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掛布監督のゲキに応えた島本投手、先発で今季初の無失点!《6/11 阪神ファーム》

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
試合後の挨拶で並ぶ(左から)石崎投手、島本投手、藤谷投手、浜地投手、西岡選手。

先週末の阪神ファームは甲子園球場にソフトバンクを迎えての3連戦でした。9日(金)は横山投手が先発して5回1失点、才木投手も甲子園初登板で1回を0点に抑え、10対1の大差で勝利。10日(日)は藤浪投手の先発、打線が4安打と振るわず2対0で負けています。そして11日(日)は島本投手が先発して、そのあと浜地投手と藤谷投手も“甲子園デビュー”。ともに無失点でした。試合は4対2で勝って、2勝1敗の勝ち越しです。とはいえ対戦成績は6勝10敗…だいぶ差がありますね。

実は甲子園球場でファームの試合があった時、コーチや選手たちの帰るルートが1種類ではないため、きのうはせっかく甲子園初登板だった藤谷投手と浜地投手の話が聞けなかったのです。途中で顔は見ているものの、まだ練習やトレーニングがある時は取材できないので帰りを待っていたら…別ルートで既に去ったあとでした。すみません。来週末は抜かりなくやります!

《ウエスタン公式戦》6月11日

阪神-ソフトバンク 16回戦 (甲子園)

ソフ 000 000 011 = 2

阪神 010 010 02X = 4

◆バッテリー

【阪神】○島本(1勝2敗)‐浜地-藤谷-石崎-山本-Sメンデス(2敗12S) / 坂本-小宮山(8回~)

【ソフ】●高橋(1勝3敗)(3回)-児玉(1回2/3)-嘉弥真(1/3回)‐島袋(1回)-大隣(2回) / 張本

◆本塁打 長谷川勇3号ソロ(メンデス)

◆二塁打 大山、キャンベル2、西岡

◆打撃 (打-安-点/振-球/盗/失) 打率

1]遊:西岡   (3-1-1 / 0-0 / 0 / 0) .385

〃遊:森越   (1-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .224

2]二:植田   (4-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .219

3]右:伊藤隼  (3-1-0 / 0-1 / 0 / 0) .333

4]左:陽川   (4-2-0 / 0-0 / 0 / 0) .257

5]一:キャン  (3-3-2 / 0-1 / 0 / 0) .303

6]三:大山   (4-1-1 / 0-0 / 0 / 0) .233

7]捕:坂本   (3-1-0 / 0-0 / 0 / 0) .250

〃走:緒方   (0-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .233

〃投:石崎   (0-0-0 / 0-0 / 0 / 0) ―

〃投:山本   (0-0-0 / 0-0 / 0 / 0) ―

〃打:狩野   (0-0-0 / 0-1 / 0 / 0) .282

〃投:メンデ  (0-0-0 / 0-0 / 0 / 0) ―

8]投:島本   (1-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .000

〃打:小豆畑  (1-1-0 / 0-0 / 1 / 0) .171

〃投:浜地   (0-0-0 / 0-0 / 0 / 0) ―

〃投:藤谷   (0-0-0 / 0-0 / 0 / 0) ―

〃打捕:小宮山 (1-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .152

9]中:江越   (2-0-0 / 1-1 / 0 / 0) .061

◆投手 (安-振-球/失-自/防御率) 最速キロ

島本  5回 64球 (4-4-1 / 0-0 / 1.53) 144

浜地  1回 12球 (0-2-0 / 0-0 / 5.40) 145

藤谷  1回 17球 (0-1-1 / 0-0 / 3.60) 144

石崎 0.1回 7球 (0-0-1 / 1-1 / 5.79) 153

山本 0.2回 10球 (1-0-0 / 0-0 / 1.16) 136

メンデ 1回 23球 (1-1-1 / 1-1 / 2.93) 155

<試合経過>

先発の島本は1回に2安打などで1死三塁としますが、4番・長谷川勇を一直に打ち取り併殺!2回と3回は、ともにヒットで出した走者の盗塁を坂本が刺し、3人で片づけました。4回は1四球のみ、5回は三者凡退で締め、5イニングを投げて4安打無失点です。

西岡選手は5回に適時二塁打。ベンチでは後輩の西田選手(左)がいつも隣にいます。
西岡選手は5回に適時二塁打。ベンチでは後輩の西田選手(左)がいつも隣にいます。

その間に打線は2回、先頭で死球を選んだキャンベルを大山が中越えのタイムリー二塁打で還して1点先制!4回は陽川の中前打とキャンベルの中越え二塁打で1死二、三塁としましたが、ここは追加点なし。5回は島本の代打・小豆畑が右前打、続く江越の空振り三振で盗塁を決め、西岡の左前タイムリー二塁打(レフト塚田がグラブを出しながら突っ込んだものの、捕れずに通りすぎる)で生還しています。

2対0とリードして迎えた6回は浜地が甲子園初登板。9番からの打順で古沢を遊飛、高田と曽根はどちらもカーブで空振り三振に仕留めて三者凡退!7回は同じく甲子園初登板の藤谷。3番・牧原を投ゴロ(高身長を生かしたジャンプでキャッチ)、長谷川勇は左飛、塚田に四球を与えるも6番・城所は空振り三振!ルーキー2人は無安打無失点でした。

8回は石崎が先頭の釜元に四球を与えて、犠打で1死二塁となり代打・斐紹が告げられたところで降板。代わった山本は斐紹を1球で一ゴロに打ち取ったものの2死三塁として、続く高田に内野安打(二遊間を抜けそうな打球に植田がギリギリ追いついたけれど投げられず…)。これがタイムリーとなって1点返されます。

キャンベル選手は二塁打2本など3安打!
キャンベル選手は二塁打2本など3安打!

打線は6回に、1死からキャンベルが中前打しましたが大山は三ゴロ併殺打。7回は先頭の坂本が左前打で代打・小宮山の犠打で1死二塁としたまで。しかし1点差に追い上げられた直後の8回裏、1死から伊藤隼の右前打と陽川の左前打で一、二塁としてキャンベルが中越えのタイムリー二塁打!2人が還って4対1としました。

9回はおなじみの登場曲に乗ってメンデスがマウンドへ。ところが1死を取ったあと4番の長谷川勇に初球(153キロ)を打たれ、センターバックスクリーンに飛び込むソロホームラン。続く代打・本多にはストレートの四球を与えたものの、後続を断って試合終了です。

無失点で終えることを第一に

試合後のコメントは、まず島本投手からご紹介します。「きょうはゼロに抑えることを、まず第一に考えていました。ずっと調子はいいんですけど、その中でも1点取られて負けがついたりしているので…。監督にも『ゼロで抑えろ』と言われて、気合が入りました」。そういえば、前回まで島本投手が先発した5試合はこんな結果です。

5月4日 広島(甲子園) 4回1/3失点1、自責1

〃11日 中日(ナゴド) 5回失点1、自責0

〃19日 中日(鳴尾浜) 6回失点1、自責1

〃26日 広島(由宇) 6回失点3、自責3

6月4日 中日(春野) 6回失点1、自責0

自責のない試合もあるけど、確かにすべて失点しています。でも被安打は1試合につき2本から多くて7本まで、与四球も5試合で計3個だけと、非常に安定した内容と言えます。そして、きのう6月11日のソフトバンク戦が5回を投げて打者17人に64球、連打や四球はなく4安打無失点。6試合目で「今季初勝利です」と笑顔が見られました。

4回までランナーを出しながらのピッチングだったものの、最後の5回は再びギアが入ったようにビシッと三者凡退!「最初はあまり真っすぐが走っていなくて危なかった。だんだん上げていって5回は一番、真っすぐもよかったと思います」。その5回に、この試合最速の144キロをマークしました。「外の真っすぐ、ボール球ですね」

左打者内角へのフォークに手応え

今後に向けて自身への注文としては「もうちょっと、“ゆる球”でカウントを取っていけたら、もっとリズムよく投げられる。ゆる球の使いどころと制球ですね。きょうみたいにランナーを背負ったとこで三振を取れればいいかなと思います」とのこと。そして「今はチャンスも少なくて、完ぺきなピッチングをしていかないと(1軍に)呼ばれないと思うので、継続していけたらいいですね」と話しました。

「先発はいろんな球を投げられて楽しい」という島本投手。この日は、4回に4番の長谷川勇選手から空振り三振を奪ったフォークボールが絶品でした。「きょうは左バッターのインコースへ投げたフォークがよかったですね。十分使えると思いました」と手応えを感じた様子。そういう時、これで“1軍のあのバッターを打ち取る”なんて想定したりする?「想定はしていませんけど、逆に甘いとこ行ったら“上では打たれてるな”と思うことはあります」

試合後にランニングする島本投手。声をかけられて笑顔に。
試合後にランニングする島本投手。声をかけられて笑顔に。

最後にバッティングの話も。2回2死ランナーなしで回ってきた打席は、手を出さずにカウント1-1となったあとの3球目を打ってファウル、次の球でサードファウルフライに倒れています。振らずに三振すると思ったら、打ちましたねえ。「バントしたかったんですけど、そういう場面じゃなかったんで。打つのは別にいいんです」。なるほど。それにしても3球目のファウルは、レフト戦へライナー性の渋い打球でしたよ!「ヒットかなと思った(笑)」。1軍で打っちゃってください。

「1軍は近い」と久保コーチ

きのう投げ終えた時点で、島本投手の通算防御率は1.53となりました。私としては、島本投手がこの時期に規定投球回に達していることも嬉しい驚きですけど、防御率トップにいたんですよね。現在はオリックスの吉田凌投手が0.67で島本投手は2位。でも13日の試合で吉田凌投手が1/3回以上を投げなければ規定投球回を割って名前が消え、島本投手がトップに戻ります。それより1軍で、と言われるかもしれませんが…ファームの選手にとっては、こういう数字も大きなアピールなのです。

先発に回ってからもずっと1点台で来ていた防御率が、5月26日の広島戦で3点を失い2.00になった時も、久保投手コーチの評価は変わりませんでした。

「5回、6回まで球速を保っている。ほんの少し何かが、というだけのこと。問題点の核心の部分がわかりやすくなってきていたね。浮き彫りになっている。ほんと、最後の配球だとか、高度な部分の“詰め”のところだけ。あれくらいのボールなら、最後の詰めをしっかりすれば大丈夫ですよ。本人に聞いても『あそこ迷いました』という答えが返ってくる。明確にわかっているのは、すごくいい」

そして「1軍は近いと思いますよ。上のローテも、隙がないわけじゃない状態だから、先発でもチャンスはある」と島本投手を推す久保コーチは、最後に「ファームでやっているピッチャーや、我々も “甲斐” がありますね」と締めくくりました。悪ければファームで再調整、代わって誰かがその枠でという可能性ありで、逆に言えば上にいても油断はできないってことですよね。

小豆畑選手、プロ初盗塁!

苦笑いのように見えますが、本当は悔しくてたまらない山本投手。
苦笑いのように見えますが、本当は悔しくてたまらない山本投手。

8回1死二塁で登板した山本投手も、防御率は1点台。なかなか声がかかりませんが、我慢して投げ続けています。ただ、この日は石崎投手が残した走者を内野安打で還してしまいました。最初は気にしない風を装っていたものの、本音を聞くと「くやしいです!」という言葉。「いろんな選択肢がある中で、スライダーを選び、コースヒットではあったけれど…」と悔やまれる1球だったようです。

キャンベル選手は二塁打2本を含む3打数3安打2打点。「前の2試合も状態はよかったけど結果が出なかった。そのままのアプローチで、きょうの結果につながったかなと思います。結果が出るのはもちろんいいですが、野球というのはどんなにいい状態でも打てないこともあるので。自分としては内容のある打席をと。それが一番大事だと思っています」。とっても真面目なコメントでした。

最後は小豆畑選手です。5回裏に島本投手の代打で出て、見事なライト前ヒット!ナイスバッティングと言ったら「目をつぶって振りました」と笑いますが、それだけじゃありません。なんと盗塁も決めました!エンドランで江越選手が空振り三振しちゃったんですが、しっかり二塁セーフ。ことし初だよなあ。いつ以来かなあ。聞くのは失礼だし、と思っていたら

「ことし初どころか、プロ初ですよ」

ちなみにフェニックス・リーグで決めたところは見たことがありますけど、公式戦ではこれが5年目で初の盗塁成功。去り際にこんなことを言っていました。かなり真顔で。

「記念にベースを持って帰ってきたと書いといてください」

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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