン、監督を務めた中竹竜二・日本協会コーチングディレクターの考えと共通しています。

「本、読んでます! まだ全部ではないですが。いまは、色々な人に仕事を任せる感じで動いています。中竹さんに比べたら『お前、何やってるんだ』というレベルだと思いますが、僕は、こういう風にやっていくしかない。もちろん、身体を張るということもやっていきますが」

 日本体育大学戦後、相良新監督は「私は自主性と言っていて、ややもすると放任と取られがち。ただ放任というものは、(選手が)自分たちに厳しくないと成り立たない世界。逆に、自分たちに厳しくできるようになったらもっとよくなる。ここは我慢比べですが」。部員たちの能動的な態度を引き出したい佐藤キャプテンとは、概ね意見は一致している。

 体制を刷新して迎えたメモリアルイヤーは、どんなシーズンになるだろうか。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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