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投手がダグアウトで「タブレット」に怒りをぶつける。満塁本塁打を打たれたから…ではなく!?

宇根夏樹ベースボール・ライター
クリス・バシット(トロント・ブルージェイズ)Apr 30, 2023(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 4月30日、クリス・バシット(トロント・ブルージェイズ)は、初回に4点を取られた。最初の2人から三振を奪った後に、四球、四球、死球で3人を出塁させ、6人目の打者にホームランを打たれた。

 次の打者を外野フライに討ち取り、ダグアウトへ戻ったバシットは、タブレットを手にした。確認したい投球があったのだろう。

 その直後、バシットは自分が座っているベンチの横にタブレットを叩きつけ――バシッと音がしたかどうかは定かではない――さらに、それでは勢いが足りないとばかりに、立ち上がってタブレットをベンチの座面に投げつけた。タブレットは勢いよく跳ね返り、下に落ちた。

 どうやら、怒りの原因は、満塁本塁打を打たれた球ではなく、最初に四球で歩かせた、3人目の打者に対する5球目らしい。カウント2-2から、バシットは、左打者であるジャレッド・ケルニック(シアトル・マリナーズ)の内角に速球を投げ込んだ。

 タブレットではなくパソコンで映像を確認すると、その球はストライクゾーンの外から内へ小さく曲がっているように見える。スタットキャストによると、93.3マイルのシンカーだ。バシットは、見逃し三振でイニング終了と思ったのだろう。けれども、球審は、この球をボールと判定した。

 タブレットにとってはいい迷惑だが、怒りをぶつけて気が済んだのか、バシットは、2回表から5回表までの4イニングを、与四球2、被安打1、無失点に抑えた。

 なお、ブルージェイズは、8対10でマリナーズに敗れた。0対4から8対4と逆転し、バシットに白星がつく可能性もあったが、6回表以降の4イニングに計4失点。同点に追いつかれ、10回表に2点を取られた。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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