先生だけでなく、PTAや保護者にもメリットがある「自治体による給食費の徴収」
今月6日、文部科学省が、給食費の徴収業務を自治体が直接行うよう求める方針を決めたことが報じられました。未納家庭への督促など、教職員の負担を軽減する目的です。
<「自治体が徴収…教員の負担軽減狙い 文科省方針」毎日新聞 2017年9月6日>
同記事によると、いまも多くの自治体では各学校が給食費の徴収を行っており、徴収業務をすでに行っている市区町村は4分の1程度だということです(文科省調査)。
筆者も取材のなかで、給食費等の徴収業務(督促を含む)が先生たちの負担になっていることは感じていました。自治体がまとめてそれを行うのは、いいやり方だと思います。
レアケースですが、なかには給食費の現金チェック等をPTAが手伝っている学校もあります(筆者の地元のPTAがそうです)。
同じクラスの子どもの保護者が、出し忘れやお釣り等をチェックするため、「未納はほとんどない」と聞きますが、あまり気持ちのいいやり方とは思えません。
自治体が徴収業務を行えば、こういった方法は使わずに済みます。
*「PTA会費の抱き合わせ徴収」という問題
自治体による徴収で、もうひとつ改善を期待できるのが、「PTA会費の抱き合わせ徴収問題」です。
「抱き合わせ徴収」というのは、PTA会費を学校徴収金(*)といっしょに(しかもPTAへの加入意思確認を行わないまま)口座から引き落とす、または同じ封筒で手集金するというやり方です。
- 学校徴収金…「給食費」「積立金」等のほか、小学校なら「学級費」、中学校なら「教材費」などある
なお、筆者が現在行っているアンケートで、PTA会費の徴収方法について尋ねたところ、「給食費等(学校徴収金)といっしょに口座引き落とし」という回答は約半数(77回答中40件)で、「給食費等(学校徴収金)と同じ封筒で手集金」が1割弱(同7件)でした。
- 「単独の封筒で手集金」が3割弱(同22件)、「単独で引き落とし」は5%(同4件)
しかしPTAは学校とは別の団体です。「抱き合わせ徴収」は、徴収の手間を減らせる面もありますが、本当は問題があります。
まず、ただでさえ任意加入であるのが知られていないところ、会費が学校によって徴収されるのでは、保護者はますますPTAを「学校の一部、義務」と誤認しやすくなります。
全員自動加入(加入意思を確認しない)を保つにはそのほうがいいのだ、という声もありますが、堂々と言えるやり方ではないでしょう。
PTAは本来、入りたい人が入り、活動したい人が活動するボランティア団体です。
「抱き合わせ徴収」を続けることは、PTAにとっても、よろしくありません。
もし保護者が「PTAは学校の一部だと思って、会費を支払ってしまった」と訴えた場合、PTAが負けるリスクは高まると考えられます。(昨年和解となったPTA裁判のケースでは、会費は単独で手集金されており、抱き合わせ徴収ではありませんでした)
なかには学校も、PTAを学校の下部組織のように捉え、PTA会費を学校徴収金の一項目と誤認している場合がありますが、これも長年「抱き合わせ徴収」を続けてきたことが一因ではないでしょうか。
*自治体が集めれば「抱き合わせ徴収」は止まる?
では、給食費を自治体で徴収するやり方を導入すれば、「抱き合わせ徴収」は減らすことができるのでしょうか?
埼玉県川口市では、2011年度から、給食費を自治体が徴収し始めました。
同市の公立中学校に勤務する学校事務職員・柳澤靖明さん(『本当の学校事務の話をしよう』著者)は、このように話します。
「市内の小学校のPTAの多くは、会費を単独で手集金しています。これはやはり、給食費を学校で扱わなくなったから、ということが大きいでしょう。
ただし中学校では、給食費だけでなく『教材費』も大きな額なので、給食費を自治体が徴収するようになってからも学校ごとの引き落としを続けており、『抱き合わせ徴収』をしているケースがあります。
一番いいのは、給食費と同様に、教材費などほかの学校徴収金も、自治体が保護者から直接徴収することです。
そうすれば、保護者が負担する費用全体を自治体も把握できるので、負担拡大に歯止めがかかりやすくなりますし、教職員の事務負担軽減にもつながり、さらにPTA会費との抱き合わせ徴収も完全にできなくなります。
あとは、『PTAと学校は別団体である』という認識をもっと広げることもだいじですね」
今回「自治体による給食費の徴収」という方針が決まったことを機に、「PTA会費の抱き合わせ徴収問題」も改善されることを祈っています。