永世王位・羽生善治九段(49)1993年以来王位リーグ陥落なしの記録継続 プレーオフ進出の可能性残す
6月13日。東京・将棋会館において王位戦リーグ白組最終5回戦▲羽生善治九段(3勝1敗)-△菅井竜也八段(3勝1敗)戦がおこなわれました。棋譜は公式ページをご覧ください。
10時に始まった対局は18時12分に終局。結果は97手で羽生九段の勝ちとなりました。
羽生九段はこれで4勝1敗となって、プレーオフ進出の可能性を残しました。もし藤井聡太七段が敗れた場合には、あさって15日(月)に藤井七段とプレーオフを戦います。その勝者が白組優勝者となり、紅組優勝者との挑戦者決定戦に臨みます。
一方、王位戦リーグは各組6人のうち、成績下位4人が陥落となります。菅井八段は3勝2敗と勝ち越しながら、リーグ陥落となりました。
永世王位、羽生九段の偉大な足跡
羽生現九段は王位戦参加7期目、1993年に王位戦リーグ初参加しました。藤井七段は参加3期目でのリーグ入り。新人時代の成績が何かと比較される両雄ですが、王位戦に関しては藤井七段が先行しています。
ただし羽生九段はその後、他の多くの棋戦同様、王位戦でも信じられないような大記録を達成してきました。
1993年、リーグ参加最初の期で勝ち進んで、挑戦権を獲得。郷田真隆王位(当時)に挑戦して4連勝のストレートで王位を獲得しました。
羽生王位はこれで七冠のうち五冠を占め「史上最年少五冠」と大きく報道されています。
羽生九段以前には大山康晴15世名人、中原誠16世名人しかなしとげていない五冠同時保持を、22歳の時に達成したというわけです。
以来27年。羽生九段は王位戦七番勝負を何度も制覇。中原16世名人(8期)、大山康晴15世名人(12期)を抜いて王位戦史上1位の通算18期を獲得しています。
そして通算10期、あるいは連続5期の条件で与えられる「永世王位」の資格も得ています。
2017年。その羽生王位に七番勝負で挑戦し、4勝1敗で王位の座を獲得したのが菅井竜也現八段です。菅井八段は平成の時代に君臨し続けた王者を破り、平成生まれとしては初のタイトルホルダーとなりました。
羽生九段は菅井八段に王位を明け渡した後も、王位戦リーグで好成績を収め続けます。6人中4人が陥落するという新陳代謝が激しいリーグで残留を続け、1993年以来27期にわたり一度もリーグから陥落したことがないという、途方もない記録も継続中です。
しかしもし本局で羽生九段が敗れると、その大記録がついに途切れることになります。
羽生九段と菅井八段の対戦成績は羽生4勝、菅井7勝。菅井七段がリードしていますが、直近の4日前に指されたA級順位戦では羽生九段が勝利を収めています。
本局は羽生九段が先手。後手番の菅井八段は四間飛車から角交換をして、向かい飛車にスイッチします。
対して羽生九段は金銀4枚を玉側に配します。そして菅井陣に角を打ち込んで馬を作り、自陣に引き上げて手厚い陣形を築きます。
棋界きっての早指しで鳴る菅井八段。本局では慎重に指し進め、時間の消費はほぼイーブンで推移しました。
駒がぶつかって本格的な戦いが始まった後、羽生九段は自陣の馬を基軸に駒を前に前進させていきます。そして得点を重ねて、次第に優位を確かなものとしていきました。
89手目。中盤で主役を果たした羽生九段の馬は菅井陣の美濃囲いの銀と刺し違えて役割を終えます。そして羽生九段は手にした銀を打ち込んで王手。これで決まっているようです。
菅井玉は上と横から寄せられる形となり、受けがありません。対して羽生玉に寄りはない。そこで菅井八段は潔く駒を投じました。
羽生九段は大きな一番を制してリーグ4勝1敗。残留を決めるとともに、プレーオフ進出の可能性を残して、藤井七段の結果を待つことになりました。
【追記】結果は藤井七段が5連勝。白組優勝を決めています。