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韓国軍に「自衛隊竹島侵攻シナリオ」とその対応プランはあるのか?

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
一昨年8月の韓国の「東海(日本海)領土守護訓練」(韓国国防部のHPから)

 共同通信が昨日、配信した竹島(韓国名:独島)に関する韓国保守紙「東亜日報」(11日付)の記事が波紋を呼んでいる。韓国軍が竹島に自衛隊が「侵攻」するシナリオと、それに対応する韓国側の戦力などを明示した内部文書を作成し、昨年12月に韓国国会に報告していたことが明るみに出たからだ。

 韓国はこれまで戦力増強及び国防予算の増額は常に「北朝鮮の脅威」を名目に、あるいは大義名分にしてきた。ところが、この内部文書には名目の一つに「自衛隊による軍事的脅威からの防御のため」も含まれていたとのことだ。北朝鮮に融和的な文在寅政権下では「北の脅威」を表向きの理由とした新たな戦力補強は困難とみて、「日本」を口実に持ち出したのか、それとも本気で「日本はいつの日にかやって来る」と警戒しているのか、日本にとっては大いに気になるところだ。

 同紙によると、韓国軍は野党議員の照会に対して「実際の作戦とは無関係の参考資料で、日本の兵器研究家が発表した仮想の侵攻シナリオを参考にした」と説明したようだが、取って付けた言い訳で、韓国内には額面通り受け止める向きはないだろう。韓国軍ではすでに「有事」プランや作戦が練られ、それをその都度補強、補完しているものと思われる。その根拠を幾つか挙げてみる。

 第一に、韓国国防部が今年の国防白書で初めて日本をこれまでの「パートナー」から普通の「隣国」に格下げしたことだ。

 もともと韓国は日本とは同盟関係にもなければ、軍事条約も結んでいない。唯一日本との間にはGSOMIA(日韓軍事情報包括保護協定)があるが、これも一時は「信頼関係が崩れた」として破棄を検討したほどで安保の面でも日韓関係は良くない。

 その象徴が、まさに2018年12月に起きた日本のP-1哨戒機への韓国駆逐艦のレーダー照射を巡る「衝突」だ。日本は「照射された」と韓国を非難したが、韓国は逆に「日本の哨戒機が我々の艦船に低空飛行をし、威嚇した」と日本を批判していた。

 第二に、韓国軍は国防白書で「韓国の主権、国土を脅かし、侵害する勢力」を「敵」と位置付けていることだ。

 この概念に基づけば、北朝鮮が「主たる敵」ならば、領有権で対立している日本は「潜在的敵」という扱いになる。

 第三に、実際に竹島周辺海域で海軍と空軍、それに海兵隊と海洋警察を動員して2008年以来、年2回軍事訓練を実施していることだ。

 軍事演習は「独島防御訓練」あるいは「東海(日本海)領土守護訓練」の名で実施されている。「外部勢力が韓国の領土である独島を不法に占拠する」ことを想定した訓練である。「歴史的にも国際法的にも日本の固有の領土である竹島を韓国が不法占拠している」と主張している日本を想定しての訓練であることは一目瞭然である

(参考資料:こっそり実施された竹島での韓国の「独島防御訓練」 日本は気づかなかったのか?)

 韓国の警戒心は半端ではなく、実際に昨年10月に海上自衛隊がリチウムイオン蓄電池を利用した新型潜水艦「たいげい」(3千トン級)を進水させ、潜水艦の戦力を22隻としたが、韓国のメディは「中国の海洋進出に対抗するため」との日本国内の一般的な見方とは裏腹に「独島を狙い、今度は攻撃用潜水艦」(韓国紙「アジア経済」)と捉えていた。

 第四に、過去に日本との間で「一触即発の事態」を経験していることだ。

 小泉政権下の2006年に竹島周辺海域での海洋調査実施を巡って海上保安庁と海洋警察庁が睨み合ったことがあった。

 竹島周辺海域での韓国の海洋調査船による調査に対抗し、日本も竹島周辺の最新のデータに基づく海図を作成するための調査を実施しようと「水路通報」を公表したことに韓国が非常警戒令を発令し、「日本の調査船が韓国の主張するEEZに侵入すれば、実力行使も辞さない」と警備艇約20隻を集中配備したことで発生したトラブルである。当時官房長官だった安倍晋三前首相はこの時の状況について「銃撃戦寸前だった」と回顧していた。

 周知のようにここ数年、日韓の海上での紛争が絶えない。昨年から今年にかけて日韓双方から200カイリの接点地域内(五島列島の女島から西側140km付近)での測量調査を巡る海上保安庁と韓国の海洋警察庁との間で睨み合いが起き、「自国の水域」を巡る「領海紛争」に発展する兆しをみせている。こうしたことから韓国は日本への警戒心を一段と強めているのが実情である

(参考資料:海上で睨み合う海上保安庁VS韓国海洋警察庁 憂慮されるのは一触即発だった2006年の再現)

 最後に、一昨年「2019年防衛白書」に日本が竹島上空で衝突が発生した場合、航空自衛隊の戦闘機を緊急発進させる可能性について触れていたことである。

 防衛白書には小泉政権下の2005年以後毎年竹島の領有権が明記されているが「2019年防衛白書」では竹島を青色のマークで囲み、島周辺が日本の領空であることを強調され、有事時、即ち「日本の主権を侵害する措置」の項目で竹島上空に航空自衛隊の戦闘機を投入することが追加されていた。

 尖閣諸島では国際社会に「現状の維持」を訴えながら、竹島では力による「現状変更」を求めるのは自己矛盾していることから日本が武力を行使し「竹島」を奪還する可能性は低いとみられているが、韓国内には日本が竹島の領有権を国際社会に訴える術として戦闘機を近接させたり、船舶を侵入させることはあり得ると警戒しており、そうした警戒心から「武力衝突の可能性は排除できない」との前提の下で「有事」を想定したプランを作成している可能性は大だ

(参考資料:竹島で日韓軍事衝突の可能性は?「防衛白書」に警戒心を強める韓国)

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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