パナソニックの新人・坂手淳史。押されたスクラムに「反骨心も」。【ラグビー旬な一問一答】
日本最高峰のトップリーグで3連覇中のパナソニックは7月9日、埼玉・熊谷ラグビー場サントリーと練習試合をおこない、33―52と敗戦。先発出場した新人の坂手淳史は、熟練者との駆け引きで学びを得た。
2011年度からトップリーグ2連覇を果たすも前年度9位と苦しんだサントリーは、日本代表勢を先発させるなど必勝態勢で臨んだ。かたやディフェンディングチャンピオンのパナソニックは、ロビー・ディーンズ監督曰く「色々なことを試して、色々なことを学ぶ」。主力選手と新人選手を近いポジションに並べたり、時間帯ごとに選手を入れ替えたりと、チーム戦術の浸透や選手層の拡張に神経を注いだ。
チーム間の背景が浮き彫りになったのは、スクラム。フォワードが8対8で組み合う、攻防の起点だ。
サントリーは元日本代表スクラムコーチのマルク・ダルマゾの短期間の指導を受けたばかりで、最前列中央のフッカーに元日本代表の青木佑輔、右プロップには現役日本代表の畠山健介といった経験者を並べた。
かたやパナソニックはスクラム強化にさほど時間をかけていないようで、左プロップに平野翔平、フッカーに坂手淳史と、前線に新人を並べていた。左プロップの平野は東海大時代、おもに右プロップを務めていた。
この午後1本目のつばぜり合いで反則を取られたパナソニックは、お互いのメンバーが入れ替わるまでサントリーのペースで組まれた。
それでも試合後、坂手は溌剌とした表情を浮かべた。
昨季、帝京大学のキャプテンとして大学選手権7連覇を達成した坂手は、身長180センチ、体重104キロの体躯で強烈なタックルを長所とし、今春は日本代表デビューも果たしている。
この日は明瞭な語り口で失敗の背景を明かすなか、一見しただけではわからないプレーの深層を伝えている。
来季以降の海外挑戦についても、意欲を語る。
以下、9日の一問一答(編集箇所あり。全て当方質問)。
――国内強豪クラブとの対戦。いかがでしたか。
「楽しかったです。すごく楽しかったですよ。色々、学べたので、それを糧にしてやっていきたいですよね。チームによって色、やってくことが違う。特にスクラムの部分。畠山さん、青木さんと日本を代表する選手たちと組めたことが財産だと思いますし、見えたものもある。これをどう活かしてゆくか。努力を進めていきたいです」
――最初の1本目から、反則を取られました。
「(組み合うタイミングなどが)全体的にずれていた。その、方向性ですね。バインド(お互いを掴み合う瞬間)にセンターライン(両者間の見えない境界線)を取られたり…。サントリーさんが一貫してやりたいことをしていたのに対し、こちらはそれを見間違えた部分がある。ここを冷静に話し合いながら組めたら…。きょうは(試合中、両脇で組む)翔平や川俣(直樹)さんとも話せてはいた。充実した、いい時間でした。まだまだ始まったばかり。いいゲームを作りたいですし、いいラグビーをやっていきたいですよね」
――いわゆる「力負け」ではなかったような。
「まぁ、色々とありますよね。僕らは1、2番(左プロップとフッカー)、後ろ(2列目以降)が若かったなか、試合をしながら色々と修正できた点はよかったと思います」
――逆に、相手の第1列のうまさは感じましたか。
「やっぱり、固まっていましたよね。1、2、3番が。そういうことを、僕もやっていきたい。一番よかったのは、きょう、この試合ができたこと。久しぶりに、相手にそういう(自分たちのペースを握れない)スクラムをやられましたし、楽しかったですね。次にやってやろうという自分の反骨心も出ましたし。切磋琢磨して、話して、修正していきたいです」
――試合後、元日本代表プロップの相馬朋和ヘッドコーチと話していましたが。
「やはり、フッカーが舵取り。お前が(スクラムの方向性を)決めろ、と。きょうがふわふわしていたわけではなく、お互いのコミュニケーションは取れたと思うんですけど、最終的に(意見をすり)合わすようなことを、これからはしていきたいです。パナソニックのスクラムのいい形ができるように」
――改めて、来季以降のことを。サンウルブズ入りや日本代表への思いは。
「まだ話は何もないですけど、(サンウルブズは)いいチームだなと思いますし、(国際レベルを)試合で経験できるチャンスもある。呼ばれたら行きたいという気持ちもあります。そういうところへ呼ばれるように、今シーズン、やっていきたいです」