【駅の旅】歴史ある町酒田の絶品グルメと絶海に浮かぶ孤島・飛島への玄関口/JR羽越本線線酒田駅
酒田へは新潟から特急で2時間余、秋田から1時間半
酒田へは新潟と秋田を結ぶ特急「いなほ」が通う。今春、駅がリニューアルされ、駅前には古い商業施設に代わって、近代的なホテルや図書館、カフェなどが入った複合施設がオープンしてイメージを一新した。
酒田は北前船で栄えた古い町
日本海に面した山形県北部の町、酒田は江戸時代には北前船の寄港地として栄えた。市内には庄内藩の旗本だった本間家の武家屋敷が残り、駅に近い本間家別邸の本間美術館の中にある鶴舞園(かくぶえん)は池泉回遊式庭園があって落ち着いたたたずまいを見せてくれる。
酒田のシンボルは山居倉庫
そんな歴史ある町のシンボルは、山居(さんきょ)倉庫。黒い木の壁が特徴的な堂々たる建物は、1893(明治26)年に建てられたもので、現在も使われている農業倉庫だ。倉庫に沿って並ぶケヤキ並木が四季折々になんとも美しい。
酒田名物「むきそば」は、お酒の締めに最高
そんな酒田の夜に暖簾をくぐったのが、駅前にある居酒屋「とらさん」。聞けば創業40年の懐かしい昭和のたたずまいのお店である。嬉しいことに、酒田の酒「初孫」「上喜元」「菊勇三十六人衆」をはじめ、各地の地酒がたくさんそろっている。
料理は焼鳥や焼魚が中心だが、お薦めなのが、締めに食べたのが酒田名物の「むきそば」。そばというと細長い麺を思い浮かべるが、酒田の「むきそば」はそばの実をむいて茹でたものに、昆布や椎茸のだし汁をかけて食べるこの地方独特の食べ物だ。このお店では具にネギと海苔と魚がたっぷり入っている。決して重くはないやわらかな口当たりは、お酒をのんだあとの締めにぴったり。店によって具は色々のようで、海老天や、とろろ、イクラ、鶏肉などを入れることもあるらしい。
豪快な冬の漁師料理「寒鱈汁」
ある寒い冬の日に酒田駅前のテントで食べたのが寒鱈(どんがら)汁。厳寒の海で捕れた脂の乗った鱈をぶつ切りにして、アラごと味噌で煮込んだ豪快な漁師料理。これからの寒い季節の絶品ご当地グルメである。地酒「初孫」を呑みながらほっこりと暖まったのだった。
沖に浮かぶ飛島は絶景の島
酒田港の北西39キロに浮かぶ絶海の孤島が飛島(とびしま)だ。通常、平日は1日1往復、週末は2往復の船が片道75分で行き交っている。
天気のいい日の飛島はことのほか美しく、とりわけ、海を隔てて対岸に広がる鳥海山の雄大な眺めは筆舌に尽くしがたい。
また、季節によっては渡り通りの飛来地として有名で、多くの人がバードウオッチングに訪れるという。ウミネコの営巣地としても知られ、春から夏にかけては彼らの鳴声が賑やかだ。
そんな飛島は周囲11キロ、人口170人ほどの小さな島。釣り人が訪れることも多い。島にはバスやタクシーはなく、コンビニも信号機もない。特に見所があるわけでもないが、人情豊かな小さな島で、のんびりとした時間を過すのもいいものだ。宿は港近くに数軒並んでいる。
冬はほとんど欠航の飛島航路
だが、冬に酒田駅を訪れると、大抵、「本日飛島航路欠航」と表示されている。冬の日本海は波高く、猛烈な風が吹く。酷いときは風速20メートルの強風が吹き荒れ、船が2週間続けて欠航することもあるそうだ。北国の冬の島の生活は想像以上に厳しい。