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テレビアニメ第3期放送決定:「おそ松さん」は何故女性人気コンテンツとなったのか

小新井涼アニメウォッチャー
映画ビジュアル(筆者撮影)

赤塚不二夫氏の名作「おそ松くん」を原作としたアニメ「おそ松さん」が、テレビシリーズ第3期の放送を発表し、早くも話題になっています。

2度のテレビシリーズ化と昨年の映画化を経て今なお人気を誇る本作は、最初にアニメ化された2015年以降、女性ファンを中心に爆発的なブームを起こしたことでも注目を集めました。

まだ誰も「おそ松さん」を知らなかった状態から、特に女性に人気が出たのは一体何故だったのでしょうか。

改めて、当時を振り返ってみます。

「おそ松さん」とは

「おそ松さん」は、原作である「おそ松くん」のメインキャラ・松野家の6つ子が大人になった姿を描いたアニメです。

”20歳を過ぎてもクズでニートで童貞。”(公式HPより)

そんな6人の日常を、原作をリスペクトしたが故のぶっ飛んだギャグやシュールなネタ、ギリギリアウトなパロディと共に描いた本作は、アニメ第1話放送時から色々な意味で話題となり、瞬く間に人気作となります。

第1期放送後には「おそ松さん」がその年の流行語大賞にノミネートされるなど、その盛り上がりは社会現象とまで言われました。

こうしたブームを中心的に支えていたのが、前述した女性ファン達です。

本作では、原作の「おそ松くん」では『見分けがつかない』ことをネタにしていた6つ子(おそ松、カラ松、チョロ松、一松、十四松、トド松)に個性を持たせたことで各キャラそれぞれに人気が集まり、彼らを”推し”とする女性ファンからの人気がみるみる高まっていきました。

一方で『作品が面白いのはわかるけど、何でここまで女性に人気なんだろう』と、この盛り上がりを不思議がる声があったのも確かです。

女性ファンによる”正解のいらない答え合わせ”

今だからこそ言えることですが、「おそ松さん」第1期放送時の”ファンの盛り上がり方”は、翌年2017年に同じく人気が社会現象にまでなったアニメ「けものフレンズ(「けもフレ」)」と、実は似ていたのではないかと思います。

両作共に原作はあれど、先の分からないオリジナルアニメであったために、毎週放送をみて生じる”なんで?・どうして?”についての議論や答え合わせがネット上で盛り上がり、放送を経る毎に、ファンの熱量が増していたからです。

ただ両作は、その”なんで?・どうして?”の内容と解明の方向性が全く異なりました。

「けもフレ」が、ディストピアを思わせる世界の真相や登場キャラ達の正体を探って話し合う”正解を求めての議論(≒考察)”であったとすると、「おそ松さん」は、あるシーンのセリフやキャラの行動の意味をただひたすら掘り起こして語り合うという”正解のいらない答え合わせ(≒解釈)”だったのです。

例えば、『このシーンの6つ子はなんでこの並びなの?』『どうして普段は言わなそうなこのセリフが出てきたの?』『このパロディはなんでこの配役なの?』『仲悪いと思ってたのにどうして今助けたの?』などなど……。

正解は求めていない(けど、いつか正解が提示されたらそれはそれでまた深まる)解釈は、”なんで?・どうして?”がファンの数だけ自由に無限に生まれます。

しかもそれは作品が理解出来ないことへの文句ではなく、最終的に自分なりの答え(解釈)を出した時に”(いい意味で)しんどい・好き”等のポジティブな感情へ行きつくことが多いものでした。

そのため、毎週新しいエピソードが放送されるたびに少しずつ提示されるネタや推しキャラ情報への”なんで?・どうして?”について、正解のいらない答え合わせを解釈の近い仲間同士でしながら、次の週まで延々と盛り上がり続けることができたのではないでしょうか。

あくまでファン層の割合から窺える傾向ですが、男性人気の高い作品は考察で、女性人気の高い作品はこうした推しのキャラや作品そのものへの解釈で盛り上がることが多いように思います。

「おそ松さん」は上記の通り、情報量ほぼ0から毎週小出しにされるエピソードで、延々と続けていられる正解のいらない答え合わせをしつつ毎週盛り上がっていったことも、女性ファンの間で爆発的な人気が出た理由だったのではないでしょうか。

「おそ松さん」の魅力

また、こうした盛り上がりのきっかけとしては、女性人気の高い声優陣のキャスティングや色々な意味で話題になった第1話が広い入口となって、本作をリアルタイムで視聴し始める女性ファンが多かったことも大きかったと思います。

そしてそこから”正解のいらない答え合わせ”がヒートアップしていったのは、6つ子それぞれに個性がついたことで、兄弟や家族、イヤミやトト子ちゃんといったキャラ達とのやりとりや、それぞれがそれぞれに持つ感情や関係性にぐっと深みが増したこと。普段全力なギャグが多いからこそ余計にぞっとするお話や泣けちゃう話があったりというエピソードの振れ幅の広さ。その振れ幅を可能にしてしまうキャラクターデザインやキャスト陣。そして何より、シュールやナンセンスからパロディまでなんでも受け止める懐の深さを持った赤塚不二夫氏の原作が持つ世界観。

…といった、どこまで掘り起こしても底が見えなかった「おそ松さん」ならではの魅力があったことが、なりよりの理由だったのではないでしょうか。

今回は女性人気が出た理由をメインに紹介しましたが、こうした「おそ松さん」ならではの魅力は、実は性別趣向関係なく楽しめるところでもあると思います。

まだみたことが無い方は、第3期放送前のこの機会に、一気に予習してみるというのもおすすめです。

アニメウォッチャー

北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院博士課程在籍。 KDエンタテインメント所属。 毎週約100本以上(再放送、配信含む)の全アニメを視聴し、全番組の感想をブログに掲載する活動を約5年前から継続しつつ、学術的な観点からアニメについて考察、研究している。 まんたんウェブやアニメ誌などでコラム連載や番組コメンテーターとして出演する傍ら、アニメ情報の監修で番組制作にも参加し、アニメビジネスのプランナーとしても活動中。

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