緊急事態宣言後も競馬続行。騎手の自宅通勤、関東3勝クラスのメンバー構成の変化などに注目
JRAは8日、緊急事態宣言後も競馬開催を続行すると発表した。人馬の移動に制限をかける等の感染拡大防止策を加えて、2月29日から実施している無観客での競馬を行っていく。この感染拡大防止策によって生じる変化やポイントをお伝えする。
馬と人の移動を制限。関東の2勝、3勝クラスに注目
JRAは無観客競馬のほかに、感染拡大防止をつとめるべく幾つかの制限を設けた。
まず、4/18-5/3は人馬の移動を抑えるため、オープンと障害以外の競走馬は他ブロックへの出走を制限する。
JRAの競走馬は関東は美浦トレーニングセンター、関西は栗東トレーニングセンターに在籍しており、それぞれの自ブロックは関東は東京・中山、関西は阪神・京都と定められている。
普段はある程度は東西どの競馬場のレースに出走してもいいのだが、この期間は他ブロックへの出走を制限し馬の移動の制限をかけた。
これにより影響が大きいのは関東の2勝クラス、3勝クラスのレースだ。これらのレースには関西馬が一定数参戦しており、勝ち鞍も多かった。
特に3勝クラスは関西馬の活躍が目立つ。2020年、中山競馬場と東京競馬場で行われた3勝クラスの勝ち馬は関東馬14勝に対して関西馬が10勝だった。過去のデータを見ても、2019年は関東馬42勝に対して関西馬29勝、2018年は関東馬35勝に対して関西馬36勝と関東馬だ。
その関西馬が一斉にいなくなるので、これまで勝ちあぐねていた関東の3勝クラスの馬にはチャンスが巡ってくる。
※4月10日 追記 JRAは臨時措置として番組編成を変更した。その概要はこちらの記事に記載した。
また、騎手は土日を同一場で騎乗する。中央競馬では土日をまとめて”節”と呼ぶが、節内の騎手の移動も禁じた。つまり、土曜に中山、日曜は阪神というパターンはNGだ。ただし、障害騎手はその限りではない。
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「認定調整ルーム」の運用。騎手がJRAが自宅から直接競馬場へ向かうのもOK
騎手は通常、レース前日から調整ルームと呼ばれる施設に入らなければならない。公正競馬確保ため、外部との接触を断つことと、騎手の心身を調整するためである。しかし、この調整ルームに騎手たちが集まることが、今回のような場合はクラスターの発生につながりかねない。騎手たちはこの調整ルームで食事や体重調整のためのサウナ、風呂など多くの施設を共にするからだ。
そこで、通常の調整ルーム以外にJRAが認定した自宅やホテルを「認定調整ルーム」とし直接競馬場へ行けるようにした。これにより、期間限定ではあるが騎手たちは自宅から直接競馬場へ向かうことが許されるようになった。
これが騎手たちの心身にプラスに働くのか、その逆なのかを思案するのも馬券検討のひとつになるかもしれない。
武豊騎手「少しでも楽しんでいただいて勇気を与えられるようなレースができれば」
この日、JRAの発表前に桜花賞の共同記者会見が行われていたが、その席で騎手をとりまとめる日本騎手クラブの会長でもある武豊騎手、および副会長の福永祐一騎手は緊急事態宣言が発出された後の心境について話した。
「ほんとに今大変な状況ですけど、我々は競馬を通して、テレビやラジオや多くの方が競馬で楽しんでいただけると思って全力で騎乗するだけなので。なんとか少しでも楽しんでいただいて勇気を与えられるようなレースができればと思います。」(武豊騎手)
「こういった状況下の中で競馬を続けさせてもらえるということは感謝していますし、関係者一同、精一杯いいレースを提供できるようにしていきたいなと思っていますので、またたくさんの方々に支えていただけたらと思っています。」(福永祐一騎手)
その後、JRAの開催続行の発表されたが、競馬に携わる人々は一様に安堵の表情を浮かべていた。
今週はクラシック第一弾の桜花賞、来週は皐月賞が行われる。
今後もしばらく無観客競馬が続くと察せられるが、このように競馬の開催が続くだけでも今は満足していくべきか、と筆者は考える。
【武豊騎手、緊急事態宣言前のメッセージ「こういう時こそ困難な状況に立ち向かい、乗り越えなければ」】
[映像は2019年桜花賞。優馬はグランアレグリア]