現役ドラフトで発掘なるか。ファームの飛ばし屋
移籍の成功例は大田
来季からの導入が検討されている現役ドラフト、これはメジャーのルール5ドラフトを参考にした制度で出場機会に恵まれていない選手に活躍の場を与え、飼い殺しを防ぐことを目的としている。
メジャーのルール5ドラフトで対象となるのは契約時18歳以下だったなら5年、19歳以上だったなら4年を経過して40人のロースターに入っていない選手。日本でも中堅で移籍し新天地で花開いた選手の代表格として大田(日本ハム)の名前が挙げられる。
大田は東海大相模高校時代に65発を放ったスラッガー、巨人入団時にはかつて松井秀喜がつけた背番号55を背負うなど将来の主軸候補として高く期待されていた。しかし高い身体能力を持ちながら中々そのポテンシャルを発揮出来ず2016年オフにトレードで移籍。日本ハムでは外野のレギュラーとして3年続けて100試合以上に出場した。
ファームで示した抜群の長打力
大田は巨人時代、ファーム通算IsoPで0.183と非常に高い成績を残していた。IsoPは長打率−打率で計算され、長打力を示す指標。よく目にする長打率は単打でも上がるが、IsoPは2塁打以上を打たないと上がらない。目安としては.180以上が優秀、.200以上が非常に優秀と考えられる。
強力打線で連覇を達成した西武はファームでも3年目の鈴木が打率.305、2年目の高木渉がIsoP.197、ルーキーの山野辺がIsoP.194と若獅子が牙を研いでいる。ただこの3人はまだキャリアが浅く、現役ドラフトの"出場機会に恵まれていない選手の救済"という趣旨には当てはまらない。もう少し年齢が上で高いIsoPを残したのが8年目の駒月、その数値はなんと.309。2017年には.182、2015年には.173と好成績を残している。高校時代は強肩強打の捕手として活躍したがプロ入り後は外野に挑戦していた。2017年から再びマスクをかぶり活路を求めたが1軍の舞台は遠く、その間に森が台頭。今季、最終戦ではスタメンマスクをかぶり初めて1軍の試合でプレーボールからゲームセットまで任されたが強大なライバルが立ちはだかることに変わりはない。仮に移籍したとしたら大抜擢があるかもしれない。
ウエスタンリーグにも立場が大田と重なる選手がいる。江越(阪神)のIsoPはルーキーイヤーに1軍で.173、ファームでは今季が40試合で.290、昨季が88試合で.200。肩と足は素晴らしくパワー溢れるスイングから放つ打球の飛距離は群を抜く。おそらくNPBを全く知らない人が打撃練習だけを見て判断すれば次にメジャー挑戦するのはこの選手に違いないと思うはず。選手タイプだけでなく、ある程度1軍での出場経験があるところも大田と重なる。現役ドラフトが実施された場合、対象選手とする条件に出場試合数があれば当てはまるかは微妙なところだが大きなロマンを秘めている。実戦では三振の多さがネックだがきっかけをつかめるか。
現役ドラフトがどのような制度でどのような成果を生むかはまだわからないが、選択肢が増えるということは選手にとって大きなメリット。ニュースター誕生に期待がかかる。