FW横山久美の国内ラストマッチを5ゴールで飾った長野。新潟はこの難局をどのように乗り越えるのか(2)
6月24日(土)に行われた、リーグカップ第5節の長野パルセイロ・レディースとアルビレックス新潟レディース戦は、長野が5−2で勝利を収めた。
FW横山久美の国内ラストマッチを5ゴールで飾った長野。新潟はこの試練をどのように乗り越えるのか(1)
以下、試合後の監督・選手コメント。
【監督・選手コメント】
本田美登里監督(長野)
ーー試合を振り返っていかがですか?
今日の試合は(横山久美のラストマッチという点で)特別な試合だったかもしれないのですが、我々(パルセイロレディース)にとっては、カップ戦の一つの試合でした。過去(直近の)2試合で2敗していて、逆転負けしていたので、まずは勝つこと。それが、結果的に横山(久美)への餞別になれば良いなという思いがありました。今週のミーティングでも、それぞれの練習開始前、後を含めて、横山の最後の試合になるということは一言も話すことなく、今日のミーティングでも話すことなく試合に臨みました。横山本人を含めて、選手それぞれに想いがあったと思うので、あえて私が口にすることはないと思っていたからです。ですので、勝負に徹しました。そして、横山を含め、いろいろな選手が点を獲れて、ホームゲームで素晴らしいサポーターの中で彼女を送り出せたことは良かったと思います。得意ではないヘディングで、最後の最後にしっかり帳尻を合わせたな、と(笑)。ただ、冷静に試合を振り返る中では、失点は要らなかったと思います。失点のところはディフェンスラインとの連携ミスもあったと思いますが、次に向けてしっかり準備していきたいです。
ーー5得点の要因をどのようにお考えですか?
ウォーミングアップの段階から非常にミスが少なかったです。そのミスの少なさは、2部で戦っていた時に、この試合に勝ったら1部に昇格するという(状況で迎えた)試合と同じで、選手の顔つきも似たような感じでした。ただ、新潟もケガなどで、センターバックの左山(桃子)選手が出ていなかったり、だいぶメンバーが変わっていたのもあると思っています。
ーー監督は横山選手に、どのような思いを持っていらっしゃいますか?
まだ、(横山がいなくなるという)実感が湧かないんです。今日の試合に勝つことに必死だったので、彼女の最後の試合であるということに対してセンチメンタルになる気持ちの大きさがなくて、目の前の試合に勝てたことにホッとしていて。『あぁ、試合に(横山が)いないんだなぁ』と、次の試合で感じるのかな、と思います。
ーードイツでは横山選手にどのような活躍をしてほしいですか?
活躍するもしないも、コンディション作りだと思っています。特に、彼女の場合は体力がすぐに落ちてしまったり、食事も偏食なので。まずはしっかりコンディションを整えることができるかどうかが大きなポイントですね。その上で、大きな話をすれば、ブンデスリーガで得点王になってほしいと思いますね。
FW 横山久美(長野)
ーー試合を振り返って、今の率直なお気持ちを聞かせてください。
今までにないぐらい、早く感じる90分間でした。ハットトリックは取れませんでしたが、今日も味方がいいボールをくれて、ゴールを決めることができました。今までの得点はすべて、この3年半、一緒にプレーしたチームメートがいたからこそ獲れたゴールだったと、あらためて感じています。
ーーご自身のゴールシーンを振り返っていただけますか?
(1点目のゴールについて)今まで頭で点を獲ることがなかったので、最後の最後に、という感じでしたが、桂ちゃん(児玉桂子)のボールが良かったので、触るだけでした。2点目は、相手のミスだったので、冷静に決めました。1点を取っていたので、少しは冷静になれたと思います。
ーー移籍前の最後の試合は、どのような気持ちでピッチに立ったのでしょうか?
普段は気にしないことですが、最後なんだな、と考えるだけで涙が出たり、チームメートのことを思うと、自分は(チームの中で)年齢が下にもかかわらず、みんなが付いてきてくれて、たくさんの方に恵まれたなと思います。長野でプレーできて良かったです。
ーー試合が終わった時は、どのような気持ちでしたか?
正直、(家に)帰ってから、時間が経たないと実感が湧かないと思うのですが、このスタジアムで、これだけのお客さんに来ていただいて、その中で試合ができた自分は本当に幸せだったと感じています。ドイツへの移籍を発表した後にも、「行ってらっしゃい」という言葉をたくさんの方からいただいて、寂しくてもしっかり後押ししてくれていると感じたので、頑張らなければいけないな、と感じています。
ーー今日は5600人のお客さんが来た中で、長野Uスタジアムの光景はどのように目に映りましたか?
いろいろな光景が映りましたが、すべて心に残りました。
DF 坂本理保(長野/キャプテン)
ーー5得点を振り返っていかがですか?
チーム全体で獲った得点だと感じましたし、前半は勢いを持って行けたので、その流れに乗れた感じですね。
ーーゴールのパターンが増えましたね。
そうですね。1点目は真ん中を使いながら逆サイドに展開してシュートという流れでしたし、2点目も、中でポゼッションをしながら、サイドを使ってクロスからゴールを決めるという、去年までなかった形で点が獲れたことは、正直、びっくりしました。これまでは、展開が良くても、最後のクロスの精度とか、中を絞められた中でクロスからは点が獲りにくいところがあったので。
ーーキャプテンとエースの絆もあったと思いますが、横山選手が出てしまうことについて、寂しさもありますか?
そうですね。正直、まだ実感が湧かないです。本当に行っちゃうのかな、と。来週、試合をしてみて、「いないんだな」とじわじわと実感するのかもしれませんね。それは少し不安ですが、前に進むためにチーム全員で戦っていきます。
MF 児玉桂子(長野)
ーーどのような試合でしたか?
今日は久美が最後という特別なゲームでしたし、チームとして2連敗していた中でこういう勝ち方ができたのは次につながると思います。多くのサポーターに南長野に来ていただいて、5点を獲ることができましたが、2点を失ったのは反省点です。
ーー先制ゴールを振り返ってもらえますか?
フリーの状態でボールが回ってきたのですが、その前の段階で良い形ができていたので。トマ(泊)さんからいいボールがきたので、思いっきり足を振りました。
ーー古巣相手の試合でゴールを決めたことについてはいかがですか?
お世話になったチームですし、自分が成長した姿を見せることが一番の恩返しだと思うので、それができて良かったです。
ーー次節に向けての意気込みをお願いします。
今日の勝利を無駄にしないように、また、久美が心配で戻ってこないように(笑)、みんなで勝ちたいと思います。
GK 池ヶ谷夏美(長野)
ーー久々の先発でしたが、ご自身のプレーはいかがでしたか?
自分が久々の試合というよりは、横山の最後の試合だったので、勝つことだけを考えて試合に入りました。
絶対に(失点)ゼロでという気持ちが強かったので、この結果には全く満足していません。良かったと思えるのは、勝てたということだけですね。
ーーチームの守備面の成長は、去年から(今年にかけて)感じますか?
そうですね。1部で2年目ということもあって、最終ラインも安定感がありましたし、前半は自分がボールを触る場面もなかったので、ディフェンスラインを中心に全員が非常にハードワークしていたと思います。
ーー横山選手が抜けた中で、チームとして守備面ではどのようなことが大切になると思いますか?
このチームの良さは全員で守備をして、全員で点を獲りに行くというスタイルですし、その中で横山が結果を残してきたということだと思うので、今後も全員守備、全員攻撃を徹底しなければいけないと思います。泊(志穂)や齊藤(あかね)など、点を獲れる選手が前線にいるので、心配はしていないですが、全員で突き詰めてやっていきたいです。
ーー横山選手とは同期入団ということで、どのような思いがありますか?
長野に来る前に岡山(湯郷ベル)でも一緒にプレーしていましたし、長野に来てから4年間、本当にチームを引っ張ってくれました。一緒にピ
ッチに立っていて、いつも頼もしい存在でした。昨年からチームの失点が多かった中で、それをカバーしてくれたのが、点を獲ってくれた横山だったので。彼女が結果を残してくれることでパルセイロレディースの環境も良くなりましたし、ドイツに行っても頑張ってほしいですね。
MF 國澤志乃(長野)
ーーどのような試合でしたか?
いつもは守備をする時間が長いのですが、今回はボールを持てて、崩されたシーンも少なかったので、(パスを)縦に通しやすかったですね。いつも通りにやれば、いつも通りに久美が点を獲ってくれると思っていました。 今日の試合は相手も4-4-2で、うちも4-4-2だったので、引かずに押して行く守備をしようと話して試合に入りました。相手のサイドバックにもうちのサイドハーフが押せていたから、狙いやすく、前半はボランチのところでもボールを獲れていました。
ーー横山選手がいなくなる中で今後、チームとしてどのように戦いたいと考えていますか?
得点源がいなくなるので、より一層、久美がいないところでどうやってボールを保持してゴールに結びつけるのかということを、選手の中で探りながらも詰めていきたいと思います。
ーー来週のノジマ戦はどのようなイメージですか?
相手のポジションも変則的で、パルセイロが苦手とする感じなので、そこをどう攻略するかが大事になると思います。
辛島啓珠監督(新潟)
ーー上尾野辺選手を中盤で起用しましたが、どのような意図があったのでしょうか?
ボランチの阪口(萌乃)が2、3日前にももかん(大腿部打撲)を受けていて、最初から出すのはリスクがあったので、急遽、上尾野辺をボランチに落としました。
ーーどのような狙いで試合に入ったのでしょうか?
やろうとしているのは、相手のプレッシャーの中でもつないで(ゴールを目指す)形だったのですが、ボランチもディフェンスラインも含めてセカンドボールが全く拾えなくて、相手に勢いをもたせてしまいました。ボールの失い方も悪く、結果的に4点取られて厳しくなったのですが、(ハーフタイムに)人も代えて、自分たちのうまくいっていないところを修正して、次につなげようという話をして後半に入りました。
ーーカップ戦はメンバーを代えながらやっている部分もありますが、カップ戦で試していることはありますか?
試すというよりは、リーグ戦に向けてチーム状態を上げていく作業が必要だと考えています。
底上げのために若手を使うという選択肢もありますが、それよりも連携面をもっと成熟させて、リーグ戦につなげたいです。(センターバックの)瀬倉春陽が、前回(6月11日/ノジマ戦)は途中交代だったのですが、今日は(フル出場でした。)ミスで(長野の)4点目のきっかけになったところはあったのですが、それ以外は横山選手を抑えていた場面もあったので、彼女にとって良い経験になったと思うし、パフォーマンスも良いところがあったので、その点は収穫です。
ーー試合が続く中で、チームとして手応えを感じていることはありますか?
まだ、今日のように波があるし、失点が多いということを考えると足りないところは多いのですが、攻撃のチャンスを作るためには、ビルドアップをしてしっかりつなぐやり方が今のメンバーには合っていると思います。今は良い時もあるし、結果が出ない時もあるのですが、それを我慢強く続けて、リーグ戦につなげたいですね。
ーー園田瑞貴選手の2ゴールについてはいかがでしたか?
ケガ明けでほとんどトレーニングできていなかったのですが、彼女のポテンシャルを考えたら、今日のように前で仕事をしてくれるとチームにとっては大きいですし、ボールが収まるので。そういう選手がいるかいないかでチームのパフォーマンスも変わってきます。そういう点では彼女のプレーに満足しています。
MF 上尾野辺めぐみ(新潟)
ーー久々に中盤でプレーしましたが、試合の入り方はいかがでしたか?
試合を通して、いい部分と悪い部分がはっきり出た試合だったと思います。長野相手にミスをすれば、カウンターが来るということはわかっていましたし、それを止められずに失点してしまったことは反省点です。
後半はしっかりボールを動かすことで、リズムが良くなって、ゴール前に行く回数も増えましたし、それを前半からやれていれば、結果も変わってきたのかな、と思います。
ーー負傷者も多く、メンバーを固定せずに戦っている難しさもあるのでしょうか?
そうですね。でも、練習ではいろいろな選手同士の組み合わせでプレーしているので、メンバーが変わったことは言い訳にできないと思います。練習でやってきたことを出せるかどうかということが大切ですが、経験のある選手と、試合に出始めたばかりで経験が浅い選手の違いはあります。ただ、その点は試合を通して慣れていくことが大切で、今は我慢の時期だと思います。
ーー消極的なプレーに対して、試合中、どのような声のかけ方を意識していますか?
声をかけるというよりは、逆に、(消極的なプレーをしている)その選手に対してボールを預けることはよくありますね。それでミスをしたとしても、「やることを変えずにやり続けよう」ということぐらいしか言っていないです。
ーーカップ戦ではどのようなことを積み上げたいですか?
チームとしての連動と、個人としては、ゴール前での精度を上げていきたいですね。
FW 園田瑞貴(新潟)
ーー後半から出場しましたが、どのような意識を持って試合に入りましたか?
足元でボールを受けるのが好きなのですが、(間合いが)狭くなってしまうので、相手の背後を取ることが大事だと思って、結構、裏のスペースを意識していました。
ーーリーグ初得点の感想を教えてください。
負けている状況で試合に出たので、自分が得点したいなという気持ちがありました。今日は、チャンスがあればゴールする自信があったので、点を獲れたことは良かったです。今後は自分の持ち味を出しながら、アルビの勝利に貢献できるように頑張りたいです。
ーーケガ明けでのプレーでしたが、自分がイメージしたようなプレーはできましたか?
リーグのレベルの高さにも慣れてきたので、その中で、今後はもっと得点していきたいです。
ーー今後、このチームでどのような存在になっていきたいですか?
やっぱり、メグさん(上尾野辺めぐみ)みたいな、中心選手になりたいですし、得点力のある選手になりたいですね。