幸福度ランキング上位の国・ノルウェーの親善大使を務めるヴァイオリニスト・山瀬理桜が考える“幸せ”とは
宮崎駿さんの短編アニメ「水グモもんもん」の音楽監督を担当し、スタジオジブリ作品「ゲド戦記」にも演奏参加したヴァイオリニストの山瀬理桜さん。現地での演奏を経験する中でノルウェーへの思いを深め、北欧流の幸せのあり方を綴った初のエッセー「悪いのはお天気ではなく、着ている服だ。」も来年1月14日に上梓します。常に幸福度ランキングで上位に入る北欧の国から学ぶ「幸せに生きる方法」とは。
ノルウェーと日本
私には10歳離れたピアニストの姉がいるんですけど、ノルウェーの方と結婚したんです。今もノルウェーに住んでるんですけど、それがきっかけで私もノルウェーとのご縁ができたんです。
姉妹で現地のホールで日本人初のコンサートをさせてもらったり、また、ありがたいことにそれが好評で毎年させてもらうようになったりで、私もノルウェーと日本を行き来する生活になっていったんです。
そこから親善大使などもさせていただくようになったんですけど、姉が結婚するまではノルウェーといえば画家のムンクとサーモンくらいしかイメージがなくて(笑)。
ただ、実際に行ってみると、本当に過ごしやすいんです。まず、国民性がすごく日本人と似てるんですよね。体は大きな方が多いんですけど、内気で恥ずかしがり屋。そして、とても親切なんです。
自分がそれを体感してからは、日本でもノルウェーの音楽を伝えていきたいと思うようになりましたし、お客さまにエンターテインメントとしてお伝えするならば、北欧の文化を根っこからしっかりと学んでおかないといけない。そう思って、さらに深く勉強を始めたというのがこれまでの流れなんです。
学んでいくうちに、それこそ今注目されているSDGsを早い段階から体現している国だということにも気付きましたし、幸福とか平等という空気が満ちた中で生まれる音楽がさらに素敵に感じられるというか。そういう作用もありました。
姉がノルウェーの方と結婚してなかったらノルウェーにここまで関わりを持つことはなかったと思いますし、この本も書いてなかったと思います(笑)。本当に縁の力って不思議なものだなとも思います。
“幸せ”とは
本のタイトルはノルウェーのことわざからとっているんです。ノルウェーはものすごく寒いですし、天気を理由に「今日は空が荒れているから、やめておこうか」となると何もできなくなってしまう。
それより着ている洋服を変えて気分を変えたり、自分ができることをやって流れを前向きにする。
これはあらゆる局面で使える考え方だとも思っていて、例えば今は新型コロナ禍です。いろいろなものが制限されている中でも「コロナ禍だから」ということを理由にしてしまうと、本当に全てが止まってしまう。
もちろん、本当にできないこともありますし、大変なことなんですけど、気持ちのポイントをどこに置くかで、前に進むこともできるはず。それがこのことわざの根底にあるものですし、ノルウェーの考え方でもあるんです。
寒いから何もできなくて不幸なのではなく、その中でいかにハッピーになるか。自分の考え方を変えるだけなので、それは実は誰にでもできることなのかなと。
いろいろ言ってますけど、私も最初はノルウェーと言えばサーモンくらいから始まってますから(笑)。知ることで何かが変わる。そんな流れが広がってくれたらうれしいと思っています。
(撮影・中西正男)
■山瀬理桜(やませ・りお)
マレーシア・クアラルンプール生まれ。桐朋学園音楽大学演奏学科ヴァイオリン科卒業。ヴァイオリニスト、ハルダンゲルヴァイオリニスト。1992年から国内オーケストラと共演、ノルウェーの「ムンク美術館内ホール」をはじめ、日本と北欧を中心にコンサートツアーを開始。ビクターエンタテインメントより「ゴールデンオーロラ」「クリスタル・ローズ・ガーデン」「フィヨルドの愛の唄」などの作品をリリース。三鷹の森「ジブリ美術館」での宮崎駿監督の短編アニメ「水グモもんもん」の音楽監督(作曲&演奏)を担当し、スタジオジブリ作品「ゲド戦記」にもハルダンゲルヴァイオリンで演奏参加した。また、西ノルウェーハルダンゲル自治区から「Good-will ambassador of Hardanger(ハルダンゲル地方親善大使)」に任命された。文化人部門として吉本興業に所属している。北欧流の幸せのあり方を綴った初のエッセー「悪いのはお天気ではなく、着ている服だ。」を来年1月14日に上梓。同著には高橋愛との対談も収められている。