「ホームに戻った」「歴史的」 BTSソウルコン、韓国での反応 ”K-POP全体に好影響”期待も
「高校生の時からファンだったんですが、コロナ時代に22歳になりました。2年間コンサートがなくてとても悲しかったんですが、実際にライブが見られると思うと、すでに胸が震えて…」
――この日会場を訪れたキム・ソヒョンさん/22歳
韓国のNHKといえる「KBS」がこういったコメントを交え、ニュースを伝えた。
10日、12日、13日にソウル・蚕室メインスタジアムで行われたBTS(防弾少年団)のコンサート「BTS PERMISSION TO DANCE ON STAGE」。
現地メディアは何を伝え、ファンはどんな反応を見せたのか。芸能メディアではない、一般メディアの報道から「韓国社会がこれをどう評価したのか」が見えてくる。
ソウルに、チャムシルに戻ってきた
まず韓国内のメディア報道で意外と多かったのは「ホームに戻る」という切り口だった。
1988年ソウル五輪のメインスタジアムとして使われた蚕室(チャムシル)スタジアム。ここはBTSにとってコロナ時代前の2019年10月に自国で大きな公演を行った特別な場所だ。2020年11月発表の「Life Goes On」でもこの時を回顧するようにスタジアムが映るシーンがある。
このストーリーは韓国の一般メディアにも共有されているようだ。
「声援はなくとも熱いステージ…BTS『故郷に帰ってきた』」(JTBC/12日)
有力紙「中央日報」系のこのテレビ局は
「確かに今、本当の故郷に帰ってきた、家に帰ってきたと感じました」
というジミンの言葉を伝えつつ、こうつづった。
「アンコール曲で『HOME』を披露し、久々に家に帰ってきた喜びを表現した防弾少年団。明日までの日程で蚕室主競技場にてファン(3日間のべ)4万5000人に出会います」
ソウル江南エリアにある蚕室スタジアムは88年の五輪後、主にサッカーの韓国代表戦の聖地として使われてきた。しかし02年W杯をきっかけに漢江の北側にサッカー専用のワールドカップスタジアムが完成すると、さっぱりと使われなくなった。
2010年代前半には「施設の老朽化」すら問題視されていたが、近年はサッカーKリーグの2部チームがホームゲームで使用している程度。ソウルの街の発展から考えても”一等地”に新たに「BTSの聖地」としての一面が生まれるのは喜ばしい現象だ。
そのほか「THE FACT」が「"故郷に帰ってきた"...BTS, ARMYと完成した”切実さ”の歴史」、「スポーツ朝鮮」は「ここが故郷…防弾少年団、2年半のホームシックを解消した再会」などと報じた。
それだけに韓国のファンの思いも強かった。国内最大のポータルサイト「NAVER」のコンサート・イベント概要ページには現地を訪れたファンの喜びが記されていた。
「雨が降っててもイイ!!!! クラッパー(拍手に近い音を出す紙製の応援グッズ)と雨の音と、紙吹雪が舞う音まで! 声での声援以外はすべて”叫んでた”!!!! 心の声がしっかり伝わっていることを願いました」
「2年半ぶりのコンサートだからすごくドキドキしたんだけど当時と同じようにあの場所にいられた自分がすごく誇らしかったです。今回はアリーナ席の突出した部分の横だったからとてもとてもよく見えました」
メンバー「今はARMYがここにいる」
いっぽう、韓国の一般メディアにとっては「コロナ時代に行われた対面イベント」という点が大きな関心を集めたようだ。
冒頭の女性ファンのコメントを伝えた「KBS」は、11日に2分39秒の尺でニュースを伝えた。
「BTS(防弾少年団)の公演を声援なしで観る?…”歴史に残るステージ”」
ニュースではメンバーの「韓国でのARMYとの再会」を喜ぶコメントが紹介された。
「客席にみなさんがいるということだけでも多くのことが変わったようです。とても気持ちがいい」(RM)
「(これまで)ガラガラの客席の前でカメラだけを置いて撮影をしてきたのですが、今はARMYの皆さんがここにいるからとても幸せで…」(V)
これと合わせ、以降は「1万人以上集まる公演は、国内でのコロナ発生以降初めて」という点にフォーカスして、当日の様子を伝えている。
「成熟したファンたちは声援のかわりに応援道具を振り、メンバーとの合唱よりも堂々とした拍手で声を作り上げました。新型コロナウィルスで変わった日常のように公演での風景も変わったのです」
「今回の公演(1回毎)の席数は1万5000席。4万席を超えた2019年の公演の3分の1の水準です(中略)所属事務所側はコロナ対策だけでもスタッフ750人を別途で動員しました」
このほかJTBCが「防弾少年団BTS、パンデミック以降初の対面コンサート…”ファンとの合唱”なくとも感動はそのまま」との見出しで関連ニュースを伝えた。
「歴史的イベント」はK-POP全体への好影響なるか
3回の公演が終わった翌日、14日には売上や観客動員に関する記事も多く配信された。
「BTSソウルコンサート、全世界の劇場への生中継により、チケット売上が400億ウォン(約38億6000万円)に」(聯合ニュース)
「BTSソウルコンサート、全世界で250万人が観た」(韓国経済)
- 公演会場の外を40分に渡りLIVE中継した「聯合ニュース」。「チケットがなくても楽しい」と。
とはいえ、だ。
これらもすべて前出の「コロナ時代に初めて韓国で大型公演を成功させた」という評価に繋がっているようだ。「ヘラルド経済」は14日、こういった論評を掲載した。
「パンデミック以降の分岐点…BTSコンサートにみるK-POP公演の変化」
この点について、国内の音楽界関係者のコメントを紹介している。
BTSだからこそ切れた「大きなスタート」。
BTSがやったからこそ期待できる「他グループ公演への好影響」。
K-POP界全体に意義のある公演となったのではないか。他グループの「ソウルコン」にも期待したい。