有田氏、紀藤氏への旧統一教会による名誉棄損裁判は、連日棄却の判決 火の手がさらに増す可能性も
旧統一教会による高額献金や霊感商法の被害が明らかになり、連日、テレビや新聞などのメディアを通じて批判的報道がなされて、今日に至っています。まさに旧統一教会の問題における火の手があがっている状況です。しかし、被害者に対して誠実な対応をしていないために、国民の批判はさらに大きくなっていきました。その結果が、文科省による旧統一教会への解散命令請求だと思っています
旧統一教会の敗訴が、3つ続く状況
そうしたなか、教団は批判的な報道をするテレビ局や弁護士やジャーナリストを訴えるという手段に出てきました。しかし3月12日に、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)が日本テレビと有田芳生さんを名誉棄損で訴えた裁判の判決が東京地方裁判所であり、原告(旧統一教会)の訴えは棄却されました。
さらに翌13日にも、読売テレビと紀藤正樹弁護士に対して訴えた裁判の判決があり、こちらも原告(統一教会)の訴えが棄却されています。
すでに1月25日に、読売テレビと本村健太郎弁護士に対して起こした裁判においても、東京地裁は「『裁判所の判断として原告の布教活動が違法であると認定されている』という本件発言ないし、論評の前提事実の重要な部分は真実であると認められる」とした、違法性はないとの判決を出しており、原告(旧統一教会)の請求は棄却されています。今年に入って、敗訴が3つ続いている状況です。
今回は、日本テレビと有田芳生さんを名誉棄損で訴えた裁判の判決について、フォーカスします。
名誉毀損ではないという判断が明快に示された
12日の判決後に、司法記者クラブで会見が行われて、澤藤大河弁護士は「全面的な棄却判決となり、名誉毀損ではないという判断が明快に示されました」として「通常の名誉毀損訴訟ですと、原告の名誉は毀損された。しかし、公益性、公共性、真実性あるいは真実相当性がある場合に限り、違法性を阻却して不法行為が成立しないという構造になる裁判が多いわけです。しかしこの裁判は、そもそも名誉毀損ではないと断じた非常に珍しい判決となりました」と話します。
有田芳生氏は「振り返ってみれば1970年代から統一教会の問題を調べてきて、朝日ジャーナルという週刊誌で霊感商法の批判キャンペーンをするなど、40年以上統一教会問題に関わってきた立場から、テレビに呼ばれた時に、私の中ではごく当たり前の発言をしたにもかかわらず、訴えられてしまった。翌日からテレビへの出演というのは今日に至るまでゼロですから、そういう意味では統一教会の狙いは言論封じだということは明らかだったと思っております。そして今日の判決について、そもそも名誉毀損に当たらないんだという門前払い(の判決)に大きな意味があると思っております。これからもひるむことなく、統一教会の反社会性について発言をしていきたい」と力強く話します。
門前払いの判決との弁護士の見解
光前幸一弁護団長は「裁判所がこの判断を下すということは、有田さんの発言には真実性があることを踏まえた上で、統一教会の主張に対しては門前払いの判決になった」といいます。
今回、有田さんは「スッキリ」(日本テレビ)の番組のなかで「やはりもう、霊感商法をやってきた反社会的集団ってのは、警察庁ももう認めているわけですから、そういう団体とは今回の問題をきっかけに、一切関係を持たないと、そういうことをスッキリ言わなければだめだと思うんですけどね」(以下、本件発言)と話しました。
光前弁護士はそれに触れて「有田さんの発言は、当時、萩生田(萩生田光一議員)さんがいろいろと統一教会との問題を指摘されながら、関係を絶つことをはっきりと言わなかったものですから、有田さんの方で、萩生田さんはこの時点で、こういう団体との関係を絶つんだと言わなくちゃダメだよという発言をしたんです。その発言の一部を捉えて、統一教会は名誉毀損だという訴訟を起こしました」「私たちはまず、番組での発言を一般の視聴者はどういうふうに認識しているのかを考えました。この発言は、あくまでも萩生田さんの言動を批判したものであって、統一教会の反社会的集団について、それほど印象に残るようなものではないので、このような発言を名誉毀損訴訟として取り上げること自体が問題であり、スラップ訴訟(言論を封じこめようとする訴訟)だということを第一に主張した」といいます。
判決でも「国会議員を含む政治家が原告との関係を絶つためにはどうすればよいかという趣旨の質問に対して、被告有田が国会議員は今の原告と一切関係を持たないことを断言すべきである旨述べた本件回答の一部分に過ぎず、要した時間はわずか8秒程度」として「本件発言の内容が、一般の視聴者において被告有田の本件回答から独立して印象に残るものであったとは認めがたい」とした点などを踏まえて、名誉棄損としての違法性を認められないとしています。
今日の判決は旧統一教会の悪質性を裏付けるものとの指摘
阿部克臣弁護士からは、現在、東京地方裁判所で審理されている解散命令請求事件との関係における判決の意義についての話がありました。
「(両弁護士から説明があったように)そもそも要件の入口で(訴えは)阻却されています。要するに、こういう訴訟を普通は起こしてこないわけです。こうした典型的なスラップ訴訟を起こしてくることは、統一教会という団体の属性を示していることになります。解散命令請求の要件として、悪質性、継続性、組織性が言われておりますけれども、まさにその悪質性を裏付けるものだということです。批判者に対しては批判をさせない。言論を萎縮させるという目的で、通常、訴訟にならない、本来であれば起こしてこないような訴訟を、いとわずに起こしてくる。これはこの教団の反社会的な属性、解散に値する団体だということを示しているものです。今日の判決はこれを裏付けるものだと思う」といいます。
裁判で明らかになった過去の真実
澤藤弁護士は「私たちは『これは名誉毀損ではない』ことを裏付けるべく、1000ページを超える判例を証拠として出して、統一教会がいかに反社会的な集団であるかの真実性、真実相当性を立証しようと努力をしました」ともいいます。
裁判において、有田さんの言葉を通じて、過去に教団がどのような社会問題を引き起こしてきたのかについても赤裸々に語っています。
過去の国会の質疑において「統一教会系の『幸世物産』は1968年2月に韓国の教団系の会社から2500丁の空気散弾銃『鋭和3B』を輸入販売しました。警視庁は警告を出しましたが、さらに1万5000丁の輸入申請を行ったため、1971年3月26日の衆議院地方行政委員会でも問題になりました」として、後藤田正晴警察庁長官(当時)は「この空気散弾銃が果たして適正なものかという点に私どもは疑問を抱いた」「それを監視して、この2500丁以外は入れない」と答弁したということです。
52年前の答弁ですが、すでに教団の行動は、社会的に問題視されていたわけです。
さらに1973年4月5日の衆議院内閣委員会では「日本に輸入した『鋭和3B』という単発空気銃が10メートル離れたところから、厚さ2センチの板を貫通する威力を持ち、殺傷能力のあることが問題になった」としています。
当時、統一教会信者らにより全国35か所で銃砲店が経営されていたそうで、「警視庁刑事局保安部長は『全国で8か所の銃のための射撃場がある』と答弁し、この問題については、中曽根康弘国務大臣も『警察庁とよく連絡を緊密にとりまして善処いたします』と答弁しました。私が統一教会を単なる宗教団体だとは思ってこなかった理由です」と、有田氏は話しています。
はるか前に起きた旧統一教会の真実もあぶりだされることに
正直なところ、こうした国会でのやりとりは、筆者が信者になる、はるか前の出来事ですので、知る由もありません。1980年代に入信した私のような1世信者が知らないのですから、2世信者などはこうした事実を知っているはずもなく、有田さんだからこそ、この裁判を通じて指摘できたことだと思います。
いずれにしても、過去の出来事とはいえ大量の銃を扱っていた行動に改めて懸念を覚えます。
よく油を使っての火災が起きた時の初動対応として「水で消そうとする」ことはNGで、それにより逆に火の勢いが増してしまうといわれます。現状をみるに、教団の被害の問題が燃え盛っているなかに、ジャーナリストや弁護士に対して裁判を起こすことで、批判の火の勢いが増した事態になったようにも感じています。
旧統一教会には、サタン(悪魔)とみなした人たちへの敵対的行動を取るよりも、まずは過去の被害にしっかりと向き合い、問題解決に向かうことこそが求められているように思います。