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羽生善治九段、王位リーグ白組3勝1敗でトップに立つ 藤井聡太王位への挑戦&タイトル100期なるか?

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 4月11日。東京・将棋会館において伊藤園お~いお茶杯第65期王位戦・挑戦者決定リーグ白組▲羽生善治九段-△木村一基九段戦がおこなわれました。

 10時に始まった対局は20時4分、147手で羽生九段の勝ちとなりました。

 両者のリーグ成績は羽生九段3勝1敗、木村九段2勝1敗に。羽生九段は一足早く4局を消化し、暫定的にトップに立っています。

 最終5局目は紅白両リーグともに5月14日、いっせいにおこなわれます。羽生九段は最終戦で飯島栄治八段(現在0勝3敗)と対戦します。

羽生「次の対局まではちょっと間隔が空きますけど、またいいコンディションで、リーグの最終局を迎えたいと思っています」

羽生九段、逆転で勝利

 羽生九段先手で、戦型は現代最新の角換わり腰掛け銀。羽生九段はなかなか仕掛けの機会が見いだせず、膠着状態が続きました。

 81手目。羽生九段は飛車先の歩を交換に出て、前線に飛車を飛び出していきます。

羽生「本譜はちょっとやりすぎでしたか」 

 木村九段は羽生九段の飛車の退路を絶つ歩を打ちます。いかにも木村流。相手の動きを積極的にとがめにいく反発で、ついに激しい戦いが始まりました。

 102手目。木村九段は7筋の飛車を逃げながら2筋に転換します。攻防に利くいい位置で、このあたりは木村九段が少しリードを奪っていたようです。

羽生「千日手になるのをきらって打開していったんですけど。ちょっとやりすぎだったかもしれないですね。それでちょっとずつ苦しくなってしまって。終始ずっとわるい感じでやってました。これで千日手にしても。なんかあまり、やりたくはなかったんで打開したんですけど、よくなかったかもしれません。飛車回られて、けっこうすごく打開が難しいですね」

 百戦錬磨の羽生九段は自分から折れることなく、決定的な差をつけられぬよう、相手を楽にさせぬよう、手段を尽くします。

 木村九段優勢で迎えた最終盤。131手目、羽生九段は木村玉のそばに角を打って、勝負と迫りました。持ち時間4時間のうち、残りは羽生17分、木村31分。

 132手目。木村九段は10分考えて、羽生陣一段目に飛車を打ちます。部分的には、羽生玉に着実に迫る寄せ。しかしこの手が落手で、形勢は急転しました。

木村「飛車はちょっと、ひどいもんでしたね」

 局後、木村九段はそう嘆いていました。代わりに自陣に桂を打って補強するか、あるいは羽生九段指摘の飛車回りで攻めを催促するなどすれば、依然木村九段よしの形勢でした。

 139手目。羽生九段は自陣の桂を中段に跳ねます。これが自玉の逃げ道を広げながら、相手玉に詰めろをかける、絶妙の攻防手となりました。

 受けの難しくなった木村九段は、羽生玉に迫ります。しかしきわどく詰みません。

羽生「(勝ちになったと思ったのは)本当に最後の最後で、詰まなければと思ってたんですけど。本当に最後ですね」

 147手目、羽生九段が玉を逃げた手を見て、木村九段は投了。熱戦に終止符が打たれました。

 数多くの名勝負を戦ってきた羽生九段と木村九段。通算対戦成績は羽生36勝、木村19勝、持将棋1局となりました。

いよいよリーグ終盤戦

 今期リーグ2勝1敗となった木村九段。もちろんまだ、リーグ優勝の可能性は残されています。次は4月19日、西川和宏六段(現在1勝2敗)と対戦します。

木村「一局一局、せいいっぱいがんばりたいと思います」

 全5局を戦うリーグで羽生九段は3勝1敗。勝ち越しを決めました。

 羽生九段は1993年に初めて王位リーグに入って以来、なんと一度も負け越したことがなく、また陥落したこともありません。

 改めて上の表をよく見てみると、羽生九段の王位リーグ最終5局目成績は、なんと12勝1敗です。

 羽生九段の王位獲得数は史上最多の18期。そしてあとタイトル1期獲得で、通算100期の大台に乗ります。

 羽生九段と藤井現八冠は2022年度の王将戦七番勝負で対戦し、大変な盛り上がりを見せました。

 もしまた王位戦で両者の七番勝負が実現すれば、再びフィーバーが起こるのは間違いないでしょう。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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