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今季初登板を果たした有原航平に期待したい構想外からの一発形勢逆転劇

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
今シーズン初のメジャー先発を果たした有原航平投手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【有原投手の今シーズン初登板を監督代行が評価】

 レンジャーズの有原航平投手が現地時間の8月16日のアスレチックス戦で今シーズン初のメジャー登板を果たし、5.2回を投げ8安打3失点の内容で敗戦投手になった。

 立ち上がりから次々に安打を許し毎回失点という苦しい立ち上がりになったものの、4回以降からは交代するまで被安打1に止まるなど、徐々に投球内容が改善していった。

 また自己最多タイに並ぶ6奪三振を記録するなど、前日の試合前に解任されたクリス・ウッドワード監督に代わり指揮をとるトニー・ビーズリー監督代行からも、有原投手の投球は一定の評価を受けている。

【監督代行「しっかり打たれたのは本塁打だけ」】

 試合後にMLB公式サイトにアップされたビーズリー監督代行の試合後会見動画によれば、有原投手について以下のように話している。

 「正直に言って、彼は本当にいい球を投げていたと思っている。初回から安打を許す展開になったが、得点された場面は不運だった面もあった。しっかり打たれたのは、(3回に打たれた)マーフィーの本塁打だけだったと思う。

 試合中もダグ(・マシス投手コーチ)と一緒に『いい球を投げている。自分のするべきことをしている』と声をかけていた。実際彼は自分の投球を取り戻していたし、本当にいい仕事をしてくれたと思っている」

 前述したように、立ち上がりから3回まで7安打を集中される展開となったが、ビーズリー監督代行は被安打数だけでは判断しにくい投球内容を評価するとともに、4回以降から自分の投球を取り戻した修正力を称えている。

【少なくともあと3~4試合は登板機会がありそう】

 今回有原投手が今シーズン初のメジャー昇格を果たせたのは、負傷者による先発投手陣の補充措置だ。

 ここまで8試合に先発し、2勝4敗、防御率7.41の成績を残しているスペンサー・ハワード投手が右肩炎症のため8月9日に負傷者リスト(IL)入りしたため、その先発枠を有原投手が引き継いだかたちとなった。

 ハワード投手は現時点で復帰時期が未定で、同じくIL入りしている主力先発投手の1人であるジョン・グレイ投手に関しても、9月中旬での復帰が見込まれており、今後も誰かがその穴を埋めなければならない状況だ。

 今シーズン初登板ながら首脳陣から評価を受ける投球を披露したことで、このまま有原投手がローテーションに残る公算が強く、今後の投球内容にもよるが、グレイ投手もしくはハワード投手が復帰してくるまでの間、最低でも3~4試合ほど登板機会が与えられることになりそうだ。

【有原投手にとって野球人生をかけた登板が続く】

 これからメジャーで与えられる登板機会は、今シーズン限りで契約が切れる有原投手にとって1試合たりとも無駄にはできない。

 この機会にローテーションを守りながら安定した投球を披露できるようならば、これまで絶望視されていたレンジャーズとの再契約の可能性が一気に広がるかもしれないからだ。

 またレンジャーズと再契約できなかったとしても、メジャーの舞台でしっかり投球できる姿を見せられれば、他チームからオファーが届く道も広がることになる。まさに今後の野球人生をかけた登板が続くのだ。

 仮にメジャーで1試合も登板できずにシーズンを終えていたとしたならば、レンジャーズとの再契約はおろか、他チームも関心を示さないという最悪の事態を迎えていただろう。

 というよりも、シーズン開幕当初の状況を考えると、有原投手は最悪の事態を迎える方向へ向かっていたというのが正しいかもしれない。

【まさに構想外からの一発形勢逆転劇を狙う】

 昨年9月19日に突如40人枠から外されて以降、レンジャーズ内での有原投手に対する期待度は決して高いものではなかったように思う。それは、今年のスプリングトレーニングの登板状況を見ても明らかだ。

 すでにご承知の通り、今年の有原投手は、招待選手としてメジャーキャンプに参加していた。日本のメディアは「オープン戦で結果を出し、開幕メジャー入りを目指す」という内容の報道がなされていたが、米国での報道はかなり違っていた。

 MLB公式サイトでは、スプリングトレーニング開始当初から先発ローテーション候補に有原投手の名前がなく、同サイトの作業ミスなのかどうか分からないが、メジャーキャンプに参加している選手リストの中に最後まで有原投手の名前が加わることがなかった。

 オープン戦に至っては、メジャーのオープン戦登板はわずか2試合のみ。しかもいずれも途中登板で計3.2イニングに止まり、早々にマイナーキャンプに送られてしまったのだ。

 その扱いぶりから想像できるように、開幕当初の有原投手は間違いなく構想外の選手だった。当時はむしろ今シーズンメジャー昇格はないのではないかと想定されるような状況だった。

 3Aで開幕を迎えてからも、いろいろ苦難を経験している。開幕当初は先発ローテーションに入っていたが、5月5日の先発登板を機に、一時期中継ぎに回ることもあった(この間7日間のILにも入っている)。

 6月10日から先発に復帰しているものの、やはり1度だけ中継ぎ登板に回っており、こうした登板状況を見ても、3Aにおいても有原投手の登板が優先されていたようには思えない。

 そうした苦しい状況を経た中で、今回のメジャー初登板まで辿り着いたのだ。今日に至る中で、有原投手に対するレンジャーズの評価がどのように変化していったのかまでは分からない。

 だがこの与えられた機会を見事にものにして、有原投手の一発形勢逆転劇を期待したいところだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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