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バルセロナが狙う19歳の新たな至宝。セルジーニョ・デストを知っているか。

森田泰史スポーツライター
ヘタフェ戦のセルジーニョ(写真:ムツ・カワモリ/アフロ)

アヤックスは、過去、数多のタレントを輩出してきた。

とりわけ、昨季は「豊作」だった。フレンキー・デ・ヨング、マタイス・デ・リフトを筆頭に、ドニー・ファン・デ・ベーク、ハキム・ツィエク、ダビド・ネレスが中心となりチャンピオンズリーグでベスト4に進出。躍進のシーズンを終え、デ・ヨングはバルセロナに、デ・リフトはユヴェントスに移籍した。

アヤックスの基盤を築いたのはリヌス・ミケルス、ヨハン・クライフである。彼らが作り上げたベースの上に、こんにちの育成があると言えるだろう。

■新たな至宝

そのアヤックスに、新たな至宝が現れた。セルジーニョ・デスト。19歳の右サイドバックだ。

セルジーニョは、今季トップデビューを飾ったばかりだ。7月に行われたオランダのスーパーカップのPSV戦で、初めてトップチームの選手として公式戦のピッチに立った。

2012年にアヤックスのカンテラに入団したセルジーニョは、ミハエル・ライツィハー、ヨン・ヘイティンガという往年の名プレーヤーに憧れを抱きながら成長していく。そして2018年、念願だったアヤックスとの最初のプロ契約を結んだ。

若い選手がトップに食い込もうとする時、そこには少しの「運」が必要だ。セルジーニョの場合、今季右サイドバックのレギュラーであるノゼア・マズラウィが負傷離脱を繰り返し、その中でスタメンに名を連ねる試合が増えていった。

「セルジーニョは守備が上手い。だが攻撃においても違いをつくれる選手だ」とは、エリック・テン・ハーグ監督の言葉である。クライフが提唱したトータルフットボールを体現するように、セルジーニョは右サイドバックで躍動している。スピードと1対1の強さが彼の武器だが、それだけに留まらない。ビルドアップ能力の高さを備え、最終ラインからの球出しに関与する。右サイドバックでありながら攻撃をオーガナイズできる、ダニ・アウベスを彷彿させるような選手なのだ。

■アメリカ代表という選択

オランダ生まれのセルジーニョだが、彼にはもうひとつのルーツがある。父親がアメリカ人で、母親がオランダ人。アメリカ代表とオランダ代表という2つのナショナルチームが、彼の動向を注視していた。

U-17、U-20ではアメリカ代表のユニフォームを着た。昨年末、「アメリカ代表のポテンシャルを強く信じている」と語り、アメリカ代表でのプレーを決意。クリスティアン・プリシッチ、タイラー・アダムス、ティモシー・ウェアらと共にアメリカの未来を担う存在になるはずだ。

ただ、セルジーニョを追っているのはナショナルチームだけではない。バルセロナ、バイエルン・ミュンヘン、複数クラブが彼に強い関心を示している。

セルジーニョは以前、『Bleacher Report』のインタビューで「バルセロナでプレーするのは僕の夢だ」と語っていた。バルセロナにはネルソン・セメドとセルジ・ロベルトの他に、ニースからレンタルバックしてくるムサ・ワゲ、2021年夏までベティスにレンタル移籍予定のエメルソンがいる。

バルセロナはすでにセメドを放出する意思を固めているようで、ミラレム・ピャニッチ、ラウタロ・マルティネスの獲得オペレーションに含める案を検討しているという。セメドの代役にセルジーニョを、というのがバルセロナの考えだ。セルジーニョは2022年夏までアヤックスとの契約を残しており、移籍金は2000万ユーロ(約22億円)前後になるとされている。クライフに始まりデ・ヨングまで続いたアヤックスの系譜が引き継がれるかもしれない。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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